150万都市圏の業務核都市・高崎

(2016年03月23日)


  高崎市を中心とした日常的な経済圏の一体化が進んでいる。高崎都市圏の範囲は、接する市町村だけではなく、西毛から埼玉県北部に及び、圏域の人口は100万人、前橋都市圏と合わせ150万人となっている。高崎は今、まさに都市構造が大きく変化し、都市圏での機能強化が広がっている。

 
「商工たかさき」 2016/3号より
  

■中之条から本庄まで高崎都市圏

●全国上位にランクイン。 高崎の都市イメージも広く認知

 高崎の力が全国的にも評価され、都市ランキングなどに表れ始めた。経済産業省の平成26年商業統計で高崎市は全国14位となり高崎のビジネス力を示した。2年前の経済センサスと同順位で、全国における高崎のポジションが現れている。
 日経ビジネス2016年1月25日号の「活力ある都市ランキング」で高崎市が全国29位にランクインした。調査対象は働く世代2万人。高崎の交通拠点性やビジネス力など、体感していてもなかなか尺度で測れない面もあったが、高崎の都市イメージが群馬県内外に、特に県外に広く認められてきたと言えるだろう。日経ビジネスの調査で、働く世代に高崎が評価されたことも重要だ。
 

●年間1,500万人が高崎に流入

 日常生活やビジネスの場が、市町村の境界を越えて広がっていることは言うまでもない。西毛、群馬県全体、北関東、首都圏と地図を拡げていくと、高崎を中心とした生活圏、ビジネス圏の広がりや特徴が見えてくる。特に高崎とつながりの強いエリアが高崎都市圏として捉えられる。
 高崎都市圏を簡単に言い表すと、高崎に通勤、通学して来る人たちが、どの市町村に住んでいるのかを調べ、その範囲を地図にしたものだ。買い物や出張、観光ではなく、常時就業・就学の場として、高崎に毎日どれだけの人が集まってきているかを見るものだ。産業や教育で、近隣市町村の受け皿として、どれだけ大きな器をも持っているか、高崎の都市規模を示している。なお、平成27年に実施された国勢調査は、まだ詳細な資料が発表されていないため、平成22年国勢調査から推計した。集計対象は15歳以上なので、通学者の場合は、高校以上の学生・生徒となる。
 高崎市に通勤、通学している人は20万人で、その32%の6万3千人は、高崎市外から来ている人たち(=流入人口)だ。※年間1,500万人の流入人口が高崎都市圏となる。また逆に、高崎市の居住者がどれだけ市外に通勤・通学しているのかを見ると、市内に住む15歳以上の通勤通学者は19万人で、そのうち29%の5万5千人が市外へ通い、流出人口となっている。(表Ⅱ)
 高崎市の人口(=夜間人口)は37万人だが、流入人口6万3千人と流出人口5万2千人の差し引き1万1千人によって、昼間人口は38万人を超えている。(※ 年間就業日250日で算出)

 

●高崎都市圏と前橋都市圏

 通勤・通学者の流入、流出の実態を見ると、高崎と最もつながりの深いのは前橋となっている。前橋と高崎は全国でもまれな複眼都市で相互のつながりは強く、他県では、前橋と高崎の機能が一つになった県庁所在地を中心に都市圏を形成している。
 国などの政策では、前橋・高崎都市圏として捉えていることが多い。群馬県内では、さらに太田市を中心にした東毛都市圏が加えられている。都市圏を構成する都市は全国に61市(総務省)あり、群馬県では前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市の4市となっている。群馬はこの4市が隣接し、全国でも極めて特異な地域となっている。
 複眼の前橋と高崎は一体的であることはまちがいないが、2市を合わせた前橋・高崎都市圏は北毛を除く群馬県域のほとんどを含んでしまうために特徴が見えにくい。2市がそれぞれの個性を持っていることから、本稿では都市圏をわけ、高崎都市圏を考えていく。

 

●150万人に及ぶ高崎都市圏の枠組み

 平成22年国勢調査から高崎都市圏を推計すると、最も範囲を大きく考えた場合は、中之条町から埼玉県本庄市までの100万都市圏となる。都市圏の設定基準について諸議論があるが、中心都市への通勤・通学による流入人口が指標に用いられる。
 市町村から中心都市へ人口流出の比率が10%超であれば結合が強く、1.5%程度でも都市圏域として関係を持っていると考えられる。都市圏として高崎との関係が非常に強いのは、10%以上の安中市、榛東村、藤岡市、玉村町、甘楽町で圏域人口は約56万人、5%以上の吉岡町、富岡市を加えた都市圏の人口が63万人、中之条町から埼玉県本庄市まで含めた都市圏人口が110万人となっている。埼玉県北部の神川町、上里町は、高崎との関わりが大きく、本庄市は1.5%に近い数字なので都市圏に含めた。(表Ⅰ・図Ⅰ)
 高崎都市圏は、前橋市とその都市圏を結合していることから、実際の都市圏人口は150万人と考えられる。

 

■都市圏を牽引する 内陸有数の業務機能

●全国14位のビジネス都市 商工業に加え宿泊・飲食、物流も県内最大

 高崎市の民間事業所数1万7,331事業所、従業者数17万2,668人(平成26年経済センサス)で、群馬県最大のビジネス規模を持っている。平成24年の前回調査を事業所数で346社(2.0%)、従業者数で5,797人(3.5%)上回り、成長を示している。
 経済産業省の平成26年商業統計で、高崎市の卸売業と小売業の販売額を合計した商業販売額が2兆6,910億円となり、全国14位となった。2年前の経済センサス市町村ランキングと同順位で、全国の政令指定都市と肩を並べる商業力を示した。
 卸売業の販売額は2兆2,487億円で全国12位、このうち電気機械器具は東京23区、大阪市、名古屋市に次ぐ全国4位で、ヤマダ電機本社が高崎市に所在することで順位を大きく押し上げている。小売業の販売額は4,423億円で全国36位となっている。
 また、高崎市の工業出荷額は7,205億円(平成26年速報値)で群馬県3位。ビジネスを支える都市機能として、宿泊飲食業が1,934事業所、従業者1万4,369人、物流でも運輸業300事業所、従業者9,185人でおおむね群馬県最大規模となっている(平成26年経済センサス)。

 

●ビジネスマンのエリア拠点 需要の伸びが現状の能力を上回るか

 高崎市の観光入込客数の推計数は、平成26年が年間529万4千人で、このうち県外客が178万8千人となっている。ほとんどはビジネスマンで、59万1千人が高崎に宿泊している。県外客の宿泊数は、群馬県内都市部では最大、温泉リゾートと並ぶ宿泊数であり、伊香保温泉に匹敵する宿泊能力を持っている。
 高崎に宿泊しながらエリアセールスを展開するビジネスマンが多く、レンタカー需要は右肩上がり、トヨタレンタリース高崎東口店の利用数は関東一の年間約3万台となっている。車両台数を増強したことも要因のようだが、増やした台数分の利用があるということは、それだけ潜在需要があったということだ。
 高崎のビジネス拠点性を更に伸ばすために、宿泊能力強化の必要性を、今号の高崎人で取材したヤマダ電機の桑野光正取締役、トヨタレンタリース群馬の横田衛社長がともに指摘している。高崎のビジネスの伸びは、現状の都市能力を上回っている可能性もある。

 

●高崎駅は「定期外」に伸び

 高崎駅の乗車人員は、平成26年度が1,062万5千人で一日平均2万9,111人、25年度に比べやや減少したが、21年度以降、増加基調にある。
 高崎駅乗客の内訳は、定期外の一般が515万人、定期が547万5千人で、前年度よりも一般乗客が増加、定期の乗客が減少した。高崎問屋町駅の乗客が増加しているので影響を受けていることもありそうだ。26年度の新幹線乗車人員は一般が296万2千人、定期が200万2千人で、前年度に比べ、こちらも定期外の一般利用客が増加している。
 レジャー期の新幹線利用客は、平成27年12月末から28年1月の年末年始12日間で上越新幹線(大宮・高崎間)が67万6千人、北陸新幹線(高崎・軽井沢間)が70万8千人で、北陸新幹線は前年比178%と大きく伸びた。金沢延伸により需要が大きく拡大したようだ。
 高崎駅の一般乗客の増加は、通勤や通学以外で高崎を訪れる人が増えたことになるので、ビジネス客、観光客の増加とも受け取れる。また富岡製糸場世界遺産の効果で、上信高崎駅は、平成26年度の乗車人員が86万2千人で前年度に比べ9%増加、定期外の一般利用者だけを見ると約30万人で、前年度に比べ25%も増加している。

 

●首都圏の山の手機能

 高崎は都市圏から就業や通学で人を流入させるとともに、首都圏の山の手として、ベッドタウンの機能も持つ。東京への通勤・通学者が多く、交通拠点として東京への人口流出を抑えている。
 高崎駅の新幹線定期は、平成26年度が通勤・通学を合わせ200万2,786人、一日平均8千人となっている。高崎から東京までは、八王子、千葉あたりと同程度の時間距離で、東京都内のサラリーマンの通勤時間は平均で1時間前後という調査もある。(※ 年間就業日250日で算出)
 高崎や群馬で生まれ育った人が故郷を離れずに、首都圏に通勤しているとともに、高崎の自然や歴史文化、市民性などに惹かれて東京ではなく高崎に住居を持ちたいという需要もある。高崎駅周辺の「駅近マンション」が好調であり、パークアンドライドの駐車場需要も多い。また子育て世代の新幹線通勤にあわせた保育所の充実もなど、きめ細かな子育て支援策が大切だ。
 

■政令市と並ぶ全国水準の都市に

●高崎の人口増は圏域の活力に不可欠

 人口減少社会の中で、高崎市は人口の微増傾向を続けており、高崎市は現在の人口37万人から、10年後は40万人とする人口ビジョンを示した。
 出生数が減少しているため、人口の自然増加は見込めず、都市間で人口を奪い合う厳しい時代になっている。高崎市の今の人口増加は、他の市町村から転入してくる人が多いことが要因で、年間に100人から200人程度の増加となっている。
 人口のパイは限られているので、高崎が増えれば、他が減ることになる。しかし人口が流入する中心都市が地域に無かった場合、地方から東京へ人がどんどん流れ出てしまうので、都市圏全体の人口を堰き止める都市の役割が、近年、非常に重要視されており、国も政策的に地方の中心都市による都市圏形成を進めている。
 高崎の人口増加は、都市圏全体の人口や活力を維持するために不可欠で、高崎市単独の問題ではない。一方、高崎の増加幅は年間に数百人で、仮にこの状態が10年間続いても数千人の増加にとどまり、40万人どころか38万人にも及ばない。3万人を増やすためには、これまで以上に大きな潮流を作りだす必要がある。

 

●全国に際立っていくことが最重要

 高崎の経済は、高崎都市圏内だけではなく、首都圏や全国との交流によって維持、発展しているので、市民生活の充実に加え、「外からどう見られているか」が重要な観点となることを強調しておきたい。高崎は、外から評価されて発展してきた。
 「外からどう見られているか」は、もちろん飾り立てることではなく、産業力や都市文化、都市景観など高崎の実力を、対外的に示していくことだ。都市圏全体への波及を考えれば、そこそこのレベルではなく、全国に際立った都市であることが必要だ。
 高崎の景観や都市文化がまちのイメージを高め、高崎のまちのおもしろさが個店の集客や売り上げにつながる。産業力の高さや集積が市内企業のイメージを高め、ビジネスを発展させる。個店の魅力や企業力が高崎の評価を高め、好循環を作っていく。この循環を都市圏全体に波及させることが、中心都市の役割だ。
 市民が考えている以上に、高崎は、外から見られている都市なのである。そうした意味からも全国ランキングに高崎が入ってきた意味は大きい。

 

■働く世代が増える都市圏に

●人口40万人を達成するためには

 高崎の人口を現在の37万人から10年間で40万人に増やすために、あと3万人の人口をどう創出するか。年間に0.9%程度、人口を成長させることになる。
 3万人を新規雇用でまかなった場合を考えてみると、働く家庭が1世帯家族3人として、1万人の新規雇用を創出し、全就業者世帯が高崎に転入してくると、3万人増加になる。創出した雇用が、全て高崎に転居してくることはないので、実際には、その何倍もの雇用創出が必要だ。また、高崎の事業所の平均従業者数が10人弱の9.8人なので、1万人の雇用を生み出すだけでも、1千社分の新規開業が必要になる。
つまり高崎が人口を3万人増加させるために努力することは、何倍もの雇用創出効果となって都市圏全体の就労者を増やし、人口対策に役立つことになる。
 40万人達成は10年計画なので、年間に新規従業者を数千人、新規事業所100社以上の創出が必要だが、これは実現の可能性を持つ。
 

●市内従業者の増加が人口を誘導

 平成26年経済センサスで高崎市の事業所数は平成24年に比べ326事業所(2%)増、従業者数は5,797人(3.5%)増加した。年間に高崎市内の事業所が年間163社、従業者数が2,898人で、ひとくちに3千人増加したことになり、このペースが10年間継続すれば、皮算用で3万人の新規従業者を生み出すことになる。
 年間3千人の従業者の増加が、そのまま居住人口の増加数にならないものの、高崎への転入をしっかり誘導しているようだ。
 高崎市の人口ビジョンによれば、転入と転出の差し引きは、過去5年間の平均で、県内が年間約800人の増加、東京や埼玉など県外はマイナス190人となっており、全体で年間に約600人の増加が見られている。この増加した人口は働く世代で、高崎市の人口ピラミッドを見ると、団塊ジュニア世代とも重なり、30歳台から50歳台が膨らんでいることがわかる。(グラフⅠ)
 高崎スマートIC産業団地の一次内定企業8社で3千人、イオンモール高崎駅前(仮称)で1千人の雇用創出が見込まれていることなどもあり、順調に推移すれば10年後には40万人に手が届きそうだ。また、そのためには、子育て対策による出生数の増加と高齢者が元気で暮らせるまちづくりにより、自然動態のマイナス幅を縮小し、わずかでもプラスに転じるように努めていくことが必要だ。

 

●まだ、高崎の力は十分に発揮されていない

 高崎の昼間人口は、夜間人口に比べて1万1千人多く、昼夜人口比は103%となっているが、この数値は高崎の都市機能からするとかなり低い。前橋市、太田市と比較しても、昼夜の人口差は前橋市が1万5千人、太田市が1万2千人で高崎市よりも多い。昼夜間人口比率も高崎よりも大きい。(グラフⅡ)
 高崎への流入人口を、年齢階層別に見ると、30歳台、40歳台の働く世代が極端に低い(グラフⅢ)。働く世代を高崎に吸引し、定住させることが成功しているので、雇用需給と定住人口のバランスがとれてしまったと見られる。高崎スマートIC産業団地を始めとする産業政策で雇用創出をはかれば、働く世代が更に高崎に流入し、定住増につがっていくことになる。
 

●意外! 10代後半から20代前半の女子に人気?

 年齢別の昼間人口の流入で特筆すべきは15歳から19歳までの流入比率が最も高い。次いで20歳から24歳までとなっており、男女別では女性が圧倒的に多い。10代後半から20代前半の女性の流入が高崎の特徴となっている。前橋市は官公庁のような職場が影響しているのか、各年齢層に大きな差が無い。太田市は、働く年齢層の男性の吸引力が大きい。高崎に高校、専門学校、大学が集積していることが大きく関わっていると見られる。
 15歳から19歳女性は夜間人口が8,814人、昼間人口は1万1,282人で2,468人増、昼夜間人口比率は128%で、比率だけを見れば東京23区の125%を上回っている。20歳から24歳女性は夜間人口8,492人、昼間人口9,938人で1,446人増、昼夜間人口比率は117%となっている。
 この数字だけを見ると、高崎はビジネスのまちというよりも、ファッションのまちという構造だ。各学校の努力も大きいだろうし、高崎の交通利便性に加え、先進的な都市イメージも関係しているのではないか。高崎近郊の10代は、ワクワクしながら高崎のまちなかに遊びに来て「高崎デビュー」をする。渋谷や新宿に準じた都会なのである。こうした若者に対する都市イメージも高崎の都市の特徴として育てるべきである。
 

●50年がかりの都市圏構想が実現

 埼玉県北部と群馬県中心部による都市圏は、都市づくりの黎明期、1964年に世界的な建築家・丹下健三氏が「上武広域都市開発基本計画」を構想し、上武150万都市圏の可能性を提起している。また県内の識者による「理想の都市建設研究会」が、1970年代から長きにわたって県央政令指定都市の実現に向けて研究と提言を行っている。
 こうした構想から50年後の今日、高崎を母都市(中心都市)とする高崎都市圏というかたちで実現されつつある。地方創生が全国の地方都市で大きなテーマとなっているが、高崎都市圏が地方再生の先駆的なモデルとなるよう、ビジョン形成など積極的な取り組みが必要だ。

 
(商工たかさき・平成28年3月号)

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