旧新町紡績所が国の重要文化財に

(2015年5月15日)

写真を拡大工場本館
写真を拡大倉庫
写真を拡大煙突基礎

15日に文化審議会が答申決定

 旧新町紡績所が国の重要文化財に指定される見通しとなったことが、15日にわかった。
 15日に行われた国の文化審議会文化財分科会で、国宝1件、重要文化財10件(新規9件・追加1件)の指定を文部科学大臣に答申することが決まり、このうち新たに指定される重要文化財の中に旧新町紡績所の建物5棟が上げられた。
 旧新町紡績所(現クラシエフーズ新町工場)は、富岡製糸場の5年後、明治10年に操業した官営工場で、佐々木長淳を中心に、大工の山添喜三郎ら日本人の手により初めて建設された洋式工場。屑糸、屑繭を原料にした紡績工場で、政府の威信をかけた大事業で、繊維産業の発展に大きく貢献した。その後、民間に払い下げられ、カネボウなどを経てクラシエフーズ新町工場となっている。場内は、当時の工場や倉庫などが保存されており、現在も同社工場として使用されている。
 国の重要文化財の対象となるのは、工場本館(明治10年、明治中後期に増築)、機関室(明治31年頃)、修繕場(明治10年頃)、倉庫(明治30年頃)、二階煉瓦庫(明治27年頃)の5棟で煙突基礎、煙突銘板、工務室(明治後期頃)、旧男工控室(明治後期頃)が一体的に価値を持つ施設等として附(つけたり)となっている。
 明治期の稀少な工場建築がほぼ完全な規模で残り、明治初期の建築技術、絹糸紡績の発展過程を知る貴重な資料として、歴史的な価値、学術的な価値が認められた。
 平成24年にクラシエフーズ株式会社から高崎市に対し、建造物の保存について相談があり、高崎市では、国重要文化財指定を視野に、年代の特定や実測など詳しい調査を行ってきた。  高崎市とクラシエフーズは、報道機関に対して現地説明会と記者会見を行い、調査を担当した県文化財保護審議会専門委員の村田敬一さんが旧新町紡績所の工場建築の特徴について解説した。クラシエフーズでは、現状のまま操業を継続し、一般公開など今後の活用について高崎市と協議していく方針。
 今回の文化審議会の決定により、全国の国宝・重要文化財は2437件、4732棟(うち国宝222件、272棟含む)となる。高崎市の重要文化財(建造物は)榛名神社に次いで2件目で、近代の文化財としては初めて。富岡市長は「日本の近代化を象徴する文化財が本市に奇跡的に残り、その価値が認められたことを誇りに思います。これを長く残してきた所有企業、関係者の敬意を表したい。今後は所有者と協力しながら保存活用に力を注いでいきたい」とコメントしている。
 工場横の温井川ではレンガ積の護岸も残っており、高崎の近代史を知る貴重な場所となりそうだ。