手話言語条例が福祉を前進

(2017年06月15日)

手話通訳者養成に課題も

今年3月の高崎市議会で議員発議による手話言語条例が制定され、4月1日から施行された。松本賢一議員は9日の高崎市議会一般質問で、この条例施行の意義について取り上げた。議員発議による条例制定は高崎市議会で初めて。本条例は聴覚障害者団体から強い要望を受けており、起草にあたり松本議員は、障害者団体とのパイプ役を果たした経緯がある。

条例制定について、NPO法人高崎市聴覚障害者協会の堀米理事長は「この条例によって手話が利用しやすい環境が整備され、ろう者の社会参加が容易になることを期待しています」と喜びのメッセージを寄せているそうだ。

この条例は、「ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本として、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し、手話の普及を図るものとする」を基本理念に定めており、今後の具体的な取り組みが不可欠となる。市民の手話に対する関心を高めるとともに、救急時、災害時の対応も必要だ。

高崎市は「手話への理解と普及をはかるため施策を策定し、実施することが高崎市の責務」と決意を示す一方、現状の課題も浮かび上がった。手話言語条例は、障害者福祉に対する意識喚起のきっかけとなった。

 

●手話を使っている人の実数は不明

身障者手帳が交付されている聴覚障害者数は約1000人だが、身障者手帳の交付に該当しない難聴の人等もいる。また聴覚障害者団体に所属している87人は手話を使っているが、市内で手話を使っている人の実数については把握できていないことがわかった。

松本議員は「1000人に対し87人は大きなギャップがある」と指摘した。

 

●手話通訳者が不足。養成に長い年月が必要

高崎市では、社会福祉協議会と連携し、手話通訳者の派遣を行っている。手話通訳者は43人いるが、不足している。手話通訳者、要約筆記者の養成が必要。

市はNPOに委託して手話講習を行い、手話奉仕員として活動してもらえるよう取り組んでいる。入門講座は50人ほど受講しており、上級になるほど人数は少ない。手話通訳者となるには、市の講習を修了後、高崎市・前橋市・群馬県で共催している研修を修了し、全国・県の試験に合格する必要がある。手話通訳者になるには最短でも5年ほどかかるという。

この条例に示されているように、手話は言語なので手話通訳者はバイリンガルの同時通訳で、しかも腕の動作を伴うので負担のかかる仕事となる

要約筆記者も高崎市・前橋市・群馬県で共催している研修を修了後、全国、県の試験に合格し、県や市町村に登録することが必要。また要約筆記者の派遣ニーズは少ないという。

 

●啓発・普及で来年度に手話イベント

高崎市では、手話の啓発普及をはかるため、来年度に手話のイベントを開催する予定で、今年度はイベント計画を練っていく。

高崎市で実施されているものでは、窓口対応に役立つ手話動画を福祉課職員が実演して庁内配信している。市民啓発では群馬テレビの「たかさきもぎたて情報」に市が手話を加えてユーチューブ配信している。学校では障害に対する理解を深める学習を行い、その一環として手話に触れる機会が設けられている。

また、今年度の高崎市職員採用試験では、障害者枠の受験資格がこれまでの「身体障害者」から「身体障害者手帳、療育手帳または精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人」に拡大された。

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