ショッピングセンタ ーは増えるのか?商業環境は変化し続ける

(2009年1月)

ショッピングセンタ ーは増えるのか?商業環境は変化し続けるウニクス高崎

 「ウニクス高崎」がオープンした。やや小規模のショッピングセンターで、立地は交通量の多い郊外と中心市街地の中間といったところで、住宅地ともいえない微妙な場所だ。
 この規模の商業施設は、新しい「まちづくり三法」の下で建設可能な大きさなので、今後の新設商業施設の主流となると考えられる。
 昨年は高崎商圏と重なるショッピングセンターが、(ウニクスの他に)伊勢崎の「スマーク」と新町から車で数分の埼玉県上里町に「イオン上里」が開業した。イオン上里は一部未完成で影響は未知数だが、高崎の商業環境は確実に変り続けている。商業環境が変わって成長する業種業態もなくはないが一般的には不振となるものである。新ショッピングセンターを通して商業の環境について考えてみたい。
 事業の不振を、吹き荒れている景気後退のせいにして済まされれば、こんな楽な事はないが、現実はそんなことでは許されない。製造業では急激な環境変化に対応するために人員整理やラインを止める等の対策を打っている。景気はいずれ回復する局面もあるだろうが、ここで問題となる不振の原因の商業環境の変化は、元に戻らない不可逆性のものだ。
 商業をとりまく環境変化を加速させるものの一つとして、ショッピングセンター(※注1)(SC)や大型店の開業が次々と続く。新しいSCも環境を変える力となるが、同じ業態内での競争であったり、対手は異業態であったり競争は終わることがない。
 景気後退と競争激化は事業不振の原因としては充分すぎるほど厳しいものだが、はたして商業環境を変える要因はこれだけなのだろうか。


●消費者のニーズは変わる

 不景気でサイフのヒモが固いというけれど、つい最近までの長期景気回復期だった時期でさえ、昔のようにモノが売れなくなった、といわれていた。
 昔は“モノ不足”であらゆる部門で需要が供給を上まわっていた。こんな経済成長の時代もあるにはあったが、時代は変わり“モノ余り”の時代となり、通り越して“モノ離れ”の時代ともいわれている。厳密な意味で“モノ離れ”とはいえないが、消費者のニーズが変わって、あたかもモノに関心がなくなったような現象が見られるものである。
 消費者ニーズが変わって、これに対応できないで苦労している例としてよくいわれる総合スーパー(GMS)がある。いわゆるダイエーや西友は「何でもあるが、欲しい物は何にもない」と揶揄され、一つの時代の小売業の主流となったにもかかわらず凋落したGMSだ。時代の先頭を走ったGMSを、GMSとセットとなり規格化大量生産が豊かな生活を約束したはずだったGMSを、消費者は簡単に見放してしまうのである。


●競争は激化する

 商業統計によると、わが国全体の小売販売額の縮小ぶりは一目瞭然だ。10数年程度で10%近く落ちこみ、今のところ130兆円強で推移している。デフレ、少子高齢化、人口減少など様々な原因はあるだろうが、卸売業も同様に落している。
 業種・業態別で見ると、スーパーは長期にわたりマイナス成長が続いており、逆に売場面積は増加し、面積販売効率が下り競争激化を示している。百貨店業界の低落傾向はスーパーと同様だが、この場合売場面積も減少しているので百貨店の業態の問題として考えなければならないが、異業態との競争が激化しているとみるべきだろう。
 一方、新しい業態のドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストアは、小売全体の低迷するなかでそれなりに成長を遂げている。新業態というより旧業種別専門店のグループのヤマダ電機やしまむら、ユニクロなどの伸長もめざましく、商業環境に大きな影響を与えた。ネットビジネスの動向も無視することができなくなる程の存在になっているようだ。


●これからのショッピングセンター

 景気、変化する消費者ニーズ、業態内外での競争激化などの他に、小売業に変化を促す要因としてショッピングセンターの出現がある。ショッピングセンター(SC)は、わずか10数年で倍増し、高崎の商圏にも様々な影響を与えた。先発組のイオン高崎、前橋けやきウォークがあるが、昨年は新町の埼玉県境の至近距離に「イオン上里」が、伊勢崎に「スマーク」とやや小規模の「ウニクス高崎」が開業した。
「まちづくり三法」(※注2)の下で、今後大型のSCの開発は難しくなるので、今のところ高崎周辺での広域型大規模SCの計画はない。大規模のものは一応は収束したと見られる。今後の焦点は、既存のイオン高崎、けやきウォークの増床と、建築面積1万㎡未満の「ウニクス高崎」型の近隣型SCに流れが移ると考えられる。
 これらのSCとは別に、東毛地区に散在するスーパーを核として数店舗が同一敷地内でそれぞれが営業するSCの要件は満たさないが、それに近い小売センターの増加も考えられる。


●地元企業が多いスマーク

 伊勢崎の「スマーク」は高崎の商圏と重なる広域型SCで、先発のイオン高崎、けやきウォークと同じモール型、滞在型としての機能を持ち、先発両SCと同じメインターゲットを20代30代女性とするほぼ同規模のSCである。
 最近の傾向として、大型SCは必ず成功する事業とはいえないといわれている。モール型SCの業界で信頼度の高い「イオンモール」の物件でさえ、全区画を埋めきれずにオープンする場合もあるのだ。モールビジネスは投資回収期間の長いリスキーなビジネスともいわれるようになった。このようなSC事情の下でスマークは全てのスペースを埋めてオープンした。
 スマークの特徴は核となるGMSがないことだ。したがってメインターゲットの20代30代の女性にはテナントの配分が厚く、それ以外の日常的な必需品が薄くなる。ある業界紙は、苦肉の策として地元出身企業によるショップを多く集めて、結果として他のSCにない魅力を出していると評価している。43ショップが地元企業によるものでそのうえ1ショップあたりの面積も広い。
 伊勢崎では中心市街地の西友が撤退する。かつて、中心商店街と百貨店を中心とした買回りを補完するSCという構造があったが、今日では役割が変わりつつあるのかもしれない。


●地域社会の拠点になるかウニクス高崎

 ウニクス高崎が開業した。ちょっと見たところでは既存のロードサイドの専門店を集めたものと見えるが、ウニクス高崎はそんな程度のものなのであろうか。
 スーパーがキーテナントの近隣型SCは、日常生活の利便性を向上させる商業施設として計画され、既存の近隣商店街の持つ機能をそのまま持つものだ。広域型SCとは週末、日常は近隣型SCへといった使いわけがねらいで、ウニクスとの競合は既存のスーパーであり、既存の商店街である。
 ウニクスの中身は、キーのスーパーを含む物販が10店舗、飲食を含むサービスが10店舗で構成されている。面積でみると物販中心であることは当然だが、カルチャーセンターや地元野球チーム、『ダイヤモンドペガサス』のショップ、広場を使った週末のイベントなど、地域社会に対する配慮も見られる。ウニクスが、商業としての物販ともう一つの商業者の役割である地域の拠点となりうるか、地域の消費者のライフスタイルにどう組みこまれるのか、注目するところである。
 SCの07年の販売額は27兆円を超えたそうである。これには飲食、サービスも含まれるから一概に比較できないが、小売全体が130兆円強と比べるとSCの重要性は今後も増すと考えられる。「まちづくり三法」の下で近隣型SCの増加が予想される今日、小売業のなすべきことはいかに環境変化に対応できる能力を持ちうるか、という所に落ち着くようである。
(高崎商工会議所小売部会長 根岸 良司)
※注1 ショッピングセンターとは自然発生的に形成された商店街や市場(いちば)とは異なり、明確なコンセプトのもとに開発・計画された商業集積で、1つのマネジメントする機関のもとに一体として運営されている集合体を言う。
※注2 まちづくり三法とは「都市計画法」「中心市街地活性化法」「大規模小売店舗立地法」を指す。2006年に郊外における土地利用規制の強化(床面積の合計が1万㎡を超える大規模集客施設の用途地域の制限強化)と中心市街地の活性化支援(中心市街地活性化基本計画の認定)により都市の再構築を進めるための枠組みとして改正。


高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年1月号

高崎の都市戦略 最新記事

勝ち残る専門店

グラスメイツ
グラスメイツ
メガネ店の店員も買いに来るメガネ専門店
辰巳
辰巳
印傳と陶器の専門店/県外からもお客様
有限会社三洋堂
有限会社三洋堂
パソコン全盛時代に書道のおもしろさを伝える

すべての記事を見る