149.橋の風景から35

―常慶橋(下)―

吉永哲郎

 常慶橋の車の往来は激しいので、立ち止まることはできませんが、井野川でアユ釣りの姿を以前は見かけました。釣り人の訪れが多かった頃、「柳虫・栗虫・茶虫・さし」などの釣餌の張り紙がある釣具の店が、橋近くにありました。また店先には魚籠(びく)や竹を筒状に編み、一方を円錐状に閉じた「笯(ど)」(地方によってはウケともいう)などが並べてありました。笯はウナギや泥鰌を捕える漁具で、当時これを用いた漁法がこの付近の野川で盛んであったことを思います。夕方、笯のなかにミミズを入れて川に沈め、沈めたところの目安に川岸に石などを置き、翌朝笯を上げに行きます。中にウナギが入っていると大騒ぎ、こうした光景は思い出のなかにしかないのかもしれません。
 さてこの辺りの井野川には、古代「毛野国」の事を考える貴重な古墳遺跡があります。それは大和朝廷勢力進出を物語る「同笵鏡」(同じ鋳型や原型を用いてつくられた鏡)が、井野川水系の管理者と思われる墳墓(蟹沢古墳)から出土しています。これは兵庫県森尾古墳・奈良県新山古墳と同笵の鏡です。また近くに将軍塚古墳(長さ95メートル)や大規模な古墳群がありますので、毛野国掌握に同笵鏡配布を特に井野川水系管理者に与え、大和勢力東国掌握の拠点として考えていたのではなかったかと、古代史への限りないロマンを描きます。

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