がんばれ高崎映画祭大黒柱を失ったことで生まれた自覚

(2009年3月)

がんばれ高崎映画祭大黒柱を失ったことで生まれた自覚

 今年で23回目となる高崎映画祭。今年は例年とは大きく異なる点がある。事務局代表だった茂木正男さんの不在である。高崎映画祭の立ち上げや高崎の映画文化の中心的存在として力を発揮していた茂木さんの不在が、今年の高崎映画祭の実行にどのくらい影響を与えているか。また、運営スタッフにどれほどの影響を及ぼしているのか、舞台裏をリポートする。


■仕事帰りに映画祭の準備に取り掛かるスタッフ

 映画祭が近づいてくると、毎週木曜日の夜7時30分からあら町の事務局でスタッフの定例会議が行われる。開始時刻に集まっているメンバーは10人ほど。メンバーの構成は実に様々だ。50代後半の新人スタッフが20代の先輩スタッフと一緒に肩を並べて会議や作業を行っている。
 その後時間が経つにつれて、続々と残りのメンバーが参加してくる。事務局スタッフの多くは、昼間各々が仕事を持っていて終業時間がバラバラなため、決まった時間に集まれないようだ。メンバーたちはそのことには既になれているようで、人数が少なくても会議は定刻に始まり、遅れてきたメンバーも何事もなく会議に参加している。
 会議に部外者であるレポーターの私がいるにも関わらず、気付いているのかいないのか誰も私には見向きもせず、会議は進んでいく。


■影響を感じさせないボランティアスタッフ

 会議でも事務作業でも誰が指示をするわけでもなく、それぞれのスタッフが自分の考えを発言し、やるべき作業を行っている。今年で23回目となる映画祭、ベテランスタッフたちはやるべきことがわかっている。回数を重ねることによりスタッフたちは自主的に自分のやるべきことを理解し、周りの人たちと共に作業を行っている。
 「23回目ともなると、事務局でも自分たちの出来ることと出来ないことがわかっている。出来ることはスタッフを含め全員で対応している」と事務局長の常見さんは言う。組織として熟成されてきているため、準備や作業という面では茂木さんの不在の影響はそれほど大きくはないようだ。


■不景気も重なり対外的には多少の影響も

 営業としては、多少の影響が出ているようだ。広告・スポンサー集めは例年に比べ多少は厳しくなっている。茂木さんだから集められたところや、昨今の不景気のためなどで断られることもあるという。
 しかし、常見さんは「広告・スポンサー集めは自分の力が及ばない部分がある、だから自分の力が及ぶ部分は精一杯やって、集まらなければ、また新しいところへお願いに行けばいいだけ」と、さほど問題にしていない様子だ。
 パンフレットの印刷を1週間後に控えた時点でも、まだ広告は8割ほどしか集まっていない。しかし、これは例年と比べれば順調であるとのことだ。「茂木さんがいなくなり、一人一人が自分がやらなければという思いが出てきたのでしょう」と、総合ディレクターの志尾さんは感想を口にした。


■影で支えているスタッフも表舞台へ

 今回の映画祭では、茂木さんの穴を埋めるためにスタッフ一人一人が、今まで以上にがんばっている。その中でも事務局スタッフの小林さんのがんばりは周りのスタッフも頼もしく感じている様子だ。小林さんは普段、シネマテークたかさきや高崎映画祭の庶務をしている。周りのスタッフからも〝縁の下の力持ち〟と感謝され、影で映画祭を支えている。
 今回からは映画祭の広告集めなどで営業の仕事も増えてきている。「営業のような仕事はあまり向いてない」と小林さんは言うが、「今度は新しくどの企業に話に行こうとか考えながらやっています」と積極的に営業を行っている様子が伺える。


■今後の高崎映画祭はもっと華やいだ雰囲気で

 今回の映画祭は、メディアでの注目度が例年以上である。それだけに大きなプレッシャーもあるという。「今回の映画祭を、本当に自分たちの力で成功させることが出来きれば、次年度以降に大きな自信になります」と志尾さんは意欲をのぞかせる。
 今後の映画祭について話が及ぶと、「高崎映画祭をもっと華やいだものにしたいですね。市民の皆様が春の風物詩のように待ち望み、夏の〝高崎まつり〟のように街が活気づくような映画祭にしていきたいです」と楽しそうに話してくれた。
 茂木さんという大きな柱は抜けてしまったが、映画祭のスタッフは前を見ている。いつの日か高崎駅を降りると、今年も高崎映画祭の時期が来たなと感じられることを願う。がんばれ、高崎映画祭!


茂木 正男さん「お別れ会」

 2月11日、松浦高崎市長・原高崎商工会議所会頭らが発起人となり「茂木正男さんのお別れ会」がホテルメトロポリタン高崎で行われた。会場には日本各地より茂木さんと親交のあった映画監督の崔洋一さんや女優の石田えりさんら約220人が駆けつけた。
 生前の茂木さんの人柄を感じさせるかのように、お別れ会は湿っぽいものではなく賑やかに行われた。  シネマテークたかさき支配人の志尾さんは「茂木さんが作り上げたものを、残党が続けているのかと思われたくない。これからも高崎映画祭、シネマテークに期待してほしい。茂木さんがいなくなり、くじけたり、やっていけるのかと考えることもある。私たちは茂木さんに戦い方を教えてもらった」と今後も高崎映画祭、シネマテークたかさきの運営に自信をみせた。


(文:中島)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年3月号

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