高崎のおもてなし 7

くつろぎのLOUNGEをつくり出す小さなおもてなし

志尾 睦子

 高崎駅西口から市役所方面へ直進。あら町の交差点を南に下ると浅間山の溶岩でつくられた外壁にTAGO STUDIOの文字が目に飛び込みます。印象的で斬新な外観に自然と引き寄せられ、岩間をくぐるように自動ドアを通過するとすぐに2階へ上がる階段が。のぼると開けたラウンジになっています。
 スタジオのラウンジは、誰もが利用出来るフリースペース。ここではスタジオに来館したアーティストのレコーディング模様をうかがい知る事も出来ます。コンクリートの床、白い壁、シックにまとめられたインテリアは洗練された印象で、こだわりの感じられるソファやテーブルが作り出す空間はスタイリッシュ。ですが、ラウンジ全体のトーンはいたって柔らかく温かで、誰もが気軽に立ち寄れる空間が広がります。
 その温かさと居心地の良さを醸し出しているのが、このラウンジを任されている白石よし子さん。通称よっちゃんです。八千代町でクレープ屋を営んでいたよっちゃんは、常連だったスタジオ責任者の多胡さんに惚れ込まれ、このラウンジを担当する事になりました。クレープの美味しさは折り紙付きで八千代時代からの根強いファンも多いのですが、その人気の秘訣は味だけではないようです。
 よっちゃんはこれまで、人と接する事が大好きだからこそ、小さな店舗で対面販売をしてきました。今度はラウンジなので少し空間が広がりましたが、ここを訪れた人たちと同じ空間を過ごすよっちゃんの喜びが、ラウンジ全体の雰囲気をまとめています。利用者と提供者のほどよい距離感と言い換えられるでしょうか。カフェではないのでご注文いただかなくてもいいのです。ここを訪れた人たちが、思い思いのペースでくつろぎながらゆったりと時間を過ごせる場であってほしいという想いがそこはかとなく伝わるのです。
 よっちゃんの挨拶や語る言葉にそれが象徴されます。いらっしゃいませ、ではなく「こんにちは」と声をかけるよっちゃんは、お客様、ではなく「来てくれた人」と語り、「また会いたい」という気持ちで訪れた人たちを出迎えます。
 小腹がすいたらカウンターへお立ち寄りください。手作りのかわいらしいメニュー表、具がぎゅっと詰められた大きなクレープ、カップの縁まで波なみ注がれるコーヒーなどなど、ふわっと気持ちが嬉しくなる小さな幸せがやってきます。これがラウンジを司るよっちゃんの、小さな幸せを運ぶおもてなし。

●TAGO STUDIO
所在地:高崎市あら町5-3
電 話:027-395-0044

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。