昭和ムードの屋台横丁に再建

高崎市が中央銀座アーケードの整備計画を発表

中央銀座アーケード街再生イメージ(高崎市提供)

「商工たかさき」 2014/12号より

●大雪でアーケードが崩落、110mを撤去

 今年2月の大雪で中央銀座アーケードの一部が雪の重さに耐えきれず崩落した。「大雪の朝、アーケードが落ちそうだと110番通報すると、すぐに市の職員もかけつけてくれた。警察が通りを封鎖し、どうしようかと市の人と話していたら、大きな音とともに目の前でアーケードが落ちてきた。一瞬のことで言葉を失った。けが人が出なくて本当によかった」と中央銀座で三代にわたってクリーニング店を営む清水盛繁さんは、その時の状況を語る。
 この箇所のアーケードは昭和47年に建設され、高崎中央銀座アーケード一期会の所有になっていた。崩落部分は約50mだったが、屋根が折れた箇所などを含む約110mについても危険性が高いとし、安全確保のため高崎市はすぐに撤去を開始した。「崩落したアーケードの解体はやむをえないが、復旧できるのだろうか」と、中央銀座の再建は市民の大きな関心事となった。
 高崎市は、20代から30代の若手職員12人をメンバーとするアーケードの再生プロジェクトチームを4月に立ち上げ、自由な発想で調査や研究を行わせていた。

●失意を希望へ

 富岡市長はかねてから中央銀座通りに漂うレトロな雰囲気を愛し、「昭和のムードを生かしたまちづくりがこれからのトレンドの一つになる」と折に触れて語り、中心商店街活性化に生かす方策を考えていたようだ。高崎電気館の再生も、昭和の雰囲気を生かした高崎市のまちづくり施策として注目を集めるものとなった。
 プロジェクトチームによってまとめられた構想は市長に提出され、中央銀座アーケード再生計画が策定された。松本泰夫副市長は「建築や消防・救急、道路使用などの法令を検討し、描いた夢を実現可能な方向へ調整した」と語る。
 再生計画をまとめていく上で、地元中央銀座の意見も求められた。崩落により、クリーニング店の前のアーケードを失った清水さんは「雪害から復興でき、ありがたい話」と、まずはひと安心し「再建の絵を見せてもらった時はびっくりしました」と喜びを隠せない様子だ。「この界隈は夜のまちになっているので、地域の特徴を伸ばし、老若男女が昼も夜も集まってくるまちになれば本当にうれしい」と話している。

●昭和レトロな魅力を起爆剤に

 高崎市の計画は、中央銀座アーケード(全長約430m)の内、崩落区間を含む新紺屋町、寄合町の一部110m(「おしゃれ」前から北端付近まで)を昭和の雰囲気漂う屋台横丁として整備するというもので、市がアーケード本体の工事を行い、空き店舗を再生するなど昭和の店づくり、通りづくりは、民間の力に委ねたいと考えている。
 アーケード整備では、『高崎産木材をできるだけ活用する』『街路灯は昭和の風情を醸し出す統一したデザインとする』『若手経営者による昭和レトロな雰囲気の屋台風飲食店の出店を中心とする』『飲食店は高崎産食材を積極的に提供する』『オープンな雰囲気を醸し出すため道路空間に椅子やテーブルを設置する』『看板のイメージを揃え、統一感のある通りにしていく』ことが市の考えとして示されている。
 昭和の雰囲気づくりとして高崎産木材をアーケードの一部に使用し、木造風のデザインする計画だが、木材をアーケードに使用するのは全国でも例が少ないそうだ。
 高崎市は関係者との協議を進め、理解が得られたのち平成27年度にアーケード本体の設計に着手し、平成28年度の着工を見込む。

●地元の理解を得ながら数年をかけて

 高崎市が確認したところによると、この110mの区間には27店舗があり、そのうち空き店舗は6店舗ほどになっている。空き店舗を活用し屋台横丁の核となる店舗を徐々に増やしていく見通しだが、店舗経営だけでなく、通りのマネジメントなども行える人材と組織が必要となってくるだろう。高崎市では、アーケード本体の整備を市が行い、通りのまちづくりは地元や出店者に委ねていく考えだ。
 貸主との交渉や経営計画づくり、店舗改装工事などを考えれば、実際に店舗がオープンするまでには相応の時間が必要だ。話題性があり注目度も高いので、店舗が増えればスケールメリットにより、柳川町も含めた飲み屋街一帯の活性化に貢献するだろう。
 田町など旧中山道沿いでは横丁風の雰囲気を持った再開発も進んでおり、相乗効果で夜の高崎の回遊性が高まるに違いない。
 高崎市では、アーケード本体工事に約2億円を見込んでおり、出店者には商店リニューアル補助金など既存の高崎市の支援制度を活用してもらう考えだ。
 ランチタイム営業など、高崎市は昼の時間帯からのにぎわいづくりも念頭に置いているが、夜のまちづくりに行政が本腰で取り組むのは、おそらく全国でも少ないだろう。市では、全国で抱える商店街活性化策の先進事例となるよう事業を進めていきたいとしている。

協力して昔の活気を取り戻したい
清水クリーニング店(新紺屋町)
店主・清水盛繁さん

 高崎のにぎわいを担ってきた中央銀座商店街に誇りを持っています。高崎市が柔軟な考えで雪害の復興計画を示してくれました。現在の通りの特徴を生かしながら、昼もにぎわい、女性も楽しめる健全な夜のまちとして昔の活気を取り戻していけると思います。まちづくりの課題をみんなで話し合い、解決していくよう協力していきたいです。

(商工たかさき・平成26年12月号)