井上邸の保全工事に着工

(2009年11月19日)

工事のため防護壁で囲まれた井上邸工事のため防護壁で囲まれた井上邸

庭園も再生し恒久的保存をはかる

 高崎市は、高崎市美術館に隣接する八島町の旧井上房一郎邸を保全し、美術館と一体的な活用をはかるため、同邸の保全工事に着工した。

 同邸は、高崎市の文化振興に尽力した実業家・井上房一郎氏(1898・明治31-1993・平成5)が昭和二十七年頃、交流の深かった建築家アントニン・レーモンドの東京笄町の自宅を実測して建築した。レーモンド建築を現在に伝える数少ない木造建築物となっている。高崎駅至近の場所で緑豊かで閑静な空間を作る庭園は、井上氏が設計した。平成十二年に高崎市都市景観重要建築物等として指定を受けている。

 旧井上邸では、敷地を囲う塀が傾き、倒れる危険があるなど、外構の老朽化がかねてから指摘されていた。高崎市は、美術館と一体的なデザインで外構を改修する。工事に伴って伐採される植裁は復元し、邸内の景観を維持する。また井上氏が設計した庭園も荒れが目立つため、往時の写真をもとに、できる限り復元していく。旧井上邸は、景観重要建築物として、現在の姿を維持保全してことを、市では大原則としている。庭園内の仏間と茶室の二棟については、特に茶室の損傷が激しいが、復旧に力を尽くしたいという。

 高崎市美術館との一体的利用や管理面から、旧井上邸敷地内への出入りは、美術館内を経由する。現在、美術館側も出入り口となる風除室の工事が行われている。今年度末には、全ての工事を終え一般公開される予定。高崎市美術館の展覧会とあわせて見学してもらうため、同館入館料が必要となる予定。名称は「旧井上房一郎邸」がふさわしいと考えている。

 来年度以降の旧井上邸の市民利用の方向は現在のところ未定。現在の建築や消防の基準では、旧井上邸の家屋は、いわゆる既存不適格で、集会や展覧会など人が集まる建築物に適合しない。適合させるためには、家屋改修を要し、現在の外観や構造を変えてしまうことになる。市では、現在の井上邸を恒久的に維持保全することを最も重要とし、「建物の構造に手を加えれば、旧井上邸の価値が無くなる」と考えている。そのため、「見学は可能だが、これまでのように講演会や展覧会などの目的で市民に貸し出すことは難しい」という見方も出ている。市では、一般公開のあり方、市民貸出については、詳しく検討し年度内に方向を決める予定。

 旧井上邸は、平成十四年三月、税金の滞納のため同邸が公売になり、井上氏の理念を受け継ぐ市民財団・高崎哲学堂設立の会が、3億1000万円で落札。「高崎哲学堂」として一般に公開され、市民の文化活動の場として活用され、高崎市美術館との連携事業も行われていた。平成二十一年度末に高崎市が取得し、二十二年度に同邸の整備、二十三年度から公開する計画を示していた。敷地面積は1669・6㎡、家屋243・1㎡。

高崎の都市戦略 最新記事

勝ち残る専門店

グラスメイツ
グラスメイツ
メガネ店の店員も買いに来るメガネ専門店
辰巳
辰巳
印傳と陶器の専門店/県外からもお客様
有限会社三洋堂
有限会社三洋堂
パソコン全盛時代に書道のおもしろさを伝える

すべての記事を見る