上武大学の名を全国に広めた箱根駅伝出場

(2009年2月)

上武大学の名を全国に広めた箱根駅伝出場

 上武大学の名を全国に広めた箱根駅伝出場。地元大学が出場し「正月の楽しみが増えた」と正月2日間のレースをテレビ観戦していた市民は多いのではないだろうか。来年の出場権を得る10位入賞を目標に掲げて参戦、21位の結果に箱根の険しさを見た。しかし「繰り上げスタートもなく、初出場で完走したのは立派」と選手の健闘を讃え、来年への期待が高まっている。


同窓会、後援会も活性化し母校への愛着が高まる

 箱根駅伝出場は「上武大学の知名度を上げ、地元の方にも認識を新たにしていただけたのは事実」と言う同大広報部の落合春彦部長。昨年10月18日に行われた第85回箱根駅伝予選会(立川・昭和記念公園)で堂々3位となり、市民・県民の話題をさらった。大会出場を決めてからというもの、どこへ行っても「おめでとうございます。がんばってください」と声をかけられる。
 上武大学という名前は知っていても、実は大学がどこにあるのか知らない市民も思いのほか多い。17号バイパスの上佐野高架橋から見える看板が目立つため、その近くなのだろうと誤解されることもあるらしい。箱根によって、上武大学は高崎の大学であることを市民にしっかり浸透させた。箱根駅伝出場の看板は現在も掲げられてドライバーの目をひき、PR効果は大きいという。
 同窓会や後援会も活気づき、今まで母校への関心が薄かった卒業生達も箱根出場をきっかけに、支援の輪を広げてくれた。地元の新町や伊勢崎市では、応援団を組織して、選手に熱い声援を届けた。


今年の成果を来年につなげる
連続出場をめざし箱根の常連校に

 初出場校の苦労もあった。距離の長いコースのどのあたりで応援をすれば効果があるか、何時間前から場所取りすればいいのか等々、経験してみないとわからない。出場大学の規模では、上武大学は最も小さい。「大きな大学と同じことをする必要はない。本学の個性を出したい」と落合部長。中継地点では、選手ユニフォームと同じ黒色の幟旗が目立ち、PR作戦は大成功。マスコミも初出場校として特別取材し、テレビのオンエア時間が長かったことも幸運だった。
 箱根ミュージアムには、出場校の記念グッズを販売するブースが設けられ、上武大は黒の高崎だるまを出展。箱根駅伝のファンに人気となり、一番に売り切れたそうだ。
 運営ノウハウをつかみ、来年にしっかり生かしていく。
 上武大学は、スポーツに力を入れ、野球、サッカー、陸上と運動部の活躍が知られている。施設も整い、優秀な選手が集まってきている。陸上は、フィールド競技での実績はあったが、駅伝は指導者がいなくて伸び悩んでいた。元・五輪代表の花田勝彦監督を招き、駅伝部創部5年目にして、初出場の夢に届く快挙となった。
 以前も「箱根に出られればいいね」と学内で話題になったこともあるそうだ。箱根駅伝を大学のブランドとして戦略的に位置付け、有望な外国人学生を戦力にし、成功している大学もある。「何人抜き」というスーパー選手が毎年脚光を浴びる。無名校がそうした選手を集め、新規参入することは現実的には極めて難しい。「箱根駅伝は、めざしても簡単に出場できるものではない。おいそれと真似ができない」と落合部長は力を込める。だからこそ価値がある。常連校となり連続出場することは大変な力だ。


一般学生のモチベーションも高める

 一般の学生の反応はどうなのだろうか。ある学生が年末に帰郷した際、「上武大学が箱根駅伝に出場するそうだね」と言われ、驚いたそうだ。箱根駅伝の効果を認識したという。しかし、みんなで応援に行こうという盛り上がりは、外部から想像するほど大きくない。むしろ学生よりも市民の関心のほうが高い。
 大学では、箱根出場を学生全体のモチベーションを上げる切り口として狙っている。メディアマネジメント学科、スポーツマネジメント学科の研究題材として活用したり、研究成果をフィードバックしていけるような仕組みづくりを考えている。また多くの学生が集まり、応援で燃えることも青春の一ページだ。応援は、いわばお祭り的な側面もある。箱根だけでなく野球の神宮球場なども含め、「学生が主催していけるよう支援していきたい」と落合部長は言う。


大学ホームぺージへのアクセスが殺到
高まった大学への信用と期待

 箱根駅伝出場で、上武大学とともに高崎市の知名度が上がり、また市民が上武大学に親しみを持ち、お互いに大きなプラスとなった。
 落合部長は、箱根駅伝出場で「大学の社会的信用が高まった」と手応えを感じている。学生募集の問い合わせは、昨年に比べ倍増。ホームページへのアクセスも増え、箱根駅伝開催日には、アクセスカウントが、普段の数十倍、一日4万件を超えた。しかし「一回箱根に出場したからと言って・・」と部長の受け止め方は冷静。常連校に名を連ね、シード校入りし、そして優勝を狙っていけるよう実力をつけていきたい。花田監督の人望もあつく、講演などを通じて市民、企業とふれあう機会も多くなっているようだ。上武大学が地域貢献として行っている公開講座などを通じて、地域との交流を深め、連携を強化していく。
「夢で終わらせないように」。これからの取り組みが今まで以上に重要になると大学では考えている。


(文:菅田明則・新井重雄)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年2月号

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