求人難時代の切り札か「海外高度人材」(1)

(2019年08月31日)

外国人技術者の採用に挑戦


人手不足が恒常化し、人手の確保が困難な採用難・求人難の時代に突入した。人材確保のため、海外に目も向けた高崎

市内製造業の挑戦をレポートする。

慢性化する人手不足で高度人材に着目

「求人を出しても応募がない」。今回、取材した製造業4社から、同じ言葉が漏れた。ものづくり産業の人材確保と育成は、国レベルの大きな課題であり、技術や研究開発、管理など企業の中核を担う若い人材を確保、育成していかないと、ものづくりの未来は危うい。市内製造業が人材確保に苦しんでいる実態も聞こえて来た。

市内製造業の経営者が、「国内で採用できないなら、海外の人材を採用することはできないか」と、これまで経験したことがない海外での採用活動を手探りで始めた。

おりしも、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が2019年4月からスタートし、人手不足に対応するため、「特定技能」という在留資格が新設された。人手不足が顕著となる業種で、外国人の単純労働を認めた。法改正の議論の中で、外国人労働者については、マイナスイメージを伴うような報道もあったが、外国人労働者について予断を持たずに取り組むことが重要となるようだ。

 

地方都市のハンデ無し

日本で働く外国人労働者は140万人を突破し、特に「高度人材」と言われる「専門的・技術的分野」で活躍する外国人が増えている。

深刻化する国内の人手不足のため、外国人労働者は増加しており、平成30年10月現在で約146万人(厚生労働省)となっている。在留資格別の内訳は「技能実習生」が30万8千人、「専門的・技術的分野」の在留資格者が27万7千人、「留学生」のアルバイトなど資格外活動(1週28時間以内)の就労者などが34万4千人などとなっている。

今回4社が採用した高度人材の国籍を見ると、丸山機械製作所とサトキンがフィリピン、町田ギヤー製作所と林製作所がベトナム。ともに日本や日本人に好感を持っている国民性で、日本で働く人数も多い。日本企業で働くことを目標にして勉強に励んでいる若者も東南アジアには多く、地方都市であることは、採用のハンデにならないという。

 

専門技術分野は超人材不足

今回の取材で、海外人材が必要となる背景として、高崎の製造業が技術者不足に直面している現状が浮き彫りになった。

高崎市の産業界を取り巻く求人・求職状況を見ると、求職者一人に対する求人数を示す有効求人倍率は、高崎は高い水準で推移を続けており、順調な景況と見ることができるが、高崎の企業が悲鳴を上げているように、生産年齢人口が減少し、人手不足が慢性化している。

厚生労働省のまとめで、有効求人倍率は、2018年の平均有効求人倍率が1.61倍で前年に比べて0.11ポイント上昇、完全失業率は平均2.4%で前年に比べて0.4ポイント減少した。ほぼ完全雇用と見ることができ、今後もこの状況は続くと予想される。

群馬県の状況を見ると、求職者数が年々減少しているのに対し、求人数は増加し、求人倍率は平成26年度の1.16から30年度は1.74に上昇している。当月の動きを示す新規求人倍率は、平成26年度の1.69から2.37に上昇している。

高崎市内の求職者数、求人数の推移を見ると(表3)、求職者数は年々減少、求人数は増加し、当月の動きを示す新規求人倍率は、平成29年度は3倍を超えた。

高崎市内の動向を年次別、職種別に見ると(表4)、高崎市内の求人数は増加傾向にあり、平成29年度は5万3,965人、一方、求職者数は減少傾向にあり、平成29年度は3万1,797人で、2万2千人の人手不足が生じている。

高崎の産業界で最も人材が不足しているのが専門技術職で、平成29年度の求人数は1万3,418人と、全職種の中で最多となっている。生産工程の求人数は、専門技術職よりも少なく5,308人となっており、これまでは充足していたが、不足へと転じてきている。

また事務職や運搬清掃包装のように、有効求人倍率が1.0を割っている職種もあるが、倍率が4倍から7倍を超える職種も多く、高崎市内の産業が慢性的な人材不足に苦しんでいる状況を示している。

 

「技人国ビザ」の外国人労働者

専門的・技術的分野の在留資格者を広い意味で高度人材と呼び、この中で「技術・人文知識・国際業務」の就労資格が最も一般的で、頭文字から「技人国ビザ」と言われ、21万4千人が就労している。国は、優れた外国人の受け入れを促進するため、平成24年に「高度人材ポイント制」を導入し、永住権などで優遇措置を講じており、狭義の高度人材はこの制度を指すこともある。

この「技人国」在留資格は、機械工学の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師などが該当し、大学や専門学校で専門的な技能・知識を習得した即戦力だ。今回、取材した4社はともに「国内で採用することが困難な優秀な人材を採用することができた。期待以上の人材と出会えた」と、外国人採用の成果を実感している。

外国人を採用するには、まず現地国で希望者を募集し、研修教育して日本に送り出す、いわゆる「送り出し機関・送り出し会社」を知ることが第一歩となる。現地の大学に人脈があり、日本語教育のスキルも高く、誠実な送り出し会社との出会いが、高度海外人材採用の成否のカギとも言える。

 

日本で就労できる主な在留資格

  • 専門的・技術的分野=広義で高度人材と呼ばれる。大学教授、収入を伴う音楽・美術・文学などの芸術家、宗教活動、報道記者・カメラマン、弁護士、会計士、医療、俳優、歌手、プロスポーツ選手など。最も一般的なのが「技術・人文知識・国際業務」。
  • 技能実習生=日本の国際貢献として、開発途上国等の外国人を日本の企業で一定期間受け入れ、技能や技術、知識を習得し、母国の経済発展に役立てることを目的としている。労働力の需給調整としてはならない。
  • 資格外活動=大学等に通う留学生などが、申請によって本来の活動を阻害しない範囲で週28時間以内のアルバイトができる。
  • 特定技能=今春の法改正で導入された。国内で人材不足が顕著な14の産業分野について外国人が現場などで作業でき、労働力を確保する制度。

給与は日本人と同額以上が条件

「技人国ビザ」が許可されるにはクリアしなければならない審査がある。

まず、大学や専門学校で専攻した科目と従事する仕事が関連していることが重要で、専攻と関連のない仕事に関しては、「技術や知識などの専門性」を持っていると認められない。

従事する業務は、「技術や知識などの専門性が必要な業務」で単純作業は認められない。

外国人という理由で、給与を日本人よりも安くすることは禁止されており、同じ業務・キャリアの日本人と同額以上の報酬と定められている。大学新卒の外国人を雇用する場合は、日本人の大卒と同額以上の給与となる。

企業側には、外国人を雇用しなくてならない理由が必要となる。また、外国人の技術・知識を必要とする業務量を示すことも必要となる。

日本に留学している外国人大学生を卒業後に雇用する場合、日本に在留中の状況が審査の対象になる。

高崎商工会議所『商工たかさき』2019年6月号

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