高崎の交流圏が大きく広がる

北陸新幹線・上野東京ラインが開業

高崎駅に停車した「はくたか」一番列車
(3月14日)

 3月14日、北陸新幹線長野・金沢間と上野東京ラインが華々しく開業した。東京・金沢間が最速2時間28分、金沢を主役に新幹線で北陸に訪れるニュースで持ち切りとなったが、高崎にとっては上野東京ラインによる交流圏形成にも注目しておかなければならない。

「商工たかさき」 2015/4号より

●3・14は各地で祝賀ムードに

 北陸新幹線は、平成9年(1997)10月の長野新幹線開業から17年余を経て金沢へ到達し、北陸、上信越地域の悲願が実現した。
 JR東日本が東京駅で、JR西日本は金沢駅で、それぞれ始発「かがやき」の出発式を行ったほか長野以遠の8つの駅では始発が走る早朝から記念行事が盛大に行われた。
 JRによれば、2月14日に発売された「かがやき」の東京発一番列車の指定席は25秒、「はくたか」は55秒で売り切れとなる人気ぶり。JR東日本の冨田哲郎社長は開業式で「新幹線開業が地域間流動の起爆剤となり、北陸、信越を元気にする地方活性化の牽引力となることを期待している」と述べた。
 高崎駅では開業に合わせて新幹線改札内の待合室をリニューアルし、中央コンコースでキャンペーンイベントが実施された。高崎市と高崎観光協会は、開業の3月14日から2日間、慈光通りで「開運たかさき食堂」を開催し大勢の市民でにぎわった。

●「かがやき」需要は金沢直行

高崎駅を通過する「かがやき」一番列車
(3月14日)

 東京・金沢間を最速2時間28分で結ぶ「かがやき」の東京発金沢行き一番列車は14日朝、午前7時過ぎに時速約200キロで高崎駅を通過し、新幹線ホームで待ち構えていた鉄道ファンを喜ばせたが、昨年の発表でわかっていたこととは言え、「かがやき」が全て通過することに、高崎市民はすっきりしない。
 東京と金沢・富山間を空路で行き交う需要は高崎に発着する必要はなく、高崎の上空を新幹線「かがやき」が飛んで行くようなことになった。北陸新幹線金沢開業は、悲喜こもごもといったところだ。
 金沢や富山などとは異なり高崎における北陸新幹線の開業特需は、誰もが冷静に見ていることだろう。高崎でも「新幹線で金沢に行きたい」と考えている人は多いだろうが、逆に石川県や富山県から高崎にどの程度人が来るかは、想像する人数と実態はそれほど違わないと思われる。北陸は輝き、高崎はその日影となってしまうか。

●乗客数は「東」に軍配か

 JR東日本、西日本の発表によれば、開業した3月14日から16日まで3日間の北陸新幹線の利用者数は、東日本管内の「高崎・軽井沢間」で上下合わせ14万3,800人、一日平均約4万7,900人、乗車率57%。西日本管内の「上越妙高・糸魚川駅間」が8万4,000人で一日平均2万8,000人、乗車率48%。
 各駅の乗車数は、一日平均で金沢駅9,800人、長野駅約7,000人、富山駅4,700人、上越妙高駅2,300人、新高岡駅1,600人などとなっている。高崎駅の乗車数は発表されていないが、参考までに2013年の一日平均の新幹線乗車数は7,846人となっている。
 JR2社は北陸新幹線利用者を一日当たり2万3,000人と見込んでいた。開業後の瞬間風速とはいえ、好調な出足となっているようだ。開業の翌週、北陸新幹線で空席が多いとインターネットで話題になっていた。JRの正式発表ではないが、高崎以南の乗客が多いこともあり12両編成で運行されていることによると見られている。在来線の輸送能力が満杯になって開通した東海道新幹線と他の新幹線は違い、新幹線が新たな交流人口を創出することを見込んでいる。

●インパクトが大きな上野・東京ライン


 北陸新幹線とともに3月14日に開業した上野・東京ラインは、これから高崎の交通利便性に大きな影響を与えそうだ。JR東日本は政治経済の中心・東京と芸術と文化の街・上野を結ぶ大動脈と位置づけ、上野終着の高崎線と宇都宮線が東海道線と相互直通運転、常磐線が品川駅に乗り入れた。
 JRが「日本一混む」と言われるボトルネック=上野東京間の混雑緩和や都心を抜けるアクセス向上に期待していることに加え、上野東京ラインにより、北関東が東京に近づいたと指摘する交通ジャーナリストは多い。
 上野東京ラインで高崎と横浜、小田原、熱海が一体的な路線としてつながった。上野から東京、新橋、品川への乗り換えが無くなり、高崎線が丸の内オフィス街に直結し、東京都心へのアクセスが向上した。

●心理的距離間縮め「高崎がすぐそこ」に

 既に湘南新宿ラインによって高崎から池袋、新宿方面への利便性が高まっている。湘南新宿ラインは山手線西エリアへのアクセスが便利で新幹線よりも運賃が安く、高崎からの利用者も多い。上野東京ラインは、現状のダイヤは上り快速が無いなど、高崎からの所要時間で湘南新宿ラインのようなメリットが無いのが残念だが、大宮以南の恩恵は大きい。
 京浜東北線が大宮と横浜・大船を結び、中央線・総武線が千葉・三鷹・八王子・高尾まで一体的につなげているように、上野東京ラインは高崎と小田原・熱海・沼津までを近づける。
 東京都心部にとっては非常に大きな変更となっていて、高崎線の10両編成が東海道線の12両編成より短いため、逆に混雑区間が生じたり、東海道線が東京始発でなくなって座れないというニュースもネットをにぎわせた。
 高崎駅では、高崎線の案内板に「上野東京ライン」と表示され、行先も「熱海」「小田原」となっているため、上野駅終点の高崎線に乗り慣れている人は、戸惑いもあったようだったが、同様に東海道線の各駅で「高崎」が行き先表示される。直通運転は心理的距離感を縮め、地域間交流を促進することがこれまでに示されており、上野東京ラインの副次的効果は大きいと考えられる。
 当所が3月に東京駅地下街で開催した「たかさき物産フェスタin東京駅」でJR東日本の江藤尚志東京駅長は「上野東京ラインは高崎の魅力につながる」と話した。首都圏を挟んで、南は「横浜・湘南」、北は「高崎・軽井沢」となり、ビジネス・観光・芸術文化・スポーツ・食文化など、高崎が存在感を示し、高崎ブランドを発信することが重要だ。3月14日、高崎の本格的な戦いが始まったのだ。

(商工たかさき・平成27年4月号)