フィルムコミッションで高崎の魅力再発見!

横山秀夫・吉永南央のヒット作がNHKでドラマ化!

『64』ロケ 高崎電気館前

高崎をロケ地としたテレビドラマがこの4月から5月にかけて一挙2本、NHKで放送されている。どちらも高崎に縁のある人気作家二人による原作のドラマ化だ。吉永南央著『紅雲町珈琲屋こよみ』と横山秀夫著『64』。映画制作者達にとって高崎はどう見られているのか注目してみた。

「商工たかさき」 2015/5号より

●映画を生み出す気風のあるまち

 紅雲町珈琲屋ごよみ

 映画のロケ地やエキストラを提供するフィルムコミッション(FC)は1950年代にアメリカでスタートした。その同時代、高崎でもFCの原点ともいえる映画撮影が行われている。そう、群馬交響楽団を題材にした映画『ここに泉あり』(1955年封切)である。高崎市民はエキストラや炊き出しなどボランティアとして大いに活躍したと聞く。どうやら高崎は、映画を生み出す気質が元々備わっているまちなのかもしれない。
 高崎フィルムコミッションが設立されたのは平成14年のこと。業務は昨年4月、運営母体が高崎市からNPO法人シネマテークたかさきに移管された。同NPO代表の志尾睦子さんは「映画祭を通して監督や映画関係者と今までの繋がりがあり、FCが浸透しやすい良い状況です」と話す。またFCを通して「今まで気づかなかった高崎の魅力を、映画制作サイドから教えてもらいました」と、思いがけない収穫があったという。

●ロケ地・高崎の魅力とは

 東京からわずか1時間で来られる利便性の高い高崎。ここを拠点に更に新潟、長野へ“雪景色”の撮影にも行けるという立地条件は魅力だ。更に、適度な田舎感と都会らしい風景を持ち合わせている高崎は「あらゆる都市になりうる街」で、映画やドラマ制作者にとって機能的な街といえる。
 例としては、『相棒―劇場版―絶体絶命!42.195㎞ 東京ビッグシティマラソン』(2008年公開)のゴールシーンだ。高崎市庁舎が東京都庁に違和感なく見立てられていた。「高崎で撮影しているが、高崎とは分からない。それは残念なことではなく、高崎のひとつの魅力だった」と気づかされたという。
 昭和と現代の両シーンが撮れるまち。東京のごちゃごちゃした感じからのどかな田園風景まで表現できるまち。高崎市民にとってはすぐには腑に落ちない話かもしれないが、そんな都市が東京から手の届く場所にあるのである。高崎FCの大きなセールスポイントは「あらゆるシーンの撮影が可能な、映像になりうるまち」ということなのだ。
 これまでFCとは、制作サイドの要求に応える受け身のボランティア事業だったが、今後は「積極的に高崎をPRできる新しい手法のひとつ」と変わりつつある。
 一方で、現場での苦労ももちろん多い。店舗や個人宅は借り切るのが難しく、過去には市の担当者が自宅を提供したこともあった。急なエキストラの依頼に奔走し、最終的にNPOスタッフ自ら撮影現場に飛び撮影に臨んだこともある。また、制作サイドがFCありきの頼り切ったスタンスであれば、双方の努力があっての協力態勢であることをしっかり伝えていくことも必要だ。

●フィルムコミッションの可能性

 今後の課題は、“高崎は映画やドラマのロケ地として活躍していること”を広く市民に知ってもらうことだ。
 4月29日に放送されたNHKドラマ『紅雲町珈琲屋こよみ』(原作・吉永南央)の原作舞台は高崎と取れる北関東のまちという設定になっている。物語の主人公・草(そう)の店を訪れる客達とそこにまつわる人々とのふれあいがストーリーの柱。撮影では、白衣観音や高崎公園、音楽センターなどが風景やロケ地として登場し、「もしや高崎?」と気づいた市民も多いはず。2,000人収容の音楽センターのコンサートシーンでは、老若男女200名のエキストラが参加し、席を数回移動して角度を変えて客席を撮影。CGで満席のホールを再現した。
 4月18日からNHK土曜ドラマで放送中の『64』(原作・横山秀夫)も高崎商工会議所や高崎電気館などがロケ地となった。昭和64年のシーンを撮影した際は、エキストラには当時の服装らしいものを用意してもらった。映画『半落ち』や『包帯クラブ』で市役所が大々的に撮影現場となったのは記憶に新しく、子どもたちに人気の戦隊物の撮影といえば“阿久津水処理センター”が定番だ。すでに、高崎は映画を作る地盤ができているといえる。

●映画、ドラマが生まれるまち・高崎

 「馴染みの風景がフィルターを通すと違って見える。映像化することで感じられる高崎の新たな魅力を市民にも感じてほしい。きっと高崎が誇れるまちになるはず」そう志尾さんは考える。
 FCは、映画を作る側、見る側、双方の目を持ち合わせていることでよりよいロケーション選びが可能だ。日常の風景に、映画というフィルターを通して、別の角度から光が当てられた時、まちは新しい魅力を発揮し始める。故郷の街並みや山々を画面やスクリーンで見た時、そこは「知っているようで知らない、懐かしくも新鮮な舞台」に変わるのかもしれない。
 「高崎をロケ地とした映画がシネマテークたかさきや電気館で上映されたら最高です」と志尾さん。映画『振り子』(原作・鉄拳)は高崎電気館や中央銀座商店街がロケ地となり、この4月に電気館で上映された。
 FCの力で、高崎が今後どう進化するのか。我々市民はその渦中にあって、希望すればエキストラに参加することもできる。そんなチャンスを持ち合わせていることを、映画のまち高崎の空気を感じながら大いに楽しみたいものである。



(商工たかさき・平成27年5月号)