高崎のおもてなし 6

人生の一瞬を彩る 花工房「レ・フェ」のおもてなし

志尾 睦子

 南銀座商店街通り、緑に囲まれたウッドデッキの店先がレ・フェ。久保麻美さんが経営するお花屋さんです。店内に足を踏み入れると木の床がキシキシと心地良い音を響かせます。
 お花屋さんによくある「巨大なガラスケース」はなく、代わりにヨーロッパ風アンティークの戸棚やチェストが目に入ります。お花や植木が自然にそこここに並び、まるで森や野原に入り込んでしまったような雰囲気です。奥には大きな木のカウンターがあり、販売店というよりは工房といった趣。木と緑に包まれた店内はとても居心地がよく、ゆったりした時間が流れています。
 物心ついた時からお花が大好きだったという麻美さん。選ぶ花瓶ひとつでお花の表情が変わったり、自分の気持ちが華やいだりする楽しさを幼い頃から感じていたそうです。 県内の花屋に就職した後上京、フランスに本店を置く東京の店舗で修行を積みました。高崎駅西口のほど近くに支店が出来、そこの店長を任されていましたが、6年後支店が閉鎖されてしまいました。地元高崎で培ったつながりやご縁に背中を押され、麻美さんは本社に戻らず独立を決意、2006年にレ・フェを開業しました。
 お花と一口に言っても何千種類もある生花、東京でしか手に入らないものも多いため、仕入れに週2回、大田市場まで上京します。他店ではあまり見かけない特徴あるお花を扱うのがレ・フェの特色。可憐で繊細な色合いのお花に目を奪われます。店内の装飾はもちろん、集められた花器やリボンにまでこだわりが感じられます。お花をどう見せるかでその美しさが変わり、場所の雰囲気や人の気持ちまでも素敵に変化させる事を伝えたいという想いが店内に充ちています。
 ブライダルをはじめとする一生に一度の記念や、大切な思い出の瞬間を演出するにもお花はとても大きな役割を担います。お花を求める人たちがどんな時間を望み、どんな思い出を作りたいのか。その気持ちに寄り添い、人生を彩るお手伝いをするのが、レ・フェの心を尽くしたおもてなしです。
 先日かわいい女児をご出産された麻美さんですが出産当日までお店に立ち、産後3日でブライダルブーケを作っていたそうです。どんな時でも、お花と人との幸せな出会いを取り持つのが麻美さんの天命のようです。最後に、「レ・フェとはどんな場所?」と尋ねると、考えるご本人に代わってご主人が「畑」と一言。豊かな土にこそ植物は根を広げ、大きく育ち、豊かに実る。なるほど、納得の一言でした。

●レ・フェ
所在地:高崎市檜物町12
電 話:027-395-6123

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。