北陸新幹線・金沢延伸で都市間競争が激化

内陸のハブを目指す高崎

 平成27年3月の北陸新幹線・金沢延伸を目前に、石川県、富山県や新潟県、長野県では観光を中心に活発な取り組みが展開されている。特に直接の当事者となる石川県、富山県が新幹線に寄せる期待は大きく、地域産業の活性化や産業誘致などビジネス戦略が積極的に動いている。
 上越新幹線と北陸新幹線をつなぎ、高速交通網の結節点の高崎は、首都圏と北信越、北関東のハブ(ネットワークの中心)としての機能を果たし、北信越とのビジネスや観光での交流に大きな役割を持つことができる。

「商工たかさき」 2014/12号より

■■内陸交通の中心都市・高崎■■

 高崎市は本州の中央に位置し、高速交通が交差する内陸交通の中心軸となっている。北陸新幹線・金沢延伸により北陸方面への高速交通インフラが強化され、高崎の交流拠点性が一層高まっていく。

●東日本の主要都市が2時間圏

 高崎市は、関越自動車道・北関東自動車道・上信越自動車道や上越新幹線・北陸新幹線が交差する内陸交通軸の中心で、国内でも屈指の高速交通インフラを持っている。東京、長野が1時間圏、新潟、宇都宮、水戸、横浜が2時間圏、北陸新幹線により富山、金沢も2時間圏となる。
 行くにも来るにも便利な高崎市は、人の交流や物流の拠点として適し、首都圏、北関東、北信越を始め、東北や関西方面も含めた全国物流を偏りなくカバーでき、輸送時間やコストの均等化を図ることができる。海外交易では、京浜港(東京港・川崎港・横浜港)、常陸那珂港(茨城県)、新潟港、伏木富山港を利用でき、相手国や航路に応じた選択肢が広がる。

●新幹線と高速道が直結した都市型ビジネス拠点

 平成26年2月に開業した高崎玉村スマートICにより、高崎駅東口から「高崎スマートIC産業団地(仮称)」に至るエリアは、新幹線と高速道路による利便性を備えた新しい高崎のビジネスゾーンとして高いポテンシャルを持っている。
 北陸新幹線の延伸区間となる石川県、富山県、新潟県、長野県は、東京を中心とした首都圏からの交流人口の増大に大きな期待を寄せている。首都圏と北信越と北関東の交流性を高めるため、高崎がハブ(交通結節点)としての機能をさらに発揮することが求められており、これからの高崎の発展には、機能的な内陸ハブ都市となるための戦略が重要なポイントになるだろう。

■■金沢延伸で北陸が首都圏に直結■■

●アジアを視野 東海道を補完する新しい国土軸に

 北陸新幹線の最終計画は、東京から上信越、北陸を経て大阪へ至るルートで、東京と大阪を日本海側で結ぶ。日本海側に新たな国土軸を形成し、太平洋側の災害に備えたバックアップ機能、アジアの成長を視野に入れた国際競争力の強化が図られるものと、富山、石川、福井三県では期待が大きい。
 太平洋側の東海地方に地震が発生し、東京・名古屋間の幹線が寸断し不通になった場合、一日に28万人、飛行機の増便など代替輸送を最大限使ったとしても20万人の輸送が困難になると想定され、北陸新幹線が全線開通すれば、そのうち10万人の輸送を代替できると北陸経済連合会は試算している。

●「長野止まり」では北陸にメリットは少ない

 平成9年に、北陸新幹線の高崎・長野間(長野新幹線)が開通したが、長野止まりでは、首都圏と北陸を近づけるには至らなかった。現状では東京から金沢までの所要時間は、上越新幹線・越後湯沢から「ほくほく線」の特急「はくたか」で約3時間50分。長野から直江津経由で金沢まで乗車時間で3時間以上かかる。北陸新幹線金沢延伸により、東京・金沢間は2時間28分、東京・富山間は2時間8分で乗り換えもなくなる。

●北信越の交流と物流の実情

 北陸新幹線・金沢延伸に伴い沿線都市は、まず首都圏からの観光誘致を前面に打ち出している。国際観光都市・金沢を始めとする北陸観光の魅力は大きい。北陸エリアから新幹線によってどれだけ群馬、高崎へ観光誘致できるかは、客観的に見ることが必要だ。
 国土交通省の平成24年度旅客地域流動調査をもとに、都道府県間の移動量を見ると、新潟、長野、富山、石川各県は、県外との交流性が余り高くないことが示される。
 石川県内の旅客輸送数は年間1億4,724万人で、群馬県内の1億5,296万人とほぼ同規模である一方、県外からの旅客数は石川県が1,400万人で全体の9・8%、群馬県が3,640万人で23.8%、県外交流人口は群馬県の半分以下となっている。新潟、長野、富山各県も石川県と同様で、旅客輸送に占める県外交流人口は10%以下となっている。
 物流も同様で、北信越各県の全輸送量における県外輸送量は15%から17%であるのに対し、群馬県は31%、栃木県は37%、茨城県は51%と地域特性に大きな違いが見られる。
 北陸新幹線の延伸による交通利便性の向上は、北信越の交流性に大きく貢献することが期待されている。

●首都圏から北陸に一日1万5千人

 北陸新幹線の利用者数の見通しは、これまでの報道によれば1日2万3千人で、首都圏と北陸を移動する人は1万5千人を見込んでいる。内訳は、越後湯沢経由で上越新幹線と在来線を使って首都圏と北陸を往復する約1万人が北陸新幹線を利用し、航空機、高速バスなどから5千人が移行すると見込む。富山・金沢間などの北信越区間の新幹線利用者が8千人。
 JRでは、東京・金沢間のシェアについて現在の鉄道4割・航空6割が、8対2になると見ており、観光需要を創出し利用者を増やしていく考えだ。
 北陸新幹線速達タイプの「かがやき」は1日10往復、各駅停車の「はくたか」は14往復、富山・金沢間の「つるぎ」は18往復が運行される予定だ。

●北陸が首都圏経済圏に

 北陸新幹線は、北信越と首都圏との交流に大きな変化を与え、人の流れは物流=ビジネスにも影響を与えるはずだ。これまで関西と交流の深かった北陸経済圏が首都圏に組み込まれる可能性も指摘されている。
 シンクタンクが試算した北陸新幹線開業による経済波及効果は、石川県が年間124億円、富山県が88億円となっている。観光収入が占める割合が高いが、ビジネスによる直接効果は、石川県が年間20億円、富山県は16億円と試算されている。
 金沢延伸が群馬県に与える経済効果について試算値はないが、高崎にとってもビジネス圏を拡大するチャンスとなる。

●東京五輪までに福井延伸か

 金沢から福井を経て敦賀までの区間は、2025年度開業が目指されてきた。福井駅では新幹線ホームが既に平成21年に完成しており、福井県民としては一日も早い開業を望んでいる。福井県などでは開業の3年前倒しを要望し、政府与党内では東京五輪までに福井まで開通させる意見も出ている。その先の敦賀・大阪間のルートは未定で建設には厳しい見方も出ており、JRではレール幅の異なる在来線に直通運転できるFGT(フリーゲージトレイン)の導入を進めようと実験を始めている。
 金沢・敦賀間の開業による北陸地方の経済効果は年間800億円と北陸経済連合会は試算し、早期開業により経済効果は一層高まると国などに要望している。

■■強まる都市間の競争と連携■■

●何度も言われた高崎のストロー化問題

 「かがやき」通過問題も含め、北陸新幹線・金沢延伸で高崎を素通りするストロー化については、上越新幹線、長野新幹線開業時にも同様の懸念が持たれていた。
 新幹線開通によって、東京・高崎間が一口に1時間、東京から長野までが1時間40分、新潟までが2時間10分で交流圏が拡大し、来訪者数が増え、地域産業の成長につながっている。一方、日帰り客が増えて宿泊客は減少するため、「地元に落ちる金額が少なくなる」、「出張コストが下がるため県外の企業が営業所や支店を置く必要がなくなり撤退する」、「競合が広域化する」など、交通の高速化は、都市にとってメリットをもたらすだけではない。

●新潟が危機感 上越新幹線・高崎以北に大きな影響

 北陸新幹線開業で危機感を強めているのが新潟県だ。北陸新幹線・金沢延伸により首都圏と北陸を結ぶルートが、現在の上越新幹線・越後湯沢経由「ほくほく線」から、高崎経由北陸新幹線へ移るため、高崎以北の上越新幹線利用者の減少を予想している。また、北陸新幹線が福井、敦賀まで延伸されると、北陸新幹線の需要が増大していき、上越新幹線が北陸新幹線の支線になるという見方もささやかれている。
 新潟県内では、こうした状況が地域経済にマイナスもたらすと危惧し、「2014年問題」と呼んで対策に取り組んでいる。北陸新幹線によって、新潟県内には新幹線駅が新たに2つ増えるが、上越新幹線は新潟市、長岡市などと東京を結ぶ大動脈であることに変わりはない。新潟県からは北陸新幹線開業の影響で、上越新幹線の利便性が低下しないことが強く求められている。新潟市は日本海側の拠点都市であり、この問題による影響は、新潟県から山形県、秋田県南部まで日本海側に広く及ぶ可能性もあるという。

●北陸に攻め込む長野県

 長野県では、長野新幹線開業により、鉄道の利用率が高まり旅客輸送が増加、広域的な時間短縮効果が表れ、軽井沢町などが大きく成長している。一方、営業所・支店の撤退による地域経済のマイナス面も指摘されている。北陸新幹線延伸により、長野駅以北にはプラス効果が期待できる反面、観光やビジネスが金沢へ流れるのではないかと、マイナスの影響も意識されている。
 長野県では、県の予算資料等によれば、新幹線沿線駅の利用者を現行の年間530万人から、延伸後の平成27年度は80万人増の610万人を目標に、平成26年度から観光誘致への取り組みを本格化している。北陸新幹線に関連する観光PR予算として平成25年度の8倍超の約6千万円を盛り込み、このうち3千7百万円を北陸地域での観光PRに投入する。首都圏、関西圏でのPRも強化した。

●広域連携の新たな枠組みで集客強化 強力な周遊観光商品をPR

 新潟県内に新たに開業する北陸新幹線駅上越妙高駅、糸魚川駅を中心に、広域的な観光地連携による観光客を呼び込む動きも始まっている。
 11月の長野県北部地震で被災した地域もあるが、このエリアには美しい日本海と北アルプスの山並みがあり、食では海の幸・山の幸に恵まれ、全国的に見ても観光ブランド力が高い。
 上越妙高駅を玄関口とする新潟県上越市、妙高市、柏崎市、十日町市、佐渡市による「ようこそ。越五の国へ」プロジェクト、糸魚川駅を中心とした新潟県糸魚川市・上越市、長野県大町市・白馬村・小谷村、富山県朝日町などによる県域を越えた「北アルプス日本海広域連携会議」などの取り組みがある。
 考案された周遊観光商品は、旅行会社を現地に招いて売り込み、首都圏、関西圏へのPRに力を入れている。新幹線による日帰りの小旅行やビジネスでの集客もめざしており、こうしたブランド力の高い周遊観光商品と、群馬・高崎が競合していくことも考慮していかなければならない。

●高崎が首都圏と北信越連携を結ぶ

 金沢市は北陸新幹線開業による将来性にいち早く着目し、平成20年に高崎市と友好交流都市協定を結んだ。金沢市は、集客プロモーションパートナー都市として長野市、観光交流都市として岡崎市、豊田市、高山市と提携し、北陸新幹線ルート、中京方面ルートを地固めしていく視点を持っているようだ。
 新潟市は、今年10月に災害に備えた応援協定を高崎市と結び、新潟市長が締結のために高崎市を訪れている。新潟市が応援協定を結んでいるのは、神奈川県川崎市・横浜市、埼玉県さいたま市、群馬県前橋市・高崎市で、新潟市では安心安全面で新潟・首都圏を結ぶ連携のラインが整ったとしており、交流のパイプづくりが進められている。
 北陸新幹線による北陸の観光集客増加に危機感を持っている首都圏近郊の観光地、温泉地も少なくない。伊豆大島、熱海市などは高崎での観光キャンペーンに積極的だ。忙しい中、数ある都市の中から高崎を選んでキャラバン隊が訪れることは、高崎市民の誘客に加え、高崎で発信することが効果を上げると認知されていると言える。

●高崎の競争力が相対的に下がるのか

 高崎経済大学観光政策学科で交通問題や観光政策に詳しい味水佑毅准教授は、「他地域の魅力が高まれば、相対的に高崎の競争力は下がる。首都圏からの時間距離が短縮し、北陸の魅力が高まれば、北関東の相対的な競争力は下がると考えたほうがいい」と指摘する。「北陸に魅力を感じれば、結果として高崎は通過される、そうさせないための戦いが必要だ。危機感を誰も口にしないことは最終的には良いことではない」と問題意識の必要性を強調している。
 味水准教授は、東京から50分の高崎は都内の八王子と同じ時間距離にあり、近さを生かした戦略を強く打ち出していくべきだと考えている。また国内を旅行する外国人観光客は東京、大阪、京都が中心で、地方都市はどんぐりの背比べとなっており、地方都市は外国人観光客に向けた戦略や受け入れ体制がまだまだ十分ではないという。「知名度で北海道を超えるくらい目立ち、お客様を呼べるように高崎はがんばっていくべきだ」と力を込める。

●総合的な視点でビジネス集積を

 味水准教授は、予定されている圏央道の全線開通により、関越自動車道と北関東自動車道の競争力も相対的に低下すると指摘し、グローバルな動向や地球温暖化など環境問題、災害対策も含めた企業立地を進めていく必要があると考えている。
 通勤、通学、通院、観光などの目的地まで移動する手段として旅客輸送が派生し、ビジネスの受発注によって輸送と保管の物流が派生することから、観光やビジネス需要を増大させることが最も重要だ。
 開業を間近にした北陸地方の中にも「新幹線が来るから観光客やビジネスチャンスが増えると単純で楽観的な期待を抱いてはならない」と警鐘し、新たな成長戦略の必要性を強調する意見もある。

●「夢の新線」で東京・品川・横浜と直通

 北陸新幹線・金沢開業と同日の平成27年3月14日に、高崎線と東海道線を結ぶ「上野東京ライン」東京駅乗り入れが始まる。高崎線終点の上野から東京、新橋、品川への乗り換えが無くなり、山手線、京浜東北線の混雑緩和に期待され、高崎線が丸の内オフィス街に直結される。
 JR東日本では、上野駅発着の宇都宮線・高崎線・常磐線と東海道線と結ぶ「東北縦貫線=上野東京ライン」全長3・8㎞の工事を平成20年から行ってきた。新幹線高架の更に上を走らせる日本初の二重高架方式も話題になった。
 JR東日本の発表によれば、朝8時から9時の通勤ピーク時間帯については、直通本数は宇都宮線5本、高崎線5本、常磐線5本が予定されている。上野東京ラインは、北関東と神奈川が一本でつながる「夢の新線」と言われており、高崎線と宇都宮線は東海道線と相互直通運転となる。

●湘南に並ぶ感度の高い都市 スポーツ・若者文化を創造する都市に

 湘南新宿ラインにより高崎から池袋、新宿方面への利便性も高くなっており、上野東京ラインによる東海道線直通で、高崎から神奈川まで一体的な路線のつながりが創出されることになる。
 東京から湘南までおよそ1時間、高崎と同じ時間距離にある。マリンスポーツやファッション、音楽など湘南は感度の高い若者文化の発信地だが、北関東信越エリアの発信力を高める上でも、湘南に相当するような個性を高崎が発揮していくことが広域的にも必要だ。
 上野東京ラインによって高崎線・東海道線が直通となり、南は「横浜・湘南」、北は「高崎・軽井沢」が首都圏を挟んで並び合う地図が描かれる。芸術文化、スポーツにおいても存在感を示していけるよう、音楽、若者文化、サブカルチャーなど高崎の特化した魅力を更に生かしていく必要がある。

■■北陸上信越経済圏の可能性■■
交流拠点として描いた高崎の機能が完成

●北陸上信越経済圏の形成も

 北陸新幹線開業をきっかけに、沿線都市の経済交流を推進しようと『北陸新幹線沿線都市民間交流会議』が今年11月11日に発足した。この会議は、石川県金沢市、富山県高岡市、富山市、黒部市、新潟県上越市、糸魚川市、長野県長野市、上田市、飯山市、佐久市、軽井沢町、群馬県高崎市、安中市の商工会議所・商工会・観光協会で組織される。会長に当所の原浩一郎会頭が選出され、高崎商工会議所が事務局をつとめている。
 各都市の連携協力による経済交流の促進が目的で、高崎市は「沿線都市の交流人口を合計すれば4,000万人、製品出荷額は4兆5千億円の『北陸上信越経済圏』が形成される」と提起し、連携事業について意見交換が行われた。
 連携事業として、北陸新幹線沿線の祭りやイベントなどでの相互交流、共通ホームページの立ち上げ、共同キャンペーンの開催が提案された。新幹線により新たな観光ルートが開発されるなど、これまでになかった周遊ルートに観光客を呼び込める可能性も十分にある。
 原会頭は、伝統芸能の能による金沢と高崎の交流に言及したが、芸術文化などによる民間交流を推進し、一歩一歩緊密な関係を築いていくことが将来のために重要だ。

●新しい高崎の都市力を発揮する時

 交流拠点都市として高崎が描いてきた高速交通ネットワークが金沢延伸によって完成する。北陸が関東に向かって大きく門戸を開き、首都圏との流動性が高まるのは間違いなく、その流れをつかむことが重要だ。
 新幹線や高速道路が新しく開業するごとに高崎のストロー化が懸念されてきたが、今、高崎は政令市と肩を並べ全国14位の商業売上を持つビジネス都市へと発展することができている。高速交通インフラが整い、高崎が首都圏と北信越・北関東のハブとしてビジネスチャンスを広げていくため、新しい高崎のビジネス戦略、観光戦略を本格的にスタートさせなければならない。

(商工たかさき・平成26年12月号)