高崎駅東口副都心のリーディング・プロジェクト


高崎文化芸術センター(外観イメージ)

高崎駅東口の高崎文化芸術センター(仮)が平成30年度完成をめざし、建設準備が本格化している。建設地となる市営栄町駐車場は3月末に閉鎖された。今後、駐車場解体と発掘調査が始まる。

「商工たかさき」 2015/5号より

新しい高崎をリードする都市集客施設

メインホールのイメージ
小音楽ホール(群馬県初の本格的音楽専用ホール)

 高崎市は平成26年度に「高崎文化芸術センター」の基本設計を策定し、今年1月に発表した。多目的ホールのメインホールを中心に、メインスタジオ、小音楽ホール、スタジオ8室などで構成され、地上5階、地下1階、建築面積約9千㎡、延床面積2万7千㎡、最高高さ約38m。完成すれば、高崎駅東口から文化芸術センターの建物が見え、高崎のシンボルとなる。
 主な配置は1階と2階がメインホールとメインスタジオ、4階と5階が小音楽ホール、4階にスタジオ。メインホールは上階まで吹き抜け、ホール空間容積やステージ天井高を確保する。
 建物外観は、東西に連なる水平ラインとガラス壁面の透明感が特徴的で、高崎駅東口線側のガラス壁面からメインホールのにぎわいが映し出される。文化芸術センターの西側に建設予定の再開発ビル(商業・ビジネスを含めたパブリックゾーン)との一体的な景観となり、境界部分には憩いの場(プロムナード)の設置が予定されている。

●進む設計作業。平成28年の着工をめざす
能舞台として活用されるメインスタジオのイメージ

 平成27年度は建築図面となる実施設計が行われ、来年度に工事が始まるものと見られる。
 メインホールは2,018席の多目的ホールでバルコニー席、サイドバルコニー席を設ける。バルコニー席は当初案のシューボックス・スレッジ形式が複雑な動線になることから変更された。舞台の間口は18m、最大28m、奥行き18mで国内最大級の広さを誇る。音響反射板使用時は間口23m、奥行14mとなり、客席とステージの一体感を持つ音楽センターの良さを継承した。
 メインスタジオは、移動式562席、スタンディング形式で1,000人収容。ステージは間口18m、奥行5.4m(3間)から9m(5間)の可変ステージで、ロックや演劇から能などの伝統芸能まで幅広く利用できる。
 小音楽ホールは、群馬県内初の高音質な音楽専用ホールで、413席、舞台間口12m、奥行き7m。室内楽やリサイタルに適し、木のぬくもりに包まれた上質な音楽空間で、品格の高い、音楽の殿堂と呼べるホールとなる。
 スタジオは全9室で、最も大きなメインスタジオは群馬交響楽団のリハーサルに利用できる。市民の音楽活動の練習場所として創造活動を支える機能を担う。 メインホールの客席間隔は前後95㎝、左右52㎝で、音楽センターよりも前後10㎝、左右5㎝広くなる。女子トイレは音楽センターの3倍程度に増やし、客席・トイレについても他のホールと比較しても高水準な設備にする。
 1階にはカフェ、レストランが計画され高崎産食材を使った飲食を提供する。
 平成28年12月に新体育館が完成すると、栄町の中央体育館が解体され、東口エリアの開発が一気に進むだろう。そうした下準備として、今年度は高崎駅東口と高崎文化芸術センターを接続するペデストリアンデッキや東口周辺駐車場整備、都市集客施設西エリアのビジネスゾーン開発の実施主体づくりも始動する。

●高崎の「文化都市」としての機能を発揮

 高崎市が1月に発表した基本設計によれば、高崎文化芸術センター(仮)は、上信越と首都圏を結ぶ中心都市高崎の「文化都心」として位置づけられている。「音楽のある街高崎」の新しいシンボルとして、新しい都市文化をエキサイティングに生み出していく都市集客施設であり、多様なジャンルの音楽や舞台芸術を「鑑賞、創造、情報発信」する場となっている。
 施設レベルは国内最高水準と見られており、日本を代表する文化芸術拠点として、高機能な舞台装置と質の高い音響水準となっている。また群馬交響楽団の拠点ホールとしての役割を果たし、リハーサルスペースの確保など、群響の一層の飛躍が期待できる。カフェ・レストランやアートラウンジなどを設け、公演開催日だけでなく日常的な賑わいも創出し、練習風景の見学など都市観光を楽しめる場所にもなりそうだ。
 高崎文化芸術センターに隣接する西エリアのパブリックゾーンは、再開発ビルとして整備が予定され、平成27年度は開発の母体となる組織づくりが本格化する。高崎市は、西エリアに子ども図書館やキッズスペース、経済文化活動のプレゼンテーションスペースを整備し、高崎文化芸術センターと連携した展開を計画している。

●日本代表する「音楽の街」の拠点に

 昭和36年に完成した群馬音楽センターの「ときの高崎市民之を建つ」碑に込められた歴史を継承しながら、音楽センターの施設的な限界によって公演が激減したために生じた高崎の芸術文化の空白を取り戻し、市民の文化力や感性を育み、高崎発の音楽や舞台芸術を国内外に発信するクリエイティブな場とされている。
 高崎文化芸術センターは、上信越や北関東を代表する文化芸術施設として、広域的な視点での事業や活動を行い、高崎の都市としての創造力、ブランド力や集客力を高めていく施設となる。
 メインホール、小ホールとも客席の前後、左右の間隔が広く、座り心地の良い椅子を選定する予定で、ゆったりと音楽を楽しめる。音楽センターの客席は窮屈感を感じさせていることから、音質と快適性を備えた新ホールの完成が待ち遠しいという声もある。

東口エリアが大変貌

高崎駅東口から高崎文化芸術センターまで、ペデデッキで接続
●高崎駅東口駅舎とペデデッキでつなぐ

 高崎市は、高崎駅東口から高崎文化芸術センターまで、ペデストリアンデッキで接続する計画で、平成27年度予算に調査費用を盛り込み、群馬県と協議を進めている。文化芸術センターまで延伸するペデデッキは、延長約350mで、高崎駅東口線(東毛広域幹線道)の中央分離帯の上に設置する計画だ。ペデデッキを計画している区間の道路幅員は6車線となっている。中央分離帯の上にペデデッキを建設するのは珍しいケースだ。

●計画が進む駐車場整備計画で高崎駅東西を一体化

 高崎市は、文化芸術センターの駐車場を周辺に分散させて整備していく考えをこれまでに明らかにしている。高崎市の当初案では、文化芸術センターの来場者用の駐車場については、西側に隣接する再開発エリアに1,500台程度を確保する計画だったが、こうした文化施設の特徴として、公演の開始時間、終了時間の短時間に車両が集中するので、1カ所ではなく、周辺も含めて検討されている。富岡市長は、東口線の道路北側に一定規模の駐車場を新たに整備していく考えを示しており、市は地権者との協議を進めているようだ。協議が整えば、詳細が発表されることになっている。
 現在、高崎駅東口周辺で、市に届け出ている駐車場は、都市整備公社のイーストパークや民間の駐車場など10カ所余で、駐車台数は約5千台余となっている。規模の大きな駐車場はLABI1高崎駐車場1,000台、高崎駅東口駐車場500台、ココパルク800台、イーストパーク396台、メディアメガ駐車場400台など。
 高崎駅東口の既設駐車場は、鉄道利用者に便利で駐車時間も長いため、現在でも満車になっている時間帯が多い。文化芸術センター来場者用の駐車場として、受け皿になるのは難しい面もある。
 音楽センターで行われる群響の定期演奏会や松竹大歌舞伎など人気の公演では、城址地下、城址第二、高松地下の各駐車場の合計700台が満車となるので、事業内容が幅広い文化芸術センターでは、相応の駐車場を考慮しておく必要がある。高崎駅西口には新体育館とイオンモールの大型商業施設が計画されているので、高崎駅東西の駐車場需要はこれから切迫する可能性が大きい。
 また西口エリアに駐車して東口エリアへ、またその逆と、駅東西の回遊性がこれまで以上に高まることになるだろう。利用者の立場からは駐車料金の割引が求められるので、駅東西で共通して使え、中心商店街の買い物客まで含めた特約システムを視野に入れてほしいところだ。

●進展する業務機能の集積とマンション需要の増大

 高崎駅東口は、昭和50年代後半に上越新幹線開業に伴う新駅舎建設と周辺整備でオフィスビルの開発が進み、現在までに北関東屈指のビジネス機能が集積した。駅西口エリアは歴史的な商都として発展してきた商業地域で、高崎は駅東西でそれぞれ特色を持っている。また、駅の両側がともに発展している都市は珍しいとも言われ、高崎の都市力をうかがわせている。
 東口は業務機能をベースに、最近では商業・住居が混在して開発が進んでいる現状もある。本誌の平成26年2月号などで特集してきたように、〝駅ちか〟居住の利便性を求め、高崎駅東西でのマンション開発が進んでいる。取材の中で、新体育館、文化芸術センター、イオンモールの大型商業施設の計画が、マンション需要を誘導したこともデペロッパーから聞こえていた。
 これから進行するマンション計画では、平成27年度からココグランの北側に「高崎駅東口第九地区優良建築物等整備事業」が見込まれている。共同住宅の予定で、高崎駅東口からペデデッキで接続される。
 マンションによる都心人口の増加も高崎の発展に不可欠なものであり、駐車場も確保しなければならないなど、東口の開発は多面性を持っている。また、これから造成される高崎スマートIC産業団地と連動したビジネス機能の高度化が、東口エリアの最重要課題であり、文化芸術センターとツインになる西エリア「パブリックゾーン」の事業進捗が待たれるところだ。

●土地利用の見直しや不動産市場に期待感

 高崎の利便性と新体育館や高崎文化芸術センターの整備計画の発表は、少なからず地価の動向にも影響を与えている。積極的な都市開発を高崎市が示したこともあり、群馬県内では、高崎駅の東口エリアから、地価の上昇が始まった。
 平成24年初頭までの動向は、景気の不透明感が強いこともあり下落傾向であったが、マンションなどの住宅需要は底堅く、用地を物色する業者が増え、なかなか用地を取得できない状況が生まれてきたという。〝駅ちか〟のオフィス物件にも動きが見え始めた。特に、高崎駅周辺オフィスや駅を利用するビジネスマンをターゲットとした飲食テナントの需要が高崎駅西口エリアで増加し、主要な通りに面して居酒屋等の飲食店の出店が相次いだ。
 商業地域では、東口の栄町の地価がいち早く対前年比がプラスとなったことは、高崎文化芸術センターなど都市集客施設や、東口から高崎スマートIC産業団地に至る開発への期待感を表すものと言えそうだ。
 高崎市では、東口エリアに「高崎駅イーストサイト地区計画」を定め、用途と高度利用の誘導をはかっている。

(商工たかさき・平成27年5月号)