チャレンジャー音響株式会社

(2008年8月)

チャレンジャー音響株式会社入り口付近の巨大な石。素人には分からない車道のわずかな振動がお店に伝わらないように敷き詰められたもの

チャレンジャー音響株式会社試聴室のオーディオ機器。写真左のスピーカーはペアで525万円、中程右のスピーカーは997万5千円、中央左下のパワーアンプが493万5千円

チャレンジャー音響株式会社武井功社長

チャレンジャー音響株式会社武井陽介さん

1000万円のスピーカーを展示している

高級オーディオ専門店

チャレンジャー音響㈱

 

前月、本誌7月号から始まった、シリーズ「勝ち残る専門店」。今回は、高級オーディオ専門店「チャレンジャー音響」を営む武井功さん、陽介さん親子をご紹介しながらこの商売を見つめてみたい。


 接客も口調も、凛とした店造りも異次元でハイレベル。世界15カ国・125社の特にハイエンド製品を得意とし、徹底したアフターフォローを売り物に国内のほんの一握りのオーディオマニアから支持されている。


 取材者は、当誌広報委員でオーディオマニアでもある井上雅行さん(㈱ラジオ高崎社長)と、20年前までは同業者としてオーディオ販売を行っていた同委員の根岸良司さん(㈱トレンディ会長)にお願いした。


●こんな商売があったとは

 「こちらのスピーカーは、左から300万円、500万円、900万円・・・、このメインアンプは300万円です」。プロのミュージシャンや音楽関係の専門家が使うのであれば分からないでもないが、お客さんは普通の〝高級オーディオマニア〟なのだ。一般客をターゲットにしたこういう世界が存在するというか成立していることに驚く。更にきわめつけは、差し出されたオーディオケーブルのパンフレット。「こんな製品〝も〟ありますが」、と示されたのは2・5m(ペア)で353万円のオーディオケーブル。


 このチャレンジャー音響にはまだ驚くことがある。小売業なのに、店舗は大通りに背を向けて建ち、しかも入り口には直径1mもあろう巨大な平石が全面に敷き詰められている。そのために、駐車場としては使い勝手は悪いのだがそれには訳がある。(写真)


 いずれにせよ、どれもこれも想像をはるかに超えたお店である。


●音響市場が減少の中、「チャレンジャー音響」は売上増

 日本レコード協会の統計によれば、「音楽ソフト」の総生産高は98年の6、075億円をピークに、その後下降の一途をたどり、昨年07年は3、911億円と最盛期と比べ36%も減少。


 「音楽ソフト」の市場が縮小しているということは、当然、ハードであるオーディオ器機の市場も縮小しているということになる。また、携帯型音楽プレーヤーの普及や最近の住宅事情により巨大オーディオセットは邪魔物扱いされ市場の減少に拍車をかけた。


 ところが、チャレンジャー音響の業績は着実に伸びているのだ。支持されている理由の一つに「完璧なアフターフォロー」が考えられる。遠方への納品には、泊まり込みで出張することもある。家電や家具の梱包の荷解きとは分けが違う。


 スピーカーのわずかな角度や既存のアンプや他の機器との相性など、それぞれの機器の特性を最大限に引き出す〝チューニング〟を行うためだ。「お客さんの望む音を出すには、2日や3日は充分かかりますね」。そして1ヶ月後位には再度確認に向かう。


●技術+情熱=生き残り

 世界中の逸品を使いこなす武井さんの技術と、良いオーディオで良い音楽を提供したいという情熱がチャレンジャー音響を勝ち残らせた。


 ある評論家を通じて、「納得させられるのはチャレンジャー音響しかない」と紹介された広島のお客とは長いつき合いを続けている。


 かつての同業者である根岸さんいわく「チャレンジャー音響のような極めて専門性の高いオーディオショップが減少した結果、必然的に商圏エリアが広くなる」という。


 「単に売るだけなら売上ももっと伸びるのでしょうが、アフターフォローが対応しきれなくなりますから売上も昔から大して変わりません」と武井さん。


 高価なものだから当然といえば当然かもしれないが、納得して購入してもらうために、試聴室の設備は当然のこと、扱う商品は全て貸し出し、お客さんの既存のオーディオシステムに組み込んで試してもらう。試聴室に案内された井上さんも「家ではどうしてもこういう音が出ない」と〝マニア〟を納得させる。


 チャレンジャー音響の商品にはほとんどプライスカードがない。値段が高いから良いものだという先入観で商品を見て欲しくないからだ。


●なぜこのご商売を

 もとはオーディオ装置や放送機器など、業務用音響機器の設計などを行うエンジニアだった武井社長。海外製品を真似て全く同じオーディオを作っても、出てくる音は似ても似つかない。音楽に対する歴史や趣味性の違いなど目に見えない技術の壁を痛感し、やがて作る事をあきらめ、ならばこの素晴らしい海外のオーディオをせめて販売しようとこの道に入る。


 最近は営業のほとんどを任されている息子の陽介さん。「これらの高額なオーディオ機器は、例えるなら「F1」ですよ。最高の部品を更に選別して作られています」。


「F1」を扱うには世界最高峰のドライバーもメカニックも必要だが、武井さん親子とスタッフは見事にこのご商売を成功させている。陽介さんはさらなる飛躍に向け新たな試みに取り組んでいる。


チャレンジャー音響㈱
所 在 地:高崎市上大類町979-1
営業時間:午前10時~午後8時
定 休 日:水曜日
電  話:027-326-8450


高崎商工会議所『商工たかさき』2008年8月号

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