ロケ地として選ばれる高崎

(2017年05月2日)

「撮影から上映まで」をうたう「映画のまち高崎」
ロケ地の提供と聖地巡礼が高崎にもたらすもの


 昨年、全国ロードショーされた映画『セーラー服と機関銃 卒業』と、EXILE主演の映画『HiGH & LOW THE MOVIE』は、高崎市で大々的に撮影が行われた。撮影スタッフや出演者が高崎に長期滞在し、ファンがロケ地を訪れる聖地巡礼の波も押し寄せている。ロケ地に選ばれる高崎の魅力とは。また、その経済効果はどのように波及していくのか、高崎フィルム・コミッションに聞いた。

●撮影から上映までを担う高崎の魅力

 昨年30周年を迎えた高崎映画祭は「映画のまち高崎」の土壌を培ってきた。平成14年12月に高崎フィルム・コミッション(高崎FC)を設置。高崎で生まれ17歳という若さで世を去った「山田かまち」の映画化を皮切りに、ロケ地探しをはじめ映画撮影に全面的に協力する体制を整えてきた。翌年4月から専門職員を配置し、本格的な活動に入った。以降、制作会社からの撮影の問い合わせが増え、市の知名度アップや経済波及効果などの相乗効果を鑑み、平成26年、よりきめ細かな対応ができるよう、高崎市はNPO法人たかさきコミュニティシネマ(代表理事・志尾睦子、シネマテークたかさき等を運営)に業務を移管した。“映画のまち高崎”は「撮影から上映まで」をうたうまちへと深化している。

●高崎フィルムコミッションの役割

 高崎FCの業務は、制作会社等からの問い合せに対して、ロケ地についての情報提供から撮影現場の許可申請、人材や企業の紹介、エキストラの手配、撮影の立ち会い等がある。
 高崎がロケ地として選ばれる理由について志尾睦子代表理事は「高崎は都心から車、新幹線共に約1時間で来られる地の利がある。また、歴史と芸術・文化が調和しているだけでなく、自然豊かな街であることという二本柱が挙げられる。撮影スタッフからは、高崎は現代と昭和が共存し、自然とまちが共存しており、あらゆる撮影が可能で非常に便利という声が届き、喜ばれている」と話す。
 駅前は都会の風景に、市役所の建物は都心のIT企業のビルに見立てたり、倉渕や榛名など郊外に足を伸ばせば田園風景も撮れる。市街地の路地裏やアーケードなどは昭和の風情が残ることから情緒あふれる演出が可能など、撮影者にとって絶妙なコンパクトシティと言える。

●高崎FCの業務の流れ

 高崎FCは高崎電気館に事務所を構え、昨年だけでも200件以上のロケ地の問い合わせがあり、年間55件の撮影に協力した。撮影は、映画・CM・プロモーションビデオ・ドラマ等幅広く、最近はネット上のCMやドラマ等、Webコンテンツが増えている。高崎FC担当者は、「撮影で病院を使いたい」、「警察の設定で使えるビルはないか」等の要望にストックしている建物を紹介する。その後制作スタッフの下見の後、監督らの現地視察でイメージが合えば申請に進む流れだ。
 警察に道路等の使用許可を取り、ロケ地周辺住民への説明、撮影スタッフ、俳優陣の宿泊先確保、弁当の手配等を行う。撮影中、苦情があれば事情説明し、ギャラリーの整理にあたることもある。活動拠点となる高崎電気館の建物も多くのロケーションに対応する他、撮影本部や待機場所、メイク室などにも利用、使い勝手がよく喜ばれている。
 高崎FCのエキストラの登録は、現在900名程あり、年齢別、地域別にデータベース化されている。エキストラ募集は、ホームページやSNSで配信される。昨年12月にテレビ放映された沢村一樹さん主演のドラマ『ダメ父ちゃん、ヒーローになる』(テレビ東京系列)では、マラソンシーン撮影の際、真夏の炎天下に全国から500人以上ものエキストラが集まり、「お盆時期に急な募集にもかかわらず、大勢の人が協力してくれた」と担当者は話す。エキストラ出演には弁当と記念品が配布されるのが一般的だという。
 また、このドラマで高崎FCは、脚本段階から打ち合わせに関わったため、ドラマの舞台の設定自体を「高崎シティマラソン」として、全面的に高崎市をPRできる方向で調整できたという。もてなし広場をスタート・ゴール地点として、シンフォニーロードがマラソンコースとして使われ、主人公の力走のバックに美しい街並みが映し出された。劇中、主人公の父親が娘に自分の故郷について話す下りでは「高崎は良い所だぞ。今度、連れて行ってやるからな」というセリフまで飛び出した。
 ゴールデンタイムに2時間ドラマで高崎市をPRできた実績は大きい。

●セーラー服と機関銃

 『セーラー服と機関銃』(1981年公開)と言えば、薬師丸ひろ子主演で一世を風靡した映画である。そのリバイバル版『セーラー服と機関銃 卒業』のロケの大半は高崎市で行われた。主人公・星泉を演じた女優の橋本環奈さんは約一ヶ月間、高崎に滞在して撮影に臨んだ。中央銀座通り商店街の一角に構えた「めだかカフェ」は星泉が店主を務める架空の店の設定で用意された。また、タゴスタジオのラウンジは、モデル事務所の設定で使われ、もてなし広場は選挙演説が行われるシーンとして使われた。高崎市役所や保健センター、居酒屋 羅加亜樹、和田橋下の河川敷などもロケ地となり、高崎市民なら映画を見れば「あ、あそこだ」と分かる人も多いだろう。これは、ロケ地の市民ならではの楽しみであり、作品のファンにとっては、聖地巡礼マップを手に訪れてみたい風景なのである。
 同映画は2015年7月から一ヶ月間、高崎市内各所で撮影が行われ、エキストラ320名、撮影人員1,800名が関わり、延べ2,000名が市内の三か所のホテルに滞在。ロケ弁・宿泊だけでも1,000万円超の消費がもたらされ、大きな経済効果があったと容易に想像できる。

●HiGH & LOWシリーズ

高崎電気館に設置された「HiGH & LOW」の展示室

 EXILEグループの主演ドラマ『HiGH & LOW』シリーズも高崎を拠点に撮影が行われている。同作品の劇場版の制作にあたっては、2015年2月から約二ヶ月間にわたり高崎電気館、中央銀座通り・東洋熱工業吉井工場等で撮影が行われ、エキストラ20名、撮影人員300名が携わり、延べ150名が宿泊した。なお、先行してテレビ放送されたシリーズの連続ドラマでは延べ1,000名を超える制作スタッフが高崎を訪れた。
 高崎電気館の建物外観は「ITO KAN」という店として、また、東洋熱工業㈱は抗争シーンに使われ、普段見慣れた高崎とは思えない圧巻の映像を見せている。昨年映画化が決まると、ロケ地を訪ねる聖地巡礼として全国からEXILEのファンが訪れるようになったため、公開の7月に急きょ、撮影の様子等を紹介する展示室を電気館に設けた。すでに通算400人を超える来館数となっている。特に告知をしているわけではなく、ロケ地を見に訪れたファンや電気館を訪れた人がSNS等で発信、口コミで広がっているようだ。
 来館者の記録を見ると、20代〜30代の女性を中心としたファンが大半を占めている。県外からの来訪が圧倒的に多く、首都圏・近県のみならず関西・四国・九州方面など、かなり広域から訪れている。映画を5回以上観ているという熱狂的なファンも多く、撮影の様子を写した写真を見たり、撮影秘話を聞いたりすると涙を流して感動される人もいるということだ。映画の中に出てきた柳川町のラーメン店「來來」を訪ね、出演者が食べた同じラーメンを味わっていく楽しみもあるようだ。
 この2本の映画のロケ地としても使われた中央銀座アーケードは、2014年2月の大雪で屋根の一部が崩落し、荒々しいむき出しの鉄骨を生かした撮影が行われた。雪害を受けながらも “災い転じて福となす”結果とも言える。高崎市は本年度中に、崩落したアーケードの再建工事に着手することになった。アーケードが取り壊される前に一度、見ておきたいとして訪問する人もいるそうだが、今後は、昭和の風情漂う「屋台横丁」に再整備され、年末までには完成予定だという。新たな中央銀座アーケードがロケ地としてどう活用されるのかも楽しみだ。
 今後もシリーズ化が決まっている『HiGH & LOW』は、高崎といわばタッグを組んでいると言え、ファンの来訪を考えると高崎の新たな観光資源であることが分かる。
 HiGH & LOWシリーズはEXILEのプロモーションビデオ的ドラマとしてスタートした業界でも新しい試みとして話題で、ファンが高崎に来る流れになっているようだ。

●ロケツーリズムとしての高崎の資源

 高崎FCは、今後ロケ地のマップ作りを更に進め、地元の「食」と結びつけるなどにより、ロケ地を観光資源として活用する「ロケツーリズム」としての広がりを視野に入れている。地域全体で撮影を支援し、観光客を呼び込んで活性化につなげようという取り組み。「ロケ地を訪ねて、そこで名物を食べて、楽しんでもらって、好きになってもいたい」。巡礼中に運よく高崎FCスタッフに会えたらもらえる“巡礼カード”を試作した。地域住民もボランティアで撮影現場を案内する役を積極的に買ってでてくれており、巡礼者もそのもてなしを喜んでいる。

●ロケ弁も高崎の売りのひとつ

 ロケの際に手配される弁当、いわゆるロケ弁も高崎FCが紹介している。「高崎弁当㈱」のだるま弁当・鶏めし弁当や、「蔵カフェもぎたて完熟屋」の蔵カフェ弁当・お好み弁当、「㈱おっ鳥弁当本舗」のおっ鳥弁当、「GGC高崎本店」のロケ弁・スペシャルロケ弁などがある。撮影では十数人分の弁当から、何百人単位で用意する時もあり、直接的な経済効果として反映されやすい分野のひとつである。
 一方で、高崎は首都圏から日帰りできる距離にあることがロケ地としての魅力であると同時に、宿泊しなくても撮影が可能となる。それだけに宿泊を伴うシリーズものや大規模な映画撮影の誘致が今後も続くことが望まれる。

●映画と絡めてまちをPR

 志尾代表理事は、「高崎は市も市民も撮影に協力的でありがたい。また、ロケ地として撮影されることは、高崎の風景が記録として映像に残ることでもあり、非常に貴重」と考えている。時代の変遷と共に移りゆく風景も、映画で見ることができるのは後々、財産になるともいえる。
 常に、5〜6本の撮影を抱えている高崎FC。撮影に立ち会うFCのスタッフは深夜に及ぶこともあるが、「映画が好き、裏方が好きな性分で、映画が出来上がった時の喜びを思うとストレスはない」と話す。今後、ロケ地マップ等で情報公開をできる限り行って、聖地巡礼と食、観光を絡めたロケツーリズムを具体化し、経済効果が目に見える形で反映されると面白い。
 また県内には、高崎を含め8つのFCがあるが、FC同士連携を図って県内全域にわたるフィルムコミッション活動も行っている。最近では、伊香保町で行われたサスペンスドラマの撮影に協力した。高崎FC他、県内FCで協力した映画は、シネコンでの上映の他、シネマテークたかさきや、高崎映画祭でも可能な限り上映を行っている。DVDで観ることのできる作品も多い。ロケ地高崎を映像という媒体を通して再認識してみると、高崎は映画という資源を使って、より多彩な展開が可能な都市であることがわかる。映画と観光を絡めたPRで、高崎はもっと人が訪れるまちになりうる。

気品ある映像にふさわしい英国邸宅と教会での撮影

●群馬の小さな英国タウンとして

 高崎駅東口の駅前通り沿いに建つザ・ジョージアンハウス1997(㈱レストラン スワン)は敷地全体をブリティッシュタウンになぞらえている。館内の家具、ピアノ、オルゴール絵画、照明等の調度品や食器など、配置されているものはすべてイギリスのアンティーク。「群馬に小さな英国を作り、フォーマルなパーティをする迎賓館にしたい」として「高崎のおもてなしの館でありたい」と20年前に開館した。都心からわずか1時間の地にある英国さながらのシチュエーションは、本物志向のファッション誌やブランド物のパンフレット、あるいはテレビドラマ、映画、CM、プロモーションビデオ等を作る制作会社に好まれ、現在、年間20本程の撮影を受け入れている。

●映画との長い関わり

 ジョージアンハウスと映画との関わりは実は長くて深い。副社長の作能小百合さんによると、大の映画好きである父、萩原康充社長は、前橋・高崎を中心に全盛期には10館の映画館を運営していた野中興業に勤めていた。社長自身、俳優を目指していたこともあったという。
 同社は映画文化を盛り上げるため、「映画の後にご飯を食べよう」との発想から飲食部門を立ち上げた。萩原さんはそこに出向し小さな食堂からスタート。後に同部門は㈱レストラン スワンとして独立、萩原さんが社長となった。
 今から20年前、スワン30周年の年にジョージアンハウスとして高崎へ進出すると、それまでの映画のつながりで交流のあった高崎映画祭の故・茂木正男さんに「高崎でやるならぜひ、高崎映画祭に協賛してほしいと声をかけてもらい、高崎の仲間入りができた」と作能さんは話す。
 その後、茂木さんから日本映画監督協70周年記念映画『映画監督って何だ!』(伊藤俊也脚本・監督)のロケ地として同館を斡旋してもらい、そうそうたる顔ぶれの監督らが自ら俳優として来館、撮影が行われた。台本には、小栗康平監督や山本晋也監督など著名な監督の配役とセリフが載り、萩原さんも役名をもらい出演したというエピソードもある。

●本物志向の建物、調度品、自然光が映える映像

家具、調度品など、本物だからこそ、美しい映像美を生む―ザ・ジョージアンハウス1997(江木町)

 オープン初年度、初めての撮影は雑誌『25ansウェディング』(婦人画報社)だった。同館は教会を始め、パーティ会場、小部屋、庭などがあり、気品高い高級ブランドなどに特に好まれ、あらゆる撮影設定に対応できるのが強みだ。
 写真になった時の自然光や本物ならではの風合いを見せるのはアンティークならでは。カメラマンやメイキャップアーティストからリピートされることも多い。
 映画撮影では昨年秋公開された織田裕二主演『僕の妻と結婚してください』では、パーティーシーンとお見合いシーンの撮影が行われた。妻夫木聡、北川景子主演の『ジャッジ』(2014年1月公開)では、海外の設定でパーティーシーンが、成海璃子、松山ケンイチ主演の『神童』では、ピアノリサイタルのシーンが撮影され、別邸の大広間が映っている。
 テレビドラマ『富豪刑事デラックス』(2005年テレビ朝日系列放映)では、主演の深田恭子さんの家という設定で、同じ別邸が使われた。室内に家具が搬入され、豪華絢爛な館のイメージができた。作能さんは「撮影当日、花瓶やテーブルクロスなどを貸し出したり、また、お弁当の手配はまとめて当社で受けており、重宝されている」と話す。
 作能さんは「月に1、2本の撮影をしており、スタッフも皆お祭り好きなので喜んでやっている。写真の撮り方なども見ていて勉強になり、雑誌の撮影は、結婚式のお客様用の写真の参考になり、大変役立っている」と受け入れ側も撮影の機会を満喫しているようだ。
 「萩原社長自ら図面を書いた建物で、家具等も自ら買い付け、置き場所も自分で決めた〝自慢の館〟。そこでの撮影は大歓迎で、一番喜んでいるのは社長だと思います」と笑顔を見せる。

●経費が掛からず撮影できる高崎

 ジョージアンハウスがロケ地として選ばれる理由はいくつかある。都内から1時間程で来られるためスタッフは現地集合の場合も多く、また都内の貸しスタジオに比べ安価であること。機材や備品の現地調達も比較的楽にできること。また、同社はパーティーシーンの撮影はお手の物で、料理からエキストラでシェフや外国人スタッフの対応もできるなど、利点が多々ある。「民間のロケーション会社に比べ、事前準備含め経費を節減できるポイントが多いのでしょう」と作能さんは分析している。

高崎フィルムコミッションが携わった撮影実績

◆2015年度の主な映画撮影(主演)

  3月〜4月 劇場版「64(ロクヨン)」(佐藤浩市)
  7月〜8月 セーラー服と機関銃 卒業(橋本環奈)
  9月 仮面ライダーゴースト&ドライブ 対戦2016
 10月 鬼魔愚零アンダーグラウンド(仮面女子)
 11月 MARS〜ただ、君を愛してる(藤ヶ谷太輔)

◆2016年度の主な映画撮影(主演)

  2月〜3月 HiGH&LOW 劇場版(三代目JSB)
  2月 劇場版「破裏拳ポリマー」(溝端淳平)2017年公開予定
  4月 ピーチガール(山本美月)
  6月 HiGH&LOW RED RAIN(岩田剛典)
  7月 こどもつかい(滝沢秀明)2017年公開予定
  8月 14の夜(犬飼直紀)
  9月〜10月 あゝ荒野(菅田将暉)2017年公開予定
  9月 仮面ライダーMOVIE大戦(西銘駿)
 11月 ラーメン食いてぇ!  2017年公開予定
 12月 超スーパーヒーロー大戦(仮面ライダー)
 12月 サラバ静寂(吉村界人)2017年公開予定

ジョージアンハウス 近年の主なロケ実績

●映画

 「神童」(2007年4月公開)
 「ジャッジ」(2014年1月公開)
 「僕の妻と結婚してください」(2016年11月公開)

●テレビドラマ

 「金田一少年の事件簿」(日本テレビ)
 「相棒」(テレビ朝日)
 「Wの悲劇」(TBSテレビ)
 「大富豪刑事デラックス」(テレビ朝日)
 「ホテルウーマン」(テレビ朝日)

●女性ファッション誌、カタログ

 「25ans」(婦人画報社)
 「Wedding Book」(ウィンドアンドサン)
 「ELLE Marriage」(婦人画報社)
 「CLASSY Wedding」(光文社)
 「GINZA」(マガジンハウス)

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