高崎で起業の夢を実現する

(2016年12月27日)

高崎市産業創造館


 地域経済の活力を維持、向上させるためには、既存事業者の発展とともに新たな事業者の育成が重要だ。群馬県最大のビジネス都市・高崎は創業に適した環境であり、若き起業家を中心に、夢の実現をめざしている。

 
「商工たかさき」 2016/11号より

 
 
  

●高崎市内外から希望者。産業創造館は満室状態

 新しい事業の創出や地域経済を活性させる手法の一つとして創業支援が注目され、1990年代後半から、世界的な規模でインキュベーション施設の設置が進んできた。高崎市産業創造館は、起業家の育成や新しい事業に挑戦する中小企業の第二創業の支援などを目的に平成18年に設置され、当所が指定管理者として、入居者、相談者に対する支援業務を実施している。
 産業創造館には、これからビジネスを始めようとする人を対象にしたデスクスペースの創業準備室6ブース、事業展開をめざす設立間もない企業を対象にした企業支援室13室があり、事業内容に応じて部屋の広さや設備機能を選べるようになっている。
 資金力のない起業家を対象にしているので家賃は低廉で、専門スタッフによるサポート体制が充実しているため、高崎市内外から希望者が集まり、創業準備室、企業支援室ともに満室の状態が続いている。
 入居期間は、創業準備室が6カ月(最長1年)、企業支援室が3年(最長6年)で、入居時は書類や面接などの審査が行われる。
 

●高崎ならではの手厚い支援を実施

田村マネジャー

 現在、産業創造館で創業支援を行っている田村信文さんは、元高崎商工会議所事務局長で、中小企業診断士、インキュベーションマネジャーの有資格者だ。群馬県内で創業支援の専門資格者によるサポート体制を整えているのは、高崎市の産業創造館だけで、起業家に寄り添った支援を実施している。販路開拓や企業実務に必要な会計士・弁護士の紹介、外注先など地域資源の活用といったネットワークづくりも支援する。
 「起業の志を収益の上がるビジネスモデルにしていくため、伴走型の支援が重要。5年後の自分の姿をビジョンとして持ってほしい」と田村さんは考えている。背中を押してもらう一言が欲しくて、相談に来る入居者もいる。田村さんは、「“気づかせる”ためのコーチングが重要な支援活動の一つ」と語る。
 「失敗から学んで克服し、小さい成功をコツコツ積み重ねてもらうことが成功につながる」という。
 

●入居者交流で意欲と連携が生まれる

 入居者が取り組んでいる事業は様々であり、起業の厳しさも田村さんは見てきた。収入ゼロが数カ月あるいは1年続くかもしれない。「やってみなければ、うまくいくかどうかわからない。しかし、やみくもではうまくいかない」。勝負どころをつかんで、成功した事例を田村さんは見てきた。
 産業創造館の入居者は、一人で起業をめざしているケースが多い。同館で毎月開催しているランチミーティングなどにより、入居者同士の日常的な交流が生まれ、孤独にならずにお互いが精神的に支え合い、仕事面でも連携できるメリットも大きい。
 これまで46事業者が産業創造館を卒業し、約7割が事業を軌道に乗せている。「高崎でビジネスチャンスを広げ、経営課題を乗り越える力を産業創造館で培ってほしい」と田村さんは語る。

■産業創造館の起業家たち

 起業家は「自分の技術を生かした事業がしたい」、「仕事を通じて自己実現を図りたい」と情熱にあふれている一方、事業がうまくいかなかった場合の収入減少、事業失敗時のリスクなど不安も抱えている。高崎市産業創造館の入居者、卒業者に起業の胸の内を聞いた。
 
 

株式会社 NOIKEデザイン(産業創造館入居中)

野池 伸一社長

野池 伸一社長
校内案内板(中学校)
生徒用ロッカー(小学校)

 

●御用聞き営業でどんな仕事もやった

 「お客様と直接関わりながら自分の可能性に挑戦したい」と、野池さんは約20年つとめた県内の内装工事会社を退職し、建築デザイナーとして独立を決意した。桐生出身で、高崎とは余り縁がなかったが、知り合いから「高崎に創業者をバックアップしてくれる施設がある」と聞き、さっそく産業創造館に応募。事業計画書や面接による審査に合格し、2012年5月に創業準備室に入居した。
 創業当初は御用聞き営業をしながら、どんな仕事もこなした。学校や幼稚園の改修に合わせ、教室に備え付ける児童用の収納棚のデザイン・製作で実績を積み、群馬県内をはじめ埼玉県や都内の仕事も受注。これまで80校以上を手掛けてきた。看板や案内サイン表示などの業務で、デザイン力を発揮している。2013年に25㎡の創業支援室に移り、2015年には株式会社として法人化にこぎつけた。
 

●「がんばってね」が励みに

 「細かなこともおろそかにできない」と語る野池さんの姿勢は顧客に評価されている。「お客様も定着してきました」と手応えを感じ、会社として軌道に乗ってきている。
 これまで野池さん一人で会社を切り盛りしてきたが、これからスタッフを増やしていきたいと考えている。産業創造館で定期的に実施している入居者同士の交流会「ランチミーティング」や当所のビジネス交流会にも積極的に参加し、交流を深めるのも楽しみだという。「高崎は活力がある会社が多く、ものづくり企業が元気にがんばっている」と話す。
 40歳を過ぎてからの起業を、家族もサポートしてくれた。家族の「がんばってね」の言葉が大きな支えになった。野池さんは本田宗一郎を心から尊敬し、起業家精神に啓発されているそうだ。

株式会社スリーエイト(産業創造館入居中)

関口 智紀社長

関口 智紀社長

 

●県内で2人だけのウェブ解析士マスター

 関口さんは、ウェブ解析士マスターという特殊な資格を生かし、企業のウェブ戦略を提案しているほか、ウェブサイトの売買・M&Aなど、インターネット・ウェブ業界の最先端を走っている。
 ウェブ解析士は、ホームページのアクセス解析やウェブマーケティングの専門資格で、全国に1万6千人が認定を得ているが、上級資格者は987人、最上位のマスター資格になると114人しかいない。
 関口さんは、高度なスキルを生かし、提案・実践型のウェブ・コンサルティングを行っている。
 

●企業の業績に直結するウェブコンサル

 そんな仕事があったのかと感じられるが、例えばインターネットによるショッピングは当たり前の時代となり、巨大な市場を形成している。インターネットによる情報提供は消費者を大きく動かしている。ウェブサイトやメールマガジンによる情報が、どのような購買層をどのように動かしているのか、売上に結びついていたのかを詳細に検証し、次のウェブ戦略を立案していくのが関口さんの仕事だ。
 

●創造館のサービスを活用

 顧客のほとんどが東京を中心とする県外の大手企業で、関口さんは高崎の交通利便性を実感している。創業当初は市内の自宅で仕事をしていたが、2013年に産業創造館に入居した。
 産業創造館の顧問弁護士に契約書をチェックしてもらうなど、産業創造館のサービスやネットワークを活用している。
 「中小企業こそウェブを活用して勝てる」と関口さんは考えている。関口さんの技術は、ウェブの職人技と言え、今後は人材の育成をはかっていきたいそうだ。
 

株式会社 群馬イートレンド(産業創造館卒業)

柴田 博光社長

柴田 博光社長
群馬のタウン情報サイト「だんべー」

 

●ガレージで創業し無給の生活

 インターネットの一般普及が始まった黎明期、2000年7月、柴田さんは自宅の倉庫を事務所に、3人の仲間で起業し、群馬のタウン情報サイト「だんべー」を立ち上げた。ガレージ起業と言えば聞こえが良いが「冷暖房もきかず、女性を採用できる環境ではなかった」と柴田さんは振り返る。
 毎日50件の飛び込み営業を行った。話を聞いてもらえるのは数件、契約してもらえる店舗はわずかだった。
 最初の1年間は給料はゼロ。2年目からは少額ながら給料を出せるようになったが、月によって不安定。「お昼は家で作ったおにぎり。貧乏だったが3人が高いモチベーションを持っていた。苦しかったが楽しかった」という。インターネット時代が到来するはずだと、自信があったが結果がついてこなかった。「やめようか」と何度も考えた。起業から5年ほどでようやく事業への確信が持てるようになったという。
 

●創造館入居が大きな喜びに

 2007年に産業創造館に入居できたときは「本当にありがたく、うれしかった」の言葉に尽きるそうだ。
 エアコンの電気代がもったいないので、ドアを開け放って廊下から館内の冷気を事務所の中に入れていたなど、入居時の思い出はつきない。とにかく立派な事務所となり、お客様に来てもらえ、スタッフも増やすことができるようになった。
 同社は産業創造館を卒業し、現在は下之城町にオフィスを構える。数次にわたって「だんべー」のリニュアルや機能アップを行い、ユーザー数は約40万人に達している。
 「大きな花とは言い難いが、群馬で選ばれるサイトづくりをしていきたい」と柴田さんは語る。産業創造館の入居者に「大きな結果を出してほしい」とエールをおくる。
 
 
■ ■ ■
 
 
 高崎商工会議所でも創業者に向けたセミナーや連続講座などの創業支援を数十年にわたって実施してきた。起業を目指す挑戦者を育て、あるいは起業者同士の人脈や連携を培う場を提供し、実際に支援した創業者が、産業創造館に入居するなど先駆的な取り組みを実践してきている。
 当所や産業創造館のみならず、高崎市も創業の重要性から、全国に誇れる創業者向け融資制度を充実させている。今後も高崎発の新たな産業が生まれてくることで地域経済がさらに活況となることだろう。
 

高崎市産業創造館

〒370-0854
群馬県高崎市下之城町584番地70
Tel. 027-320-2821 Fax. 027-347-3123
 
■創業準備室
パーテーションで区切られた6ブース。机・椅子、キャビネットとインターネット。費用は共益費込みで月額6,160円。
 
■企業支援室
オフィスタイプは50㎡3室、25㎡7室。ラボタイプは50㎡3室で3相200V電源、都市ガス、水道、排水を備える。費用は共益費込みで25㎡が月額41,580円、50㎡が83,170円。
 
■館内施設
多目的ホール、研修室、会議室、応接室、談話室など。
 
●高崎市融資制度「創業支援資金」
創業に必要な設備資金・運転資金。
限度額5,000万円。利率:年1.3%以内(信用保証付は1.0%以内)。
支払後の申請により、信用保証付の保証料全額補助及び利子の全額補給(5年間)が受けられる。

 
(商工たかさき・平成28年11月号)

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