オープンモールへのチャレンジ

オープンモールへのチャレンジ市内井野町の「パルク・ハナミズキ高崎」

オープンモールへのチャレンジ長井住宅工業㈱・長井昭雄社長

地域に密着した街づくりを実現できる民間企業

 1年半ほど前市内井野町にできた『パルク・ハナミズキ高崎』という“小さなオープンモール”とも言うべき商業施設が話題になっている。

 今年6月号の本誌で、「イオン高崎と商店街」と題して、出店者の“損益分岐点”から見たらどうなるかを掲載している。商業環境は刻々と変化してわれわれの街も変化していくが、その原因は立地や消費性向の変化だけではない。商業施設の土地や店舗建設に関係する様々な人々の投資など経済的な選択にも大きく影響される。

 今回は、この視点で『パルク・ハナミズキ高崎』という新しい商業施設を見つめながら考えてみよう。

全国の大型モールに出店している企業は力を出しきれていない

 この商業施設『パルク・ハナミズキ高崎』を企画・開発した「長井住宅工業㈱」社長の長井昭雄さん(32)は、この〝オープンモール〟とも呼ぶべき施設について「イオンモール高崎などは超大型のモールですが、このパルクはモールまではいかない小さな小売店舗の集合体というものです。

 形の上では独立店舗の集合体で、企業イメージを高め、個性化、差別化、効率化を融合させ、多額の投資を必要としない施設です」と概要説明する。

 最近、全国各地で建設ラッシュの本格的なイオンなどのモールは、店舗の集積で相乗効果をねらったものだが、目的を果たせない場合も少なく無く、計画だおれのケースも近ごろ見られるようになった。

 モールの運営が厳しい中でこの『パルク・ハナミズキ高崎』の企画については、出店者・地主・不動産業者が手を組んだ〝ある工夫〟がなされていることが分かった。

出店者の独自性を確保しながら初期投資を低く抑える

 「われわれの企画する商業施設は、大手のデベロッパーが企画する大規模な商業施設を建設し、その中に店舗を集合体として入れていくケースとは違います。お店はあくまでも独立店舗で、売上の数パーセントの〝売上歩合〟を徴収する方式もありません。店舗建物所有者(家主)への家賃はありますが、出店企業は売上を伸ばせばそれだけ収入が増えるというものです」、とそうした意味でもモールではなく独立店舗ですと強調する。

 続いてこの商業施設の投資負担の全体構図を次のように説明する。
 「パルクの場合、土地の面積は約4、800㎡で、建物は一棟あたり45坪前後、全体で5棟建てになっています。出店業種は7業種、駐車場は約100台あります。

 建物の躯体は家主が負担し、出店企業は店舗の内装工事だけを行い、月々は地代と建物家賃を支払うだけという内訳です。地主・出店企業・投資家の損益分岐を弊社が計算しご提案をします。

 出店の応募については、出店者の紹介や反響を元に検討して頂き、コストや企業のスタイルに見合ったプランを提案させて頂きます。打ち合わせを重ねていくことで、良い提案に繋がります。また、出店企業の選定は、地主さんや投資家と協議しながら決定しました」。

 これまで、お店を出店するには〝空き店舗〟になっている不動産を借りる場合と、地主さんに〝建設協力金〟(地主が店舗を建設し、10年単位の賃貸契約をする場合が多い)を納める二つの方法がありますが、「この二つの中間〝隙間〟を作りたかった」とこの商業施設企画の動機を語る。

出店企業・地主・不動産業者の三者に価値・ブランド力

 こうした構図は、いわば 三方一両得 の関係だ。単にモールを造るだけではなく、地主の不動産価値を上げながら、商売する人がしやすいように工夫する。そして全体のコーディネートを行う中から長井住宅工業のビジネスプランが地主・出店企業・関係者に良く伝わる様に見える。

 「出店企業さんからすれば、内装工事の負担だけで企業イメージを高め、企業同士の輪を高められる場所は、そんなに多くないでしょう。新店舗を探される際、150坪位の物件は結構見つかりますが、30~50坪位の物件はなかなか見つかりません。複合店舗ともなればなおさらで、計画的に企画・管理がなければ物件はあり得ないでしょう。この方式は、コンセプトの合う仲間の企業様同士がコラボレーションするために、複数の企業が独立店舗の集合体を形成するにはこの方式が有効ですね」。

 やり方さえ上手くいけば大型商業施設にも引けを取らない集客力を得ることも考えられる。地域ぐるみのイベントなども考えていけば、町おこしも可能だ。この地域は、市街化調整区域のため、サービス業などしか出店できない地域なので、地主さんにとっては、アパート経営以外の効率的な商業施設の投資のチャンスとも言える。

 「われわれ不動産業者にとっては、非常に手間のかかる仕事ですが、地域に密着した街づくりを実現することで存在価値が得られるメリットがあります。利益率という面ではそれほど高くありませんが、宣伝効果や信頼度も増し、紹介が増えるなど効果は大きいと考えました。こうした提案をすることが弊社の地域に対する役目です」とそれぞれの立場で利益を見出せることを説明している。

 この新たな試みを関係者も敏感に感じ取り、「現在でも非常に多くの方から関心を頂いており今後の企画・開発等に向け益々地域の発展を考え地元の関係者と慎重に街づくりに貢献できる様にしていきたいと考えています」と一つの投資方式として定着してきていることが伺える。

今後も地元を中心にいくつかの開発企画を語る

 この商業施設のみで開発が終了したわけではないと言う。
 「今後、さらにパルクを拡大するかは、あくまでも地主さんの判断になります。また、このパルク西へ500mほど行ったパチンコ店の跡地にも計画中です。出店の検討者はかなり多いのですが、この土地は全部借地で、建物はすべて出店企業が建てるという方式の予定です。ここも市街化調整区域ですので、サービス業系主体に構成したい」とまだまだ青写真は広がるようだ。

 他に、隣接する市内「新保町」にも、既に2業種の店舗集積を昨年完成させている。衣料品店「RedCarpet」(レッドカーペット)とイタリアンレストラン「Lalba di Camel」(ラルバディキャメル)で構成されている。

 また来年度には、以前開発した「クレイドル」(飲食店)と「アッシュ」(美容室)というお店の隣接に、5業種の複合店舗を企画している。予定業種は、インテリアショップ(家具・雑貨・観葉植物)・ネイルサロン・コンサルティング事務所関係を誘致し、現在打ち合わせをしている。オープン後は、駐車場を共有していく予定で、全体構図はパルクと同じと言う。

 その他、たくさんの複合店舗の実績はあるが、すべてが統一感のあるものではなく、業種の個性を出しながら、肌の合う企業同志が、時代の変化と共に、集結しコラボレーションすることによって、相乗効果が得られるはずだ。

 市内「連雀町」にも現在商業ビルの開発を進めている。2階、3階はすでに居酒屋に決まっているが、1階についてはまだ慎重に検討しているという。

『パルク・ハナミズキ高崎』出店企業に聞く
雑貨&ファッション「Nekoko」(ネココ)

 以前から安中・富岡・吉井などの西毛地域をターゲットに高崎への進出を模索していた。前橋での店舗が手狭になったことや駐車スペースの問題もあり、『パルク・ハナミズキ高崎』の計画を人づてに聞き、真っ先に出店を希望したという梅山さん。『パルク・ハナミズキ』の特徴をひと言でいうと「ショッピングモールなのにそれぞれの店舗の独自性が活かされている点にある」という。

 一般的なショッピングモールでは、デベロッパーとの折衝や店長会議などに割かれる時間が多いが、『パルク・ハナミズキ』ではそれらを必要最小限に抑え、それぞれの店舗の独自性を活かしている。例えば、営業時間や定休日すらそれぞれの店舗により異なる。だからと言って、まるっきり独立店舗という訳ではない。オープン以来、全店舗をあげたイベントを2度実施したが、チラシの費用や集客などの相乗効果などは特にメリットが大きい。梅山さんは共同販促などを行う「パルクハナミズキの会」の会長として、このモールのリーダーでもあるのだ。

「隣のラウラ イタリコ ピアッティーノさんではレストランウエディングを時々開催しますが、駐車場の心配は一切ありませんよ」。駐車場に至ってはどの店舗がどこの駐車場を利用しても良いのだ。

 さらに『パルク・ハナミズキ』の特徴は、出店費用の安さにあるという。〝パルクの投資全体構図〟は既に説明したが、この構図を編み出すことにより大手のショッピングモールや独立店舗への出店に比べ、格段に初期投資の費用を抑えられた。

 今後の課題について、「ショッピングモール全体としての統一感あるコンセプト(個性)を打ち出して行きたい」という。このことは長井社長との共通課題でもあり更なる飛躍へのポイントなのかもしれない。

 それでも仲間から「良い場所を選択した」と言われるように、売り上げについても当初の計画通り順調に推移しているという。

「パルク・ハナミズキ高崎」出店名

イタリアンレストラン「L'AULA ITALICO8」(ラウライタリコ)
雑貨&ファッション「Nekoko」(ネココ)
カフェ&バー「p.cafe」(ピーカフェ)
花&ジェラート「galogalo」ガロピーヌ・エ・ガロバン
美容室「blanc Neige」(ブランネージュ)
雑貨「clef poche」(クレフポシェ)
クレープ「Momiry Witch」(モミリーウィツチ)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2008年8月号

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