全国都市緑化ぐんまフェア

まちなか会場を成功させた高崎の市民力と都市力

 三月二十九日から前橋市、高崎市をメイン会場に行われていた第二十五回全国都市緑化ぐんまフェアが七十二日間の会期を終え、八日に閉幕した。

 全国初のまちなか開催となった高崎会場は注目を集め、修景、運営など今後の緑化フェアの方向を示しただけでなく、緑化により都市のポテンシャルが高まることを実証した。

高崎への来場者は180万人

 高崎市は、緑化フェア高崎会場の会期中動員数を延べ186万人と発表し、目標の100万人を80万人上回った。

 群馬県が発表した高崎会場への来場者数32万5千人で、これは県が所轄したもてなし広場・城趾公園会場の数値。前橋会場は、前橋公園63万1千人、敷島公園46万7千人。前橋会場の約3分のとなっている。

 もとより、まちなか会場の来場者数をとらえることは難しいが、高崎市の発表した186万人の内訳は、連雀町と八島町で計測したカウント合計が109万6647人。もてなし広場・城址公園が30万5951人。シティギャラリーの展示が、18万975人。コアホール、元気ステージ、高崎扇亭など3万2770人。来場者を合計すると、まちなか会場の来場者は延べ161万6343人。市内18カ所のサテライト会場の来場者は24万4467人。まちなか会場とサテライト会場の合計で、高崎会場は延べ186万人の来場者となった。

実質的には300万人の来場者!その経済効果は70億円か?

 高崎会場は、「駅を降りたらフェア会場」をうたい、高崎駅中央コンコースから西口ペレデッキ、駅前広場、ガーデンカフェへと緑化修景が誘導する。企業協賛緑化として、高崎高島屋、スズラン高崎店にも緑化や飾花が施されたり、関連催事が行われ、高崎駅の乗降客や百貨店への来客数も「まちなか会場」来場者に含めると、一日当たり2人から3万人、会期中に延べ150万人から200万人が来場者として上乗せされる。ひとくちに300万人から350万人の来場者と見ることもできそうだ。

 この来場者が1人あたり最低2000円の消費をしたとしても約70億円の経済効果があったといえる。

女性・年輩・ファミリー層を集客/リピート率高く来場者に好印象

 県や市が来場者に実施したアンケート結果では、緑化フェアの評価は上々。
 群馬県は、三月二十九日から五月二十日まで前橋公園会場、敷島公園会場、高崎会場(城址公園周辺)に来場した約1万人のアンケートをまとめた。フェアの印象は、「大変よい」と「よい」が全体の約96%を占めた。緑化意識の高まりは、「高まった」と「やや高まった」で全体の96%。次年度以降への継続は、「是非継続」と「規模縮小しても継続」が全体の99%になり、継続の要望が強いことが示された。

 高崎市は、四月二十七日から五月三十一日に実施した来場者アンケートで、929人の回答を得た。来場者は女性が72%。市内が47%、市外が52%と、半数が高崎市外からの来場者で、県外が13%だった。年代では50代、60代が多かったが、若年層や家族客など幅広い年齢層を集客した。

来場者の半数がリピーター

 ゴールデンウィークに行った調査では、開幕からたった一カ月程度で、既に二回、三回と高崎会場を見学している来場者も少なくなかった。二回目以上が来場者の半数を占めている。「また来る・来てみたい」が94%で、評価が高かった。高崎会場の印象は、「良い」と答えた回答が、まちなか会場78%、もてなし広場73%と七割を占めた。

 楽しかった催しでは、シティギャラリーの展示31%、元気ステージ26%、足湯・寄席21%。行きたい催しは足湯・寄席が33%。高崎会場のサービスは「良い」が67%、スタッフの応対も「良い」が59%となった。高崎会場に来場して花緑への関心が高まったが67%、興味がわいたが27%と本来の目的も達成している。

 高崎会場では、花の模様替えや、時期にあわせた演出を行い、リピート来場を狙っていたが、的を射た結果となった。

まちなか会場を支えた市民力

 市民、企業の協力も大きく、運営ボランティア200人。市民ボランティア230人。花百彩・まちなか自主飾花協力者24件。協力飲食店33店舗。出展協力者100団体、個人80人。参加協力町内会41町内会とすそ野が広い。また協賛企業は140社を数えた。

 高崎駅西口のガーデンカフェ、高崎扇亭などまちなか事業を実質的に運営したのは市民組織のまちなか部会だ。青年商業組織など、まちづくり団体は休み無く駆り出され、ガーデンカフェで毎週末に行われたコンサートやイベントのボランティアスタッフ、出演者は延べ500人以上。緑化フェアにあわせ、おみやげや弁当などの物産が考案されたり、飲食店が特別メニューを用意したりと、まちなか会場は市民力を問う戦いが日々繰り広げられた。

 来場者に高崎を楽しんでもらおう、高崎らしさをPRしようという意識が、まちなかを覆った。こうした重層的な力が、72日間の長期にわたってまちなか会場で発揮されたことは、高崎のまちづくりの大きな糧になっている。組織化された熱い気持ちを無に帰さず、今後も継続させていくべきだろう。

高崎の街中を花と緑でいっぱいに!都市緑化への市民意識が高まる

 全国都市緑化ぐんまフェア高崎会場で使用された花木が、六月十四日に五千五百人の市民に無料配布された。まちなか会場を飾った花木が全て市民の手に渡った。開幕直後から、花木や修景工作物の撤去・廃棄が時流に合わないと懸念する市民の声が聞こえていたが、閉幕後、不思議なことにそうした意見が消えた。大勢の市民への配布や公共施設での再活用で理解が得られ、高崎会場の成功を市民が評価したと考えることができそうだ。

 高崎市では「緑化フェアの状態を維持するには、多大な経費と人力が必要。市民が家庭で花を育て、楽しんでもらい、緑化フェアの意義を深めてほしい」と話す。

 花木の維持管理がフェア終了後の悩みとなったが、地域緑化の担い手も芽吹いている。 高崎駅西口駅前通りに植樹された街路樹を守り、駅前の景観を守っていこうと、緑化フェアをきっかけに、高崎市立南小学校の子どもたちがタカポンキッズを結成した。高崎駅西口線を、高崎のシンボルにふさわしい季節感があふれる通りにしようと、街路樹に落葉樹のモミジバフウが植樹された。木を植えただけでは美しい並木道にはならないと、手入れや落ち葉清掃のボランティアとして子ども達が立ちあがった。

 緑化フェア期間中に行われた結団式では、高崎市の座間愛知副市長は「自分たちの手で自発的に高崎の緑を育ててくれる人たち出てきてくれることが、緑化フェアの本当の目的。花いっぱいの町を自分たちで作っていきたいという子ども達が、これからたくさん手をあげてくれるだろう。街路樹の手入れはたいへんだと思うが、がんばってほしい」とエールを贈った。タカポンキッズの子ども達は「高崎を緑いっぱいの環境の良いまちにしたい。ごみをひろって高崎の環境を良くしていきたい」と決意を語っている。

 閉幕後、まちなかの花壇が撤去されているが、南銀座商店街は、緑化フェアの修景を、ほとんどそのまま残すことを決めた。商店街では、地域と力をあわせて維持管理し、来街者に楽しんでもらおうと考えている。フェア期間中、お客様に、「きれいですね」と声をかけてもらったことが、商店街の大きな励みになった。「花と緑が彩る、歩いて楽しい」商店街づくりを行っていく。

まちなか開催で検証された都市緑化のあり方
市民と企業の協力で西口線の緑化を推進

 緑化フェア高崎会場は、市街地を「高崎・花路花通り(はなみち・はなどおり)」と名づけ、フェア終了後も継続性のある高崎独自の事業づくりが考えられている。閉会式で次期開催地の岡山市にフェア旗が引き渡されたが、高谷茂男・岡山市長は高崎方式のまちなか開催に啓発されたという。東京農業大学の近藤三雄教授は、環境緑化新聞(平成二十年五月一日)で、高崎会場を評価し「拠点公園修景型」から「まちなか修景型」へ進化することが都市緑化フェア本来の目的にかない、開催の意義も深まると力説している。

 今回の緑化フェアで、まちなか会場の象徴となったのが高崎駅西口線。車道・歩道の拡幅、共同溝の設置などの整備が終わり、高崎のシンボルロードに相応しい街路が生まれようとしている。緑化フェアでは、同路線のコンセプトを見せ、「高崎の都市の風格」と「美しく豊かな感性」を備えたシンボルロードが計画されている。高崎市実行委員会は、市民や企業に協力を呼びかけ、協賛企業120社と11人の個人から4688万円の協賛金が寄せられている。  かつて群馬音楽センターが市民の浄財で建設されたように、「市民のまち高崎」の精神に学び、高崎駅西口線も高崎の都市力、文化力、市民力の象徴となる事業だ。

 内外から評価されたまちなか会場を、これからの都市づくりの中で継続し、再構築していくことが求められている。

 また、高崎の今後の都市観光やコンベンションなど推進し、高崎への集客や交流人口を増加させていくための、都市景観、都市デザイン、ビジターへのおもてなし、高崎名物の開発などにつながっていく多くの成果をもたらした。

(文責/菅田明則・新井重雄)

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