匠の技と経営理念を受け継ぐ

(2009年7月)

匠の技と経営理念を受け継ぐ左:西澤弘明社長、右:茂会長

匠の技と経営理念を受け継ぐ土壁サインの作業を行う左官職長の南雲賢一さん

西澤工業株式会社

 今年4月に西澤工業の四代目社長に西澤弘明さん(45歳)が就任した。西澤工業は明治時代に、近江出身の初代・徳三郎さんが赤坂町で創業。代々左官職人として営み、二代目正男さん、三代目茂さんへと技術が受け継がれてきた。左官一筋に歩みながら現在は建築・塗装工事まで行い、個人住宅から大規模商業施設、公共施設の工事まで幅広く手掛けている。

 弘明さんが子どもの頃は十数人もの職人が住み込み、家族同様に育った。職人気質の個性的な人ばかりで、「みんなの気持ちをまとめていくのは大変な仕事だなあ」と祖父、父の背中を見ていた。祖父の正男さんからは「お前は長男だから」と言われ、「そのうち会社を継ぐのかなあ」と漠然と思っていた。大学を卒業後都内で広告・印刷関係の会社に就職したが、平成元年結婚を機に高崎に戻り家業に従事する。

 会長の茂さんは32歳で父正男さんから社長を継いだ時「事業をなんとか成功させたい」と強く決意した。会社には茂さんの弟も4人おり、兄弟で力をあわせて伝統ある西澤の技術の完成をめざした。

 茂さんは「息子には好きな仕事をさせてやりたいと思っていた。しかし受け継ぐ者がしっかりしていないと技術も企業も途絶えてしまう」と西澤の伝統を息子に託した。弘明さんも、祖父や父の気持ちに応えようと、仕事を覚えるために何でもやった。現場はもちろん他社に出向することも辞さなかった。

 西澤工業では会長親子含め11人の血縁者も勤務。匠の技能を持つ職人も西澤ファミリーの一員。家族や社員間の強い絆が発展のパワーになっている。  「父は会社の内外で大きな信用があることを実感した。経営の理念を受け継いでいきたい。技術は、西澤のなかで確かに伝わっている。これからも全国レベルの技術者を育て、日本文化である土壁・左官技術のすばらしさを多くの人に知ってほしい」と弘明さんは言う。

ちょっと一言

 西澤工業の技術は、土蔵など歴史的建造物の保存再生にも生かされている。白壁、なまこ壁の仕上げは逸品だ。自社開発の天然土壁材「かぐや姫」は、人と環境にやさしい「エコ壁」として、都内の高層ビルの内装や海外でも施工され、西澤の技術の粋を継承している。

西澤工業株式会社
代表取締役会長 西澤茂
代表取締役社長 西澤弘明
住所:高崎市上並榎町445
電話:027-362-6234

高崎商工会議所『商工たかさき』2009年7月号

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