高崎のおもてなし 4

心豊かな日常を楽しむおもてなし

志尾 睦子

 高崎駅西口から徒歩4分、大通りの交差点から路地へ入ると、軒を連ねる店の並びにビジネスホテル寿々屋があります。一目で分かる昭和時代の趣は、静かに佇みながらも確固たる老舗の風格を感じさせますが、ロビーに足を踏み入れるとごく日常の空気感が漂います。誤解を恐れずに言うならば非日常の特別感がない、和やかな雰囲気なのです。
 寿々屋は全国的にも今では少なくなった地元のオーナーズホテルです。現在ホテルを取り仕切る田島圭次郎さんは、前身の旅館創業者である祖母・田島とりさんから数えると3代目。1962年に始まった旅館業はその26年後、圭次郎さんの父・五郎さんの代となり、時代に即す形でビジネスホテルにその姿を変えました。ビジネスマンを初めとする多くの宿泊客を迎えて時は過ぎ、高崎駅周辺も様変わりする中で経営も厳しさを増して来たと言います。中学から東京の学校へ進学し大学を卒業後そのまま都内の企業に就職した圭次郎さんが、家業を手伝いだしたのは4年前。年季の入ったビジネスホテルを「繁華街に位置していながら安価で宿泊できる、コストパフォーマンスに優れたビジネスホテル」としてPRしてみたところ、手応えを感じたそうです。そんな矢先に父・五郎さんが急逝し、3代目を継ぎました。
 安価である事には、家でくつろぐように寿々屋を使ってほしいという想いも重なります。その方法は人それぞれ。思い思いに時間を過ごせる一工夫に余念がありません。漫画本を取り揃えたり(一万冊の蔵書が控えているそう!)、ゴルフ練習の出来る機材を設置したり、ハンモックを置いてみたり。チェーンホテルが非日常空間を提供するとすれば、オーナーズホテルにしか出来ないおもてなしのキーワードは「アットホーム」。日常生活を楽しむひとつのスタイルをコンパクトに提供する場所でありたいと考えています。それは宿泊者だけの話ではなく、地域の人たちの暮らしの一部になれるホテルを目指すことに繋がります。豊かで楽しい暮らしを積み重ねて行く方法論はホテル内に留まらないのです。
 高崎田町の屋台村に中国料理「萬嵐」を出店しているのも、音楽のある街・高崎で、音楽が日常に溢れる仕掛けを作りたいと「高崎おとまちプロジェクト」の運営に関わるのも、その一環です。街での活動を通して、情報発信基地としての寿々屋の幅も広げます。街と人と生活がつながる、その一翼を担う事自体が、寿々屋流のおもてなしなのです。

●ビジネスホテル寿々屋
所在地:高崎市通町22
電 話:027-327-0011

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。