働き方改革支援

(2020年03月31日)


2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されている。高崎商工会議所では会員企業が働き方改革に取り組む上での課題の解決に向けた支援を行っている。当所の支援事業を活用された企業、協力いただいた企業を取材した。

 

「時間外労働等改善助成金事業」を実施

 

時間外労働の削減が急務

働き方改革法が施行され、中小企業においても2019年4月から年次有給休暇の確実な取得が義務付けとなった。順次、働き方改革法の実施が本格化し、2020年4月から長時間労働の是正を目的に時間外労働の上限規制が実施される。

 

また2023年4月には、全ての規模の企業について、月の残業時間が60時間を超えた場合、割増賃金の割増率を50%以上とする制度が適用される。

 

2020年4月の実施を前に、時間外労働の削減については、早急に取り組む必要があり、高崎商工会議所では、管内事業所の働き方改革への対応を支援するため「時間外労働等改善助成金事業」を実施した。

 

働き方改革に多様なアプローチ

働き方改革への取り組みは、経営課題の解決につなげることができる。日常業務の課題を見直し、システム化をはかり、IT技術の活用等によって生産性の向上や作業の効率化をはかることも、人手不足の軽減や時間外労働の削減につながる。

当所は働き方改革に取り組む管内企業への支援として、セミナーの開催やPOSレジとキャッシュレス機器の体験コーナーの開設、AI翻訳機「ポケトーク」の貸出、市内企業見学ツアーなどの事業を実施している。

開催したセミナーは、キャッシュレス決済入門講座(2019年7月3日)、キャッシュレス決済最終確認説明・展示会(2019年9月2日)、外国人就労者との上手なコミュニケーション(2019年10月7日)、スマホを活用したインバウンド対策セミナー(2020年1月17日)となっている。

 

POSレジ・キャッシュレス決済を導入

 

代表取締役  茂木 節夫さん

TOYS & GIFT MOMO

(有限会社トリシカ)

高崎市下小鳥町463-1

営業時間 11:00 〜18:00

定休日 火曜・第3水曜日

TEL.027-362-3508

 

全国でも数少ない専門店

MOMOは平成8年(1996)に、ヨーロッパの木のおもちゃの専門店として筑縄町にオープンした。当時、ヨーロッパの木のおもちゃのみを販売する店は全国でも少なく、県内外、北関東など広くお客様が訪れるようになった。

 

平成22年(2010)に環状線と高崎渋川線交差点に近い現在地に移転し、店舗面積もそれまでの8坪から約2倍に広がった。MOMOのブランドは子育て家族や保育・幼児教育関係者に浸透している。贈答用の需要も増え、2018年に「TOYS & GIFT MOMO」に改名した。

 

おもちゃは創業当時と変わらぬラインアップで、揺るがないコンセプトに信頼が寄せられている。取り扱っている商品はボディケアや洗剤などに広がり、オーガニック関係ではハーブティーなどの食品も販売している。

 

代表取締役の茂木節夫さんは、令和元年10月の消費税引き上げと軽減税率に対応するため、店舗で使用しているレジの買い替えを、新税制施行の1年ほど前に計画した。

 

MOMOで使用していたレジは、キャッシュドロワとレシート印刷がついた会計機能だけのシンプルなもので、売上や在庫は手書きの台帳で管理していたそうだ。軽減税率に対応するため、いわゆるガチャレジではなく、システム化できるPOSレジの導入を考えた。

 

タブレットPOSレジを選択

POSレジの導入にあたって、国の補助金を活用しようと、茂木さんは高崎商工会議所を訪れた。その当時は、当所に実演コーナーがなく、東京都内のシステム会社まで行って説明を受け、タブレットPOSレジを選択した。

 

決め手のポイントとして、約3千点の商品アイテム数にクラウドサーバーが対応できたこと、端末としてスマホとの連動やスタッフの勤怠管理も対応したことが上げられる。

 

新しいPOSレジシステムは、令和元年5月に稼働し、販売・在庫・経理のリアルタイムの状況が手元のスマホですぐに見ることができるようになったそうだ。

 

売上の入力は小型タブレット端末を選んだ。タブレットは薄くて場所を取らず、レジプリンタとキャッシュドロワはレジカウンターの下段に収納した。POSレジとともに導入したキャッシュレス決済の端末を含めても、レジ周りがスッキリした。「ランニングコストも負担感がない」と言う。

 

商品を軸にシステム移行

タブレットやスマホなどによる会計は、若い世代には受け入れ易く、スムーズに移行でき、お客様にも好評ということだ。

 

システム移行の重点になったのが3千点の商品アイテムだった。「システム選定にあたっては提供されるクラウドサーバーの容量も重要」と茂木さんは語る。3千点に及ぶ商品マスターの初期入力は作業負荷が大きいので、システム会社に外注することも考えたが、自社で扱っている商品の見直しにつながると茂木さんは考え、自前で作業することに決めた。

 

商品のほとんどが輸入品のため、バーコードが付いていない商品も多くインハウスマーキングの必要があった。入力作業や小さな商品にまで価格シールを張り付ける作業は大変だったが、店長以下スタッフの努力で乗り切ることができた。

 

見えなかったことを「見える化」

それまで使っていたレジでは大まかな商品分類しか登録していなかったので、新しいシステムではレシートの記載もお客様にわかりやすくなり、きめ細かな商品管理ができるようになった。

 

商品知識についてもスタッフ全員がスキルアップし、情報共有できた効果も大きい。商品の仕分けなど棚卸なども効率のよいルールが生まれたそうだ。

 

「売れていると思いこんでいた商品、売れていたのに気付いていなかった商品など、手作業での見落としが改めてわかった。見える化ができた」と茂木さんは導入効果を語る。

 

POSシステムの導入に合わせて店内のレイアウトも工夫し、「0歳〜1歳」など年齢によってコーナーが分けられている。初めての子育てで、どんなおもちゃを与えていいのか相談を受けることも多いという。「子どもに長く寄り添ってくれるおもちゃを紹介しています」という。

 

キャッシュレスが増加

ポイント還元制度も追い風となり、バーコード決済などキャッシュレス決済を導入した効果も現れてきている。キャッシュレス決済は、ポイントキャンペーンなど話題性もあり、お客様のニーズは益々高まると見られる。MOMOが扱う商品はおもちゃとしてはハイエンドであり、キャッシュレス決済の利便性が生かされると考えられる。店舗側の手数料負担については、今後の動向を注視していきたいと茂木さんは考えている。

MOMOは、子育て世代の客層が多いことから、高崎プレミアム付商品券(非課税者と3歳未満児がいる世帯が購入できた)も利用されているそうだ。

 

働き方改革への効果

POSレジの導入によって省力化が図られ、スタッフの労力をお客様への接客や販売促進など、創造的な仕事に振り向けることができたという。より適切な在庫とタイムリーな発注が可能となり、チャンスロスの縮減につながっているそうだ。「職場環境がリフレッシュでき、スタッフの意欲につながっている」と話す。

クラウドシステムは、今後、消費税率などに変更があった場合も、簡単な作業でレベルアップできると茂木さんは考えている。将来的なシステム管理の省力化も導入のメリットと言う。

 

従業員の定着が品質に直結 AI通訳機でコミュニケーション

 

代表取締役社長 斉藤 隆さん

斉藤プレス工業株式会社

高崎市矢島町160

TEL.027-352-5103

 

コミュニケーションは働き方改革

中小企業が抱える慢性的な人手不足や生産性、品質向上などの経営課題の解決に向け、当所は会員企業に伴走型の支援を実施している。

 

市内企業でも、海外進出や海外人材の活用が進み、多言語によるコミュニケーションに不安を感じている企業に役立ててもらおうと、当所では手のひらサイズのAI翻訳機の無償貸し出しを行っている。

 

矢島町の斉藤プレス工業では、5人の外国人を雇用し、タイから2人の研修生を迎えており、この翻訳機をコミュニケーションに活用してもらっている。

 

コミュニケーションが円滑になると、職場の人間関係が円満になり、品質の向上と人材の定着=働き方改革につながると斉藤隆社長は考えている。

 

一貫生産で高い付加価値を

斉藤プレス工業は昭和40年に京目町で創業、昭和61年に矢島町の現工場に移転した。

 

自動車部品を中心に受注し、プレス、溶接、加工、組み立てまで一貫生産を得意としている。「ろう付け加工」と呼ばれる溶接技術が同社の強みで、複雑な形状や大量生産に対応している。

 

自動車のパーキングブレーキの部品を国内の大手メーカー3社に供給しているそうだ。強度検査ではハイスペックな機器を導入し、顧客の厳しい仕様に対応している。

 

新市場を求めタイへ進出

斉藤社長は、国内市場の先行きが懸念されることから海外市場に注目し、2012年から海外進出の検討を始めた。おりしも取引先からタイへ進出しようという話を持ち掛けられ、タイの工業用地や産業を視察した。結局、取引先はタイ進出を取りやめたが、斉藤社長はタイに可能性があると考え、進出を決断したそうだ。

 

2013年にタイの工業団地にSaito Press(Thailand)Co., Ltd.を設立、工業団地内には日系企業の工場なども立地している。

 

斉藤社長は現地に3年間駐留し、工場の立ち上げに取り組んだ。タイ工場の成否は同社の死活問題で、当初はタイの国民性や習慣の違いに戸惑ったが、2年越し、3年越しの営業が徐々に実ってきているという。

 

貸し出しAI翻訳機を活用

高崎の本社工場とタイ工場の両輪で会社を発展させていきたいと斉藤社長は考えている。一方、人材確保は思うようにいかないことも多いそうだ。日本人の求人採用には苦労しているという。外国人雇用には以前から取り組んでおり「やる気があれば採用していきたい」と業務全体を考えて判断をしているそうだ。

 

「当社の従業員は多国籍と言えるでしょう」と斉藤社長は話す。

一般雇用している外国人は、日本人と結婚し、日本での生活も長いので日本語は堪能な人たちだという。2人のタイ国研修生については、日本語の語学力に差があり、会話を補うために、当所の貸し出しAI翻訳機を活用している。

 

作業のポイントを伝えることが翻訳機を活用する目的で、単語の翻訳で十分に伝わるそうだ。「『こんな感じ』など日本人は感覚的に教えることが多いので、翻訳機を使うと相手がわかりやすいように教える練習にもなります」と言う。カンやコツではなく、誰でもすぐにできるように標準化することも斉藤社長の狙いだ。

 

作業の指示を正確に伝えることはもちろん重要であるが、コミュニケーションが円滑になると人間関係も、職場の雰囲気も良くなり、業務も効率化し、スタッフの定着率も高くなる。AI翻訳機が働き方改革の一助となっているようだ。タイ国研修生が研修期間を終えて帰国した際には、同社のタイ工場で働いてほしいと斉藤社長は期待している。

 

「お客様のレベルの高い要求に応え、これからも品質の高い製品を製造していきたい」と斉藤社長は語る。

 

 

高崎の仕事を子どもたちに紹介 市内企業見学ツアーで訪問

 

取締役副総支配人 前田 淳さん

ホテルメトロポリタン高崎

高崎市八島町222番地

TEL.027-325-3311

 

長期的な視野で職業教育

労働人口の減少に加え、首都圏への労働力の流出、雇用のミスマッチによる早期離職など、中小企業の雇用環境は厳しさが続いている。

 

当所は、将来を担う高崎の子どもたちに地元の企業を認識してもらい、早期キャリア教育や職業観の形成につながる取り組みとして中学生を対象に市内企業を見学するバスツアーを令和元年8月に実施した。

 

今年度で3回目となり、関越冷蔵、ホテルメトロポリタン高崎、上信電鉄、ハラダを訪問した。

 

見学ツアーの訪問先企業として尽力していただいたホテルメトロポリタン高崎の前田淳取締役副総支配人に、お話しをうかがった。

 

感動体験! 仕事の舞台裏も見学

「ホテルはおもてなし、思いやりがなければできない仕事です。自分の力を発揮するために日頃、どんな準備をしているか。自分を磨くことの大切さを中学生の皆さんに感じていただきたいと思いました」と前田副総支配人は、中学生一行を迎えた。

 

客室の見学では感嘆の声が上がったそうだ。厨房など普段は入れない場所も見学し、ホテルの舞台裏も見てもらった。多くのスタッフ、様々な仕事によってホテルは運営されており、「お客様として訪れるホテルと、職場としてのホテルの違いを見てもらえたと思います」と前田副総支配人は語る。

 

ホテルメトロポリタン高崎で昼食タイムとなり、せっかくの機会なので、フォークとナイフを使った食事でテーブルマナーも体験してもらった。参加した中学生の将来に生かされることだろう。

 

見学ツアーを通じて、仕事に対する心を感じてもらうことも目的の一つだ。前田副総支配人は「中学生の感性は初々しく、ホテルに興味を持ってもらえるとうれしいです。とても良い試みだと思います」と話し、見学ツアーを評価している。

 

高崎のお客様が多様化

高崎の宿泊施設はビジネスでの利用者が多かったが、高崎アリーナが開館して以来、スポーツ団体の利用者が大きく増加した。さらに高崎芸術劇場やGメッセ群馬の開館と続き、群馬デスティネーションキャンペーン、東京オリンピック・パラリンピックの開催と、国内外のお客様が増えていくことが見込まれる。

「お客様の多様化に応え、ますます質の高いサービスが必要になっています。ホテルは観光拠点としての役割は大きい。高崎の観光業界が力を合わせてクオリティを上げていかなければならないと考えています」と前田副総支配人は話している。

「働き方改革」は企業の重要な経営課題の一つとされている。今回の事例では、非効率的な事務作業、バックオフィス作業の改善等を通じて、生産性の向上、就業機会の拡大、離職率の低下、意欲を発揮できる職場環境の創出が見られた。「働き方改革」が魅力ある職場づくりにつながっているようだ。

 

高崎商工会議所『商工たかさき』2020年2月号

 

 

 

 

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