受け継がれる保三郎翁のDNA 創業30周年、新社長就任

株式会社井ノ上

(2014年4月)



 120年にわたり、高崎の近代化と発展を担ってきた企業として認知されてきた井上工業㈱から昭和59年に分社独立し、建設用仮設資機材のレンタル事業をスタートさせたのが、㈱井ノ上の前身となる井上商事で、その後業態の変化により3度の社名変更を経て現在に至る。
 平成26年、創業30周年を迎える同社では、1月1日に達之助さんが会長に、息子の幸己さんが新社長に就任し新体制での船出となった。
 達之助会長は、井上工業の偉大なる創業者・井上保三郎翁の孫に当たる。「そうは言っても、私は白衣観音の開眼式はおろか祖父の亡くなった時には、まだ母のお腹にいました」と話す。
 45歳で独立した後、バブル経済の追い風を受けて業績も順調に推移した。しかし、井上工業の倒産により会社存亡の危機を迎えた。「別会社といっても井上一族ということで、取引先から相次いで取引停止を言い渡されました」と、大変だった当時を振り返る。しかし、建設事業の即戦力となる優秀な人材を社内に確保する好機にもなった。
 幸己社長にとっても当時、風評被害で危機に瀕した状況から脱しようと誠意と熱意を持って社長として踏ん張る父の姿が、経営者のあるべき姿として脳裏に刻まれた。「社長就任にあたり、格好いいことは言いません。会社をつぶさないことが大前提です」と、顧客や取引先を大切にし、従業員を路頭に迷わせない覚悟を決めた。高崎青年会議所の会員から日本青年会議所の役員へと、地域貢献をめざして熱心に活動してきた。「1〜2年は経営者として会社の細部まで把握することから始めたい」としている。
 景気回復の兆しが見える中、建築事業部で大規模工事が着工するなど業績も上向き、社長交代にはもってこいのタイミング。
 「豊富な体験をしてきたので頼もしく感じますが、まだ目を光らせますよ」と笑う達之助会長のデスクは幸己社長の隣りで、その後ろには保三郎翁直筆の「只是一誠」の額が掲げられている。誠実さを持って事業を行い信頼を得るという精神が受け継がれていく。

株式会社井ノ上

代表取締役会長:井上達之助
代表取締役社長:井上幸己
住所:高崎市八島町265 イノウエビル
電話:027-322-1143

ちょっと一言
白衣大観音の目線の先にあるのがイノウエビルで、“商売繁盛にご利益がありますよ”と、テナントさんに一言添えているという。