高崎新風土記「私の心の風景」

橋の風景から⑦ ―国分寺橋―

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

高崎市棟高町のイオンモール近く、辻久保の信号を東に真っ直ぐの道路があります。植樹して間もない松並木の広い道路を、遠くに見える県庁庁舎に向かって車を走らせますと、上野国分寺跡の標識があり、左折すると正面に国分寺跡の復元した築地塀が見えてきます。以前、この遺跡を訪れるには、市立国府小学校付近の細い道を通っていきましたので、その頃と比較しますと大変便利になりました。

駐車場の遺跡付近の案内板に従って、染谷川に架かる国分寺橋を渡って歩きます。この橋は平成22年2月に出来た新しい橋です。4月末に訪れたときです。橋上から染谷川の澄んだ流れの風景を眺め、しばし魚影を追って川を見つめていますと、突然、近くの藪の中からけたたましい雉の鳴き声がし、驚かされました。川の中州には青や黄の菜の花や大根の花、近くの畑にも菜の花が一面に咲いていて、桜の花の風景とは趣を異にした穏やかな春を、全身で感じました。まるで奈良の平城京のひろい遺跡の原に立っているような、古都のたたずまいの中にいるような気分になりました。上野国分寺の南大門が復元される計画があるようですが、橋上から眺められる時のことを思いながら、遺跡の原を散策しました。近くの関越道を走る車の音も気にならない、現代のエアポケットに入ったような、静かな遺跡空間を楽しめました。