お客様に寄り添い100年 馴染の和菓子店として次代へ

(2018年04月28日)

鉢の木七冨久

業界をけん引する全国レベルの名匠

老舗和菓子店『鉢の木 七富久』の3代目・石川久行さんは、季節の情緒を写す創作的な和菓子のほかに羊羹、最中等、伝統的で普遍的な和菓子の製法を守り、全国和菓子協会が優れた技術者を認定する「選・和菓子職 伝統和菓子職部門」の第1回の伝統和菓子職認定者「選・和菓子職」を受賞した。初回の受賞者は全国でたった6人、同店の伝統銘菓“鉢の木”が全国6銘菓に認定された。現在は、選・和菓子職の審査員を務める。

今春に開催された「第27回全国菓子大博覧会・三重 お伊勢さん菓子博2017」では、15名の審査員の一人として全国から集まった2,300種の和菓子の審査に加わった。その他にも、日本菓子業振興会大講習会、日本菓子研究会東和会大講習会、大阪二六会大講習会等で、140人〜160人の職人を前に講師を務めたり、地元のデイサービスや公民館などでボランティアとしてお菓子作りのセミナーを開催したりと40年以上積み上げてきた和菓子職人の技術と感性を生かし、後進の育成や和菓子の魅力の伝承に余念がない。

「お菓子より自分が目立ち過ぎては、次の店主がやりにくいですよね」と反省しきりだが、しなやかな発想と行動力は職人の域を超え、和菓子業界をけん引するリーダーとしての存在感を放っている。

 

3代それぞれの店主が気骨と個性でつないだ100年

『鉢の木 七冨久』は、大正6年(1917)10月創業。今年で100年目を迎える。大正7年には、現在の赤坂の地に旧中山道に面して店舗を構えた。初代は3代目石川久行さんの祖父の久貞さん。仙台は伊達藩の足軽の家系で、子どもの頃、あまりのきかん坊ぶりに、弁護士の父に中尊寺の小坊主にされそうになったという。横浜でコック見習いを始めたが、英語ができないからと和菓子店に修行に入った。地方の和菓子店に技術指導をするようになると、各地を巡り、高崎で出会った女性を見初めて結婚。夫婦で和菓子店を開いた。

2代目の久允さんは、群馬県菓子技能士会を立ち上げた人。地域の顧客のニーズに応じて、半生菓子やゼリー、おせんべいなどを多く作ったという。息子の久行さんに修行先を勧めたのも2代目だった。

3代目の久行さんは、東京農業大学栄養学科を卒業後、京都の老舗和菓子店「塩芳軒」の店主で京菓子職人の名匠と言われた故・高家謙次氏の下で和菓子作りの基本を学んだ。町屋の屋根裏部屋で10人の弟子が共同生活をしながら、師匠の技術を見て覚えるような修業時代を送り、「有平糖」という砂糖でつくる飴細工の技術も習得。煮詰めた飴を熱すぎず、冷めすぎずの絶妙なタイミングで引くと宝石のような輝きを放つ有平糖は、春夏秋冬、花鳥風月の情緒を豊かに表現する「有平細工」として伝わった。今ではその伝承者は数名となり、久行さんは飾り菓子や奉納菓子など大物細工を手がける第一人者として知られる。

 

3代にわたって大切にしてきた菓子の素材と高崎の人情

「職人というのはわがままで、3代がそれぞれ自分のやりたいようにお菓子作りを展開してきました。私が店に入った時は、父は私の好きなようにやらせてくれました」と感謝する久行さん。それでも、小豆、砂糖、もち米など菓子作りの素材は、初代のときから変わらず同じ生産者や取引先のものにこだわり続けている。

また、同店を代表する伝統銘菓「鉢の木」は、初代の久貞さんが考案したもので、代々の店主が工夫を加えながら、時代に応じた味わいに仕上げてきた。求肥と淡雪かんを使ったしなやかで弾力のある食感。近年、和風マシュマロとしてファンが増えている。

高崎の佐野地域を舞台に、鎌倉武士・佐野源左衛門常世が旅の僧侶を真心込めてもてなす謡曲「鉢の木」をモチーフに、そこに描かれている正直な心や忠義の心、内助の功など“高崎の人情”を伝えたいという想いが3代にわたり継承され、同店のお菓子作りの芯となっている。

謡曲「鉢の木」が1月の演目であることから横浜能楽堂などからも引き合いがある。

 

お客様のご愛顧に感謝。従業員や家族に支えられ次の100年へ

四季折々の移ろいや風物詩を表した20種ほどの上生菓子が常時並び、店内は季節感にあふれている。

「私が嫁いできた時は、進物用のお菓子を買いにくるお客様の“お菓子が高価で自分の口には入らない”という声を聞きました。ですから、誰でも1個から気軽に和菓子を購入できるよう、商品構成も店構えも、敷居の低い和菓子店を心がけてきました」と話す久行さんの妻・貴子さん。快活で気働きのある人柄で、“内助の功”を発揮してきた。その視線は常に、お客様をはじめ従業員や家族に向けられている。

中学を卒業して3代にわたり店主を支えてきた熟練の職人さん。一人前の和菓子職人をめざし、日々精進する従業員たち。そして、いずれ4代目を継承する息子の久央さん。それぞれの一途な想いや献身に支えられ、今日の同店がある。

そして“和菓子は美味しい、和菓子作りは楽しい”。久行さんは、次代を担う和菓子職人たちに、自分の持てる技術や想いをつなぐことで、次なる100年へと続く一歩を後押ししていく。

代表取締役  石川 久行さん

高崎市赤坂町73
TEL:027-322-6001

高崎商工会議所『商工たかさき』2017年11月

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