139.橋の風景から25

―神平橋―

吉永哲郎

 榛名山系の川の一つ、箕郷の白川からの支流早瀬川の流れがあります。大八木町の高崎スポーツセンター付近で井野川に合流します。一昔前ですと、秋には箕郷町下芝・楽間・菊地・北、南新波・浜川・小鳥町一帯は、黄色い絨毯を敷き詰めた風景が広がりました。この豊かな実りの絨毯に欠かせなかったのが早瀬川。その流れの段丘には古代遺跡、中世豪族の館址などが沢山あります。連歌師飯尾宗祇が連歌の会を開いた館もあったところです。
 さてこの神平橋は、高経大付属高校の校門近く流れる早瀬川に架かる橋です。今は堅牢な橋になっていますが、以前は旧箕郷街道の道筋にあたり、土橋のような橋で、上小鳥と浜川との境をなし、箕郷への人の往来が多くあった橋です。1950年代のある春の頃、橋のたもとで、山藤の樹皮を川に浸している、「箕直し」の老人の姿を見かけました。雲雀の鳴き声と川瀬の音につつまれ、老人は黙々と箕を直していました。「今日食えるだけかせいだら、仕事はおわり。多くかせいだってしかたがねぇ」と、笑顔で語った老人を、今でもこの橋上に立つと思い出します。その姿に、自然の風景のもと、背伸びせず身の丈にあったゆったりとしたくらしを、豊かな心で生きている人間の姿と、強く感じました。忘れられない風景です。
 急に賑やかな声がして、老人の姿は消えました。高校生の下校時です…

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