ビジネスパーソンにお薦めするこの1本 No.9

素晴らしき哉、人生!

志尾 睦子

1946年 アメリカ
  監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・スチュワート

自分の命が大勢の人生に関わる

 いよいよ今年も残すところあとわずか。2017年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。個人的には良き事も悪き事もありましたが、総じてまた年月を積み重ねられたことに感謝して次の年を迎えたいと思っています。平常心と前向きな姿勢こそが良き運命を運んできてくれると思うからです。
 というのは、自分で獲得した知恵ではなく、映画から教えられたもの。今回オススメする『素晴らしき哉、人生!』には、そんな人生の歩み方を教えてもらった気がします。今から70年以上も前の作品ですが、何度観ても心を打つ名作です。
 クリスマスの夜。ある男のために祈りを捧げる人たちがいました。その声を聞いた神は男を救おうと、まだ翼を持たない2級天使のクラレンスを呼び出します。人々が救いたいと願うジョージがどんな人間なのか、神はクラレンスに彼の人生を見せ始めるのです。
 時は1919年、ジョージの家は住宅金融業を営んでいて、社長である父親は低金利で人々にお金を貸し、常に住民のために身を尽くしていました。町で一番の大金持ちである銀行家のポッターにとっては、ベイリー家は目障りな存在でもあり、ことあるごとに目の敵にされています。家計はいつも火の車で、ジョージは、家計を支えるため幼い頃から薬局で働き家にお金も入れていました。とても心優しい気の利く少年で、店主のピンチを救うこともありました。それから数年後、成長したジョージは、この町を出て大学へ行き、世界中を飛び回るという夢を持ちます。しかし、父が突然この世をさったため、家業を継ぐことを余儀なくされます。
 思い通りにいかない人生でも、ジョージはいつでも、人のために行動し、逆境に立ち向かい、前向きに進みます。やがて幼馴染のメアリーと結婚、4人の子を授かります。幸せな生活の一方で、ポッターからの圧力はとどまることがありませんでした。
 時は過ぎ、数々の危機をくぐり抜けてきたジョージでしたが、いよいよ人生で最悪の事態に見舞われます。もう、死ぬしかない。思いつめた彼は自殺を試みるのです。
 そこに現れたのがクラレンスです。自分が死ねば皆が幸せになれる、と思い込んでいるジョージに、クラレンスはジョージが存在しない世界を見せようと思いつきます。
 「一人の命は大勢の人生に関わる。」社会の荒波を泳ぐビジネスパーソンには大事なキーワードになることでしょう。
 是非クリスマスにちなんでご覧いただきたい逸品です。(2017年12月:商工たかさき)

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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