高崎のたたずまい 4

高崎聖オーガスチン教会

信徒、子供達、障害を持つ人達を見守って

 「礼拝堂でのチェロやゴスペルコンサート、やわらかな音の響きに驚きました」。そう話すのは、同教会の司祭秋葉晴彦さん。アーチ型の天井は、高い空間を作り出すシザーストラスという建築工法。時を経た木造の床や壁、天井に、窓の曇りガラスから落ち着いた光が射しこむ。時を刻んだ真紅の絨毯は聖歌隊席、サンクチュアリ(聖域)、祭壇へと、階段を上るごとに神に近づく。祈る牧師は会衆の代表だ。
 イギリス発祥の聖公会。高崎聖公会の起源は、明治25年に高崎市末広町に講義所が開かれた時にさかのぼる。大正7年に当時の司祭が聖オーガスチン教会と命名。市内の借家を移転しながら、現在の地に落ち着いたのは明治3年のこと。現在の鉄筋コンクリート建ての聖堂は、十五年後の昭和4年に建てられた。築86年を経た建物は、国の有形文化財に登録されている。「宣教師たちが残してくれた建物で、延々と同じ祈りが捧げられていることは奇跡的なこと」。
 現在、同教会は平日、NPO法人工房あかねの活動拠点に開放している。同法人は芸術活動を中心に、展覧会や、時にコンサートなどを開催。息子さんが聖公幼稚園の最後の卒業生である、同法人理事長・小柏桂子さんは、「息子の幼稚園選びで悩んでいた時、牧師さんが、どうぞ、どうぞと受け入れてくれた」と振り返る。「二十数人の子ども達との生活が、家庭だけでは抱えきれないものを解決してくれた」と感謝する。息子さんが高等養護学校を卒業後、美術の前島芳隆先生とも出逢い、障害をもつ人達の活動拠点として工房あかねをスタート。絵画やものづくりを通して障害を持つ人達の個性や成長に日々驚かされるのは、秋葉司祭も同じだ。「初めての方も、ようこそと迎えるのが教会。西洋のホスピタリティ、もてなしは修道院が原点です。教会と工房あかねの活動が共存し、よりよい形になるよう見守っていきたいですね」と話す。
 朝の挨拶やお遊戯、クリスマスにはイエス誕生の劇をしたホール。運動会をした中庭。開け放たれた戸から、今にも歓声をあげて子供達が走り抜けていくように風が吹きぬけていった―

●高崎聖オーガスチン教会
高崎市山田町8