高崎新風土記「私の心の風景」

橋の風景から31 ―中井野川橋―

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

 県道27号線(高崎駒形線)の井野川に架かる橋です。関越道・昭和大橋の開設によって、交通量が多い道路です。この橋の南で井野川と染谷川とが合流します。古代を思いやりますと、利根川から烏川、烏川と井野川の合流点から井野川を北上し、染谷川との合流点が、一大古代に於ける物資集積の陸の港の様相を呈していたことが、この付近の遺跡から想像されます。菜の花が川沿いに咲き乱れる頃、遥かに霞む風景に、果てしない古代へのロマンを感じます。
 近年は道路拡張と都市化が進み住宅地化していますが、半世紀前は川沿いに民家や梅園が点在し、のどかな風景でした。特にケヤキとムクの大木の木立を後ろにした大きな民家があり、その裏側にこのあたり一族の墓地がありました。その中に小さな「妙林童女」とある墓石に目がとまりました。側面に「九州筑前国御笠郡・萩原村中川○残・娘さよ同行三人・文化八年」と刻まれていました。現在、墓地付近は宅地化され、昔日の面影はありませんが、不治の病に罹り、生涯故郷に帰ることのない、哀しい旅の姿を続ける「流れ巡礼」の家族の姿を重ね、もしかして草津への旅の途中ではなかったかと、思いめぐらしました。橋は駒形線利用の車両往来には欠かせませんが、その昔、井野川沿いに点在する村落を縫うように道があり、人を避けながら旅する流れ巡礼の姿があったと思われます。

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