マンホールの鉄蓋から広く産業分野へ 鋳物の可能性を拓く

(2016年05月26日)

株式会社水島鉄工所

●創業100周年を迎える
 鋳造は人類が金属の使用を始めた当初から使われた金属加工法で、鉄、銅、アルミニウムなどの各種金属を高温で溶かして型に流し込み、様々な形を自由に造り出す。長い歴史の中で、仏像や梵鐘のほか、鍋・釜・鉄瓶・火鉢などの日用品が造られるようになるなど、ものづくりの原点ともいえる技術だ。それだけに鋳造業には社歴の長い企業が多い。
 ㈱水島鉄工所は大正6年(1917)に水島繁次郎氏が銑鉄鋳物業を個人で高砂町において創業したところから始まった。当時、高崎地域には30軒ほどの鋳物業者があったという。軍需産業が盛んになった昭和15年に合名会社に組織変更し、終戦後の昭和24年に資本金を100万円に増資。機械仕上工場や附属工場を増設し、「特許水島式マンホール」の製造を行なってきた。
 初代・二代目・三代目の社長とも、高崎で200年以上の歴史を誇る㈱小島鐵工所の社員として勤務した経歴があり、両社の密接な関係が伺える。特に二代目の水島利夫社長は、昭和46年より当所副会頭を務めるなど、地域経済界のリーダーとしても活躍した。現在の水島高弘社長で五代目となる。

 
●看板製品の上下水道用の鉄蓋
 終戦後、産業が急速に発展し、都市への人口流入が進むと、上下水道整備が急務となった。それに伴い、マンホールの鉄蓋の需要が都市部で爆発的に膨らんだが、「高度経済成長に向かう時代、多くの鋳物製造業は他の製品の生産に追われ、鉄蓋を作る余裕がなかったそうです。そうしたこともあって横浜市や川崎市など、広域圏から受注を得られ、マンホールは弊社の主軸となっていきました」と水島社長は専門特化への道をたどった転機を話す。ピーク時は、自社製造量の9割を占めるようになり、現在でも関東全域に及ぶ自治体への供給が6割を占めるほどの看板製品となっている。
 鉄蓋の技術は想像以上に奥深い。マンホールは道路の一部であることから、普段は路面と一体となっていなくてはならない。人や車の幾多の往来にも耐えられる強度と、スリップしない安全性が求められる。地上からの圧力だけでなく、地下からの突発的な揚力に耐えられるよう、蓋と枠をしっかり固定する施錠装置を備えている。また、独自のヒンジ金具(ちょうつがい)機構の改善により部品数・組立工数を減らし、回転角度や着脱機能を向上させるなど開閉作業の簡素化を実現している。
 近年は町おこしの一環として、マンホールの蓋に地域性あふれるデザインが施されることが多く注目を浴びている。「マンホールサミット」というイベントも開催されるほどで、同社も全国に30数社あるメーカーの1社として、マンホールをモチーフにしたストラップやコースターを制作するなど、遊び心あるグッズを企画し、気運を盛り立てている。
 
●通信・電力用の鉄蓋と農業用水門の設計・製作・施工
 現在、景観や安全性・快適性の確保といった観点から、電線の地中化への取組みが推進されている。同社ではこうしたニーズに対応する通信・電力用鉄蓋の製造が増加傾向にあり、長野県以北から関東・東北地方全域に供給を行なっている。
 さらに、製造のもう一つの柱として農業用の水門があり、設計から施工までの一貫体制で、およそ40年にわたり群馬県内で実績を築いてきた。
 いずれの製品群も、インフラ整備を支える重要なパーツとしての役割を担っている。
 同時に「つくったものを長持ちさせて大事に使う」というストックマネジメントの視点から、製品のライフサイクルコストの最小化が求められており、同社では、製品の高品質性、更なる高耐久性などを追求しながら、取り換え需要にしっかり対応した製品供給を目指している。
 
●幅広い産業分野への製品供給を求めて
 使用する金属の種類や鋳造法によって、さまざまな形状や性質の鋳物を造り出せることから、幅広い産業分野への製品供給が可能になる。
 同社では、“ネズミ鋳鉄”や“ダクタイル鋳鉄”といった鋳鉄素材の産業用部品も製造している。鋳鉄とは、鉄、炭素およびケイ素を主成分とした合金で、振動吸収能力や熱伝導率に優れている。
 こうした合金は成分の比率で特性が変わるため、発光成分分析装置による合金中の元素を迅速に分析し、目的に応じ材料特性をコントロールする。
 一体成形で最適な形状を造る鋳造技術や複雑な形状でも塗膜厚が均一で錆びにくい仕上がりを実現する電着塗装など、マンホール製造で得た技術を活用し、同社は「ものづくり」を支える産業分野へと軸足を移していく。そのために、多品種少量生産、製品の品質管理を確実に応えるための社内環境づくりに余念がない。国際規格ISO9001やJIS製品の認証取得はもちろん、3Dプリンタを導入することで、鋳造用の型、試作開発、組立治具の製作などを著しく短期化している。
 マンホールというインフラの信頼性を担ってきた同社、次の100年に向け新たな分野への模索を続けている。

水島さん



代表取締役 水島高弘
高崎市小八木町314
TEL:027-361-4010

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