IT技術を駆使する介護業界の変革者

(2020年09月30日)

エムダブルエス日高

 

大規模化とサービスの向上を推進

2000年に介護保険法が施行されたのを契機に、株式会社エムダブルエス日高では、医療機関と連携を図りながら在宅介護事業を中心に本格的に介護保険事業を展開し、規模の拡大を図ってきた。

 

「訪問看護」をはじめ「ショートステイ」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「通所介護(デイサービス)」「居宅介護支援」事業のほか、高崎市からの委託事業「高齢者あんしんセンター」の運営等も担っている。

 

中でも通所介護事業所「日高デイトレセンター」(1日の利用可能人数400名)は、入浴・食事・心身機能の維持向上を図る施設として、約850名の登録者を抱える。月間利用者数の延べ人数は6,000〜6,200名で、県下最大の利用者数となっている。また、2015年開設の「太田デイトレセンター」は1日の利用定員数500名で、県下最大規模の施設となっている。

 

「スケールメリットを得るためには、大規模化を図る必要があります。そうすることで、一人ひとりに合った効果的なリハビリプログラムの提案をはじめ、利用者に満足度の高いサービスを提供できると考えています」と代表取締役の北嶋史誉さんは話す。

 

また、同社が展開している事業の一つに、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」サービスがある。群馬県住宅供給公社より委託された「サービス付き高齢者住宅」(前橋市元総社町)とその周辺地域で展開するサービスで、要介護認定でケアプランが必要な人に限り、排泄や食事といった直接的な手伝いや、簡単な清掃・洗濯などのサービスを、1日24時間、複数回の利用でも月々定額で提供。県内初の取り組みとして注目されている。

 

「利用者にはかゆいところに手の届く便利なサービスである半面、事業者の負担が大きいと思われがちです。実際のところは、一人ひとりに向き合った丁寧なケアをすれば、呼ばれて出向く回数は抑えられます。それが、良質な介護看護のノウハウとして蓄積されます」。県内の介護保険事業を牽引するという自負がチャレンジャーの歩みとなっている。

 

次世代型介護事業は“ハート &テクノロジー”

医療機関を母体とする同社は、利用者の機能回復に重点をおいている。要支援・要介護といった区分にとらわれずに、個々の利用者の特性に合ったベストなリハビリプログラムを提案し、ADL(日常生活動作)の維持・改善を図る「次世代型の選べるリハビリ」の実践だ。そのために必要な通所介護の統合運営支援クラウドサービス「ICTリハ」を自社開発し活用に至った。

 

この「ICTリハ」は、経済産業省の「平成28年度健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択され、現在60数事業所に導入されている。全ての事業所の利用者が行ったトレーニングメニューなどの情報をバーコードで読み取り一元管理することでビッグデータを生成。過去の効果のあった事例などを基にAIが利用者それぞれに最適なリハビリプログラムを瞬時に選択する。

 

また、「ICTリハ」には、繁雑な業務を効率化するシステムも統合されており、より多くのマンパワーを利用者の満足度向上のために投入できる環境を実現している。こうした取り組みに、年間180カ所から見学があるほか、システムの導入や活用のための実習生も受入れている。

 

北嶋社長は「最先端のテクノロジーを駆使して、人にしかできないサービスを充実させていく。病院が母体だからこそ、あそこに行けば身体機能が改善されると、地域の人に驚かれる施設として、職員のやりがいにもつながっています」と、従来の“おあずかり型”との違いを強調する。

 

自由にお出かけできる交通手段『福祉ムーバー』

最先端のテクノロジーを駆使した画期的な取り組みがもう一つ。それは、デイサービスの送迎車の乗合いによる交通弱者支援サービス『福祉ムーバー』だ。経済産業省の「令和2年度地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金」事業に採択され、この10月から実質来年2月末まで、群馬、栃木、新潟エリアで実証事業が行われる。

 

スマホアプリまたはコールセンターを利用して、出発地と目的地、乗車人数の情報を伝えれば、あとは自宅で待つだけ。 AIがリアルタイムで乗合い車両を配車、走行ルートを決定する。福祉用具の取り扱いに慣れたドライバーが玄関まで迎えに来て、昇降時に介助もする。通院、買い物、美容院、友人宅などへ、生活の足として気軽に利用できるのはもちろん、地域の交通インフラとしても期待できる。

 

同社では「日高デイトレセンター」と「太田デイトレセンター」の送迎車を活用し、旧高崎市域・群馬町地区・吉井町地区・前橋市利根川より西岸地域、旧太田市域・邑楽町の一部・大泉町の一部・足利市の一部のエリアで実施する。

 

ほかにも職員が安心して働けるよう、保育園や学童クラブも運営したり、社内ベンチャー制度で起業したい職員をバックアップしたりしている。また、システム開発にかかわるSE職について、「人材に幅があるほうがイノベーションを起こしやすい」と、業界に縛られない多様な発想を大切にする。

 

高齢者に優しい社会は、すべての人に優しい社会。人に優しいサービスの創造、職員が誇りをもって取り組める職場の実現に力を注ぐ。変革者のチャレンジから目が離せない。

 

 

株式会社エムダブルエス日高

〜会社概要〜

代表取締役社長  北嶋  史誉さん

高崎市日高町349

TEL:027-362-0691

 

 

高崎商工会議所「商工たかさき」2020年9月号

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