橋の風景から39

―鷹留城橋―

吉永哲郎

 全線開通していませんが、榛名フルーツラインが箕郷梅林からぐるっと下室田の山中に建設中です。現在は一部を生活道路として土地の人が利用していますが、あまり人に知られていませんので、のんびりと四季折々の榛名の自然の移りを楽しむドライブコースとして、私はよく車を走らせます。途中には谷を渡る橋がいくつも架けられています。その一つが鷹留城橋です。
 鷹留城は戦国時代に築かれた山城の一つです。太田金山城が享徳の乱(15世紀中期)頃築城されていますが、鷹留城もこの頃、長年寺を開いた長野業尚が築城したのではないかと伝えられています。長野氏と対立する吾妻郡域の勢力に備え、箕輪城とともに要害堅固な砦として意味をもっていました。付近には松山城や堀之内という方形居館址などがあり、中世激動期の室田地域の様相が思われます。
 鷹留城橋からの眺める風景は格別です。眼下には榛名山からの沢田川の瀬音が幽かに聞こえ、人口的な建設物がないありのままの自然のたたずまいが眺められます。木々が芽吹く新緑の季節には生命の躍動感にこころが弾み、全山紅葉の色とりどりの秋は、自然が織りなす豪華な衣の文様を思います。私は晩秋から初冬の風景が一番好きです。藤原定家の「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」を口にし、日本の中世美を感じるからです。

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