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ラ・ラ・ランド

志尾 睦子

2016年 アメリカ 128分
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン

終わるからこそ始まる美しさ

 今年は桜の開花が早く、桜吹雪が舞い散る頃に新年度を迎えることとなりました。満開の隆盛さもいいものですが、風に乗ってひらひらと舞う花びらもまた見事なもので、その場の空気を華やかに演出してくれます。散ったからこそ、そこに新しい美しさが生まれるのだと思うのです。そんなふうに考えると、何かが終わった後こそ、自信を持って新しい一歩を踏み出せるような気もしませんか。色々が切り替わる新年度ですから、仕事もプライベートも、叶えたい夢を今一度振り返り、新たな一歩を踏み出すのも良いかもしれません。

 さて今回は、そんな散りゆく花びらに想いを馳せながら思い出した一作をご紹介します。出会いと別れの季節にこそ観てほしい、エネルギーに満ちた珠玉のミュージカル映画です。

 物語の舞台はロサンゼルス。主人公は大舞台に立つことを夢見る女優の卵・ミアとジャズピアニストとして成功を夢見るセバスチャンです。ミアは映画スタジオにあるカフェで働きながら来る日も来る日もオーディションを受けては落ちを繰り返していました。ある日、友人たちと煌びやかなパーティーに出かけたミアは気が乗らず、一人抜け出します。歩きながらの帰り道、ふと聞こえてきたピアノのメロディに惹かれ店に入ったミアは、そこでピアノを奏でるセバスチャンに出逢います。彼もまた、ロサンゼルスで夢を掴もうと必死に生きる青年でした。その後再会した二人はやがて恋に落ち、互いの夢を励まし合いながら季節を共に過ごすようになります。夢を追うことが簡単ではないと痛切に知っている彼らは、自分の心が折れそうになっても、互いの夢を支え合うことで前に進むことができるようになります。そうして彼らは、互いを思いながら自分の夢に向かって前に進んでいくのですが、時の流れは彼らの歩幅を少しずつ、ずらしても行くのでした……。

 二人が登場するまでを描く冒頭の素晴らしいワンカットの長回しは名作『ロシュフォールの恋人たち』を彷彿とさせ、映画の醍醐味に満ち溢れた壮大さは、それだけでも見応え十分です。そして始まる物語は、恋をする二人の煌めきやすれ違い、夢を追うことで生じてくる人生の葛藤を、とても情感豊かに一気に描きこんでいきます。情熱的な音楽と歌声、軽やかなダンス、色とりどりの衣装と壮麗な美術で展開する二人の夢物語は、エネルギーに満ちていました。誰もの新しい一歩を、きっと力強く後押ししてくれる一作です。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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