映画のある風景

3. 何気ない風景:烏川河川敷

志尾 睦子

映画のある風景

 近年、高崎が映画のロケ地として脚光を浴びている。映画の舞台として高崎という地名がそのまま出てくる事自体は少ないが、映画のほぼ全編が高崎をロケ地として撮影された作品も数多くあるし、一部のシーンが高崎で撮影される作品はかなりの数にのぼる。

 2007年9月に公開された『包帯クラブ』は、老若男女を問わず広く市民に、高崎が映画のロケ地としてとして頻繁に使われていることを浸透させるきっかけとなった。

 『包帯クラブ』は、天童荒太の同名小説の映画化で、主演が柳楽優也さんと石原さとみさん。傷ついた人の傷ついた場所に包帯を巻いて手当をする。そんな活動をする高校生たちの物語。高崎でほぼ全編撮影された。

 東映の配給作品で全国公開だったが、高崎はご当地ということで、全国で一番の観客動員数を弾いたという。映画のロケをサポートしている高崎フィルムコミッションではオリジナルのロケ地マップも作成し、上映も大いに盛り上がった。

 私自身は撮影の場面に遭遇する事はなかったけれど、あの当時はそこここで『包帯クラブ』の撮影エピソードを耳にしていた。そして、その映画が公開されるとシネマコンプレックスに足を運んだ。

 私は、映画を観始めて直ぐに奇妙な感覚に陥った。見慣れた風景が映画の中でどうも浮いて見える。高崎という街の姿がいたる所に出てくるのはいいのだが、わざとらしさが見えてしまう。というか、勝手にそう感じてしまう。

 デパートの屋上に置かれた「ぐんまちゃん」の遊具、大きく映しだされる達磨や白衣観音にどうも自然感がない。そんな気がしてしまう。物語に入り込んだと思ったら、随所に差し込まれる「高崎オブジェ」に気をとられてしまい、一気に気持ちが冷めてしまう。斜に構えた見方なのかもしれないが、そう見えたのだから仕方がない。

 そんな繰り返しの後、ドキッとするシーンに出くわした。ある少女の哀しみと失意の原因となる出来事の「葬式をする」というシーンだった。原因となる廃墟にあったソファーやらを運び出し、それらに包帯を巻いて燃やすのだ。冬の夕暮れ時、枯れた木々を背景に烏川の河川敷に佇む彼らの姿が、過去を燃やす火によって照らされる。

 私はこのシーンで一瞬にして気持ちを掴まれた。日が暮れるまで河川敷やそこらの草むらで遊んでいた頃を思い出した。高校の帰り道、河原で友達と尽きない話をしていた事を思い出した。映画の中に自分がまさしくぴったりはまる瞬間は、こんな風に何気ない風景の中にあった。これこそが映画だとその時に思った。

 目に見えないものを写し取るのが映画であって、その中で街の姿が生きてくるのが一番いい。どこにでもありそうで、ここにしかない。それがこのワンシーンにつまっていた。

志尾 睦子(しお むつこ)
群馬県立女子大学在学中にボランティアスタッフとして高崎映画祭の活動に参加。群馬県内初のミニシアター「シネマテークたかさき」の総支配人を務めると同時に、日本を代表する映画祭である高崎映画祭総合プロデューサーとして活躍。

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