第36回高崎映画祭 最優秀作品賞/最優秀監督賞

(2023年01月20日)

『ケイコ 目を澄ませて』© 2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS
三宅監督
『春原さんのうた』 © Genuine Light Pictures
杉田監督

最優秀作品賞

『ケイコ 目を澄ませて』=三宅唱(みやけ・しょう)監督

 

【受賞理由】

空気を切る音が聴こえ、そのわずかな風を感じる。16ミリフィルムの手触りと温もりが、地に足をつけて生きる人たちの生命を余すところなく映し出していく。今、ここで、自分と、人と向き合って生きるボクサー・ケイコの脈までが聴こえて来るようだ。時代を肌感覚で映像に落とし込むその高い技術とセンスに脱帽する。映画が人に希望を与えることができるのは、こうした世界観の中に映像として人間の尊厳を浮かび上がらせる時なのだと思う。素晴らしいの一言に尽きた。

 

 

最優秀監督賞

『春原さんのうた』=杉田協士(すぎた・きょうし)監督

 

【受賞理由】

静かに、穏やかに時を重ねていく。深い喪失感を抱えても人はそうして進んでゆく。その静かで弛まない命の流れを、そっとカメラに収めるようにしてこの映画は出来上がっていく。風通しの良い部屋に住む沙知が、自分の心の中にも風を通していく。心に何かが触れる瞬間を、この作品は捉えていく。杉田監督独自のテンポと表現力でこそ描き出せる世界だと思う。忙しない時代の流れが窓の外に広がりはしても、人の心はいつでもその人のものだと思わされる。深く心を叩く美しい作品であり、映画がなし得る表現の豊かさに引き込まれた。

 

 

 

 

 

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