進化する飲食業-チャンスを創出(1)

(2020年02月27日)

だんべー.comが仕掛ける「群馬のシェフ弁当」と「宅飯」


グルメ弁当をスマホで注文

新たなビジネスとして注目される仕出し弁当は飲食店の経営リスクを抑えながら飲食店の売り上げを伸ばす成長分野となっている。

老舗・名店の味のプレミアム弁当の市場をIT技術を使って開拓したことが、宅配仕出し弁当サービスを拡大させた。

スマホやパソコンから注文し、宅配サービスする宅配弁当専用サイトが都内等で利用者を増やしている。会議などビジネスシーンでの利用が拡大しており、こだわりの食材を使い、味や栄養バランスにこだわったグルメ弁当が「売り」になっている。

 

全国サイトが高崎も商圏に

宅配仕出し弁当サイトでは、利用日時、店舗名、和洋中華など料理のジャンルや価格、地域などから弁当を選んで注文、代金引換やクレジットカードなど支払い方法を選択する。利用する3日から4日前に注文を入れ、注文の最低金額は1万円程度で配達料は無料、注文の変更・キャンセル等の期限とキャンセル料の徴収など、店舗側が計画しやすい仕組みとなっているようだ。

全国展開している宅配弁当サイトには、群馬県内の都市部も配達エリアに含まれているが、都内に比べると高崎エリア内でサイト登録している店舗数はこれからという印象だ。

 

割烹×IT技術=新ビジネス

群馬の地域情報サイト「だんべー.com」を運営する株式会社群馬イートレンド(下之城町)は、宅配仕出し弁当サイト「群馬のシェフ弁当」を昨年8月からスタートさせた。現在18店舗が登録しており、同社の柴田博光社長は「お店にもお客様にも満足度の高いサービスを提供しています」と話す。

「だんべー」は2000年にスタートした。柴田さんは、「だんべー」から広がる新しいコンテンツやネットビジネスを展開しており、宅配弁当サイトの可能性に注目してきた。

「だんべー」の出店者には飲食店も多く、お店の味を消費者に届ける新しいツールとして3年前から「群馬のシェフ弁当」に取り組んできたそうだ。企業の会議など仕出し宅配弁当の用途は、既に高崎市内でも広がってきている。

「割烹さわ(八島町)」も、仕出し弁当の配達事業に乗り出しており、深澤龍一社長との連携で割烹、デリバリー、インターネットのコラボで事業が進められたと柴田社長は振り返る。着想から完成まで2年以上を費やした。

 

群馬に適した宅配弁当サイトに

柴田社長は宅配弁当サイトを企画する上で「東京のビジネスモデルを高崎に持ってきてもだめだろう」と考えていた。

サイトへの出店費用、デリバリーなどのコストは、弁当価格に転嫁されることになるが、都内は市場規模が大きく、高額商品の購買人口もあるため、利幅を小さくしても多売による利益を期待できる。また人口密度、オフィス密度、交通事情など高崎は都内と事情が異なる。「東京基準ではなく、群馬に適したサイトを作らないと、サイトの出店費用で弁当価格が上昇したり、食材のレベルダウンにつながることも懸念される。実際に弁当を食べたらがっかりした、などということがないように取り組みたかった」と柴田社長は言う。

「群馬のシェフ弁当」の価格帯はおおむね1,000円台から3,000円台で、群馬ブランドの牛、鶏などをメイン食材としている弁当も多い。地元でも入手困難と言われる増田和牛の焼肉弁当(2,600円〜4,800円)もラインナップされており、「群馬のシェフ弁当」だから実現できた商品企画と価格設定だ。

 

店の味と魅力を引き出すノウハウ

中食サービスは、店の改装や新たな設備など大がかりな投資をせずに売り上げ増が期待できる。

「群馬のシェフ弁当」に出店する店舗が弁当のメニューを考案し、具体化するまでには一定の期間を要することが多く、こうした店舗をサポートしていくことが重要という。

弁当は店の味を凝縮した作品と言える。弁当容器も様々な色・形、仕切りのサンプルを在庫してあり、実際に料理を配置する時の参考にしてもらっている。また利用客はサイトに掲載された写真を見て弁当を選ぶので、料理の魅力がわかり、おいしさを実感させる写真を撮影することが重要となる。こうしたノウハウは、「割烹さわ」の深澤社長に寄るところが大きい。

「群馬のシェフ弁当」サイトに続く第二弾としてお店に取りに来てもらうテイクアウト用のアプリ「宅飯」を開発した。スマホから店舗、料理を選んで希望日時を予約し、利用者が店舗に受け取りに行く。宅配弁当サイト「群馬のシェフ弁当」よりも出店しやすく、既に約40店舗が登録されている。

「インターネットの中に新店舗を出店すると考え、まずは今の設備、今のスタッフで取り組んでみてはどうでしょうか」と柴田社長は提案している。

人口減少や宴会離れなど飲食マーケットの縮小も指摘されている折り、飲食店の売上増につなげたい。企業のランチタイムやランチミーティングなどのビジネスシーン、プライベートのランチタイムなどの新需要も喚起していきたいと考えている。

高崎商工会議所『商工たかさき』2019年11月号

 

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