続・源氏物語今に遊ぶ
巻1・④
吉永哲郎
桐壼帝の桐壼更衣への愛情表現は、王朝時代に人々にとってはかなり異常でした。王朝時代の婚姻制度は一般的に一夫一婦制と考えられていました。特に王位継承を考える皇室の婚姻性はかなり複雑な様相を呈していました。現代では憲法の皇室典範によりますが、王朝時代は、男子一人と多数の女性との婚姻は当然のように考えられていました。源氏物語はこの制度に対して、紫式部は疑問を呈した語りで、物語を紡いでいます。
より具体的に結婚制度について触れますと、当時の王朝貴族の結婚はほとんどが政略結婚です。人間の根源的な純粋精神としての愛をもとにした結婚ではない。まして帝の婚姻は身分制度によって縛られます。女御は大臣・親王家の女(ムスメ)、更衣は大納言以下の女(ムスメ)であるというように、出自の身分的序列が社会的に決定づけられていました。いいかえれば、家の勢力がそのまま宮仕えの序列であり、帝とのかかわりを規定する意味をもっていました。こうした時代通念に挑戦したのが光源氏の桐壼更衣への愛情です。人間の純粋精神をもって身分秩序の世界に挑戦した、帝の姿です。
帝は昔物語の主人公のような、普通の人間よりも理想的な人として描かれていません。愛する人の出自は大納言の女(ムスメ)、「いとやむごとなき際にはあらぬが」と、記されています。












