ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.4

『フラガール』

志尾 睦子

2006年 監督:李相日
出演:松雪泰子/蒼井優

発想の転換と信じる力が、時代を変える

 先日、電車の中でカラフルなハイビスカスやボタニカル模様の洋服に身を包む女性の一団に出会いました。フラダンサーのようで、衣装が入っていると思われる大きなバッグを、背筋を伸ばして肩にかけ、足元はサンダルで軽やか。はつらつとした笑顔が、踊りの後の爽やかな達成感をこちらに伝えていました。
 今月のお勧めは、現在のスパリゾートハワイアンズの設立にまつわる実話を原作とした『フラガール』です。新しいことへの挑戦と冒険、逆境に立ち向かう勇気と熱意、信じたものを貫き通す強さと正義、そして仲間の絆と未来への希望が、テンポよく詰め込まれた名作です。それぞれの極意が、各エピソードに盛り込まれていますので、人生指南の一つとしても楽しめます。
 舞台は昭和40年、炭鉱で栄えた福島県常磐市(現・いわき市)。この地には隆盛を誇った炭鉱会社があり、町の人たちのほとんどが、炭鉱の仕事に携わっていました。しかし、石炭から石油へと移り変わるエネルギー革命がこのまちを一変させます。炭鉱の閉山が検討され、社運をかけた次なる事業展開が急務となりました。そして打ち出されたのが、常磐ハワイアンセンターの設立でした。まったく違う分野への進出に当然周囲は戸惑い、反発も多く出ますが、否応なく迫ってくる現実に、人々は少しずつ腹を括り始めます。1年中常夏を作るのですから、それだけでもその挑戦が無謀なものであるのは容易に想像できますが、もちろん闇雲に思いついた事業計画ではありません。彼らは、一筋の光を信じて、家族のため、会社のため、町のために奔走します。
一方、町の女の子たちは、センターの名物となるべくフラダンスショーの踊り子として養成されます。戦後20年、まだまだ保守的な時代、加えて田舎町での出来事です。腰蓑をつけ、肌を露出した衣装で踊ることは、白い目で見られることでもありました。それでも、彼女たちにとってフラダンスこそが、自立への第一歩となり、未来への夢が大きく膨らんで行くのです。そして彼女たちを教える都会からやってきた美しいダンサー・まどかもまた、かつての栄光を拭い去れずにいます。しかし、決意を持ってダンサーの道を進む少女たちの熱意に触れるうち、まどか自身も踊る喜びを取り戻していきます。
 最後の大団円はまさに圧巻です。夏の暑さに負けない熱い物語で、日頃のストレスも発散できることでしょう。(2017年7月:商工たかさき)

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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