高崎はブライダルの秋葉原!?

(2009年7月)

高崎はブライダルの秋葉原!?

過当競争か? 半径3kmに13件の結婚式場が集中

 ブライダル、結婚式、披露宴と言えば、きれいに着飾り幸せに満ちた人生最大のイベントだが、少子化、シングル族の増加、地味婚・・・と、ブライダル市場を取り巻く環境は、一見厳しさを増しているようだ。そんな中、昨年9月以降に3軒の挙式・披露宴会場が高崎にオープンした。これで、ブライダル情報誌に広告を掲載している主だった結婚式場を数えると、高崎駅を中心とした半径3km圏内になんと13軒。まさに“結婚式場の秋葉原”のような活況を呈している高崎。
 しかし、単に偶然業者が増えたという事でも、今まで市内に結婚式場の数が少なかったわけでもなさそうだ。交通の利便性など、高崎という都市の特性が活かされ多様化する消費者ニーズに対応した結果なのだ。
 かつて結婚式といえば、新郎新婦に仲人が上段に座り、あらかじめパッケージ化された企画で司会者によって進められてきた。時代は、いわゆる“パッケージ婚”が淘汰され、ハウスウェディングやオリジナル婚へと急激に変化している。
 素人には過当競争とも思えるが、駅の至近距離や広大な敷地を持つ郊外型などそれぞれが違った特徴を持ちターゲットを細分化しているようだ。  最近の高崎における挙式・披露宴会場事情を探ってみた。


●パッケージ婚からオリジナル婚へ

 今から12年前、高崎のブライダルシーンに大きなインパクトをもたらしたのが、1997年4月に高崎駅東口の江木町にオープンした「シャロン・ゴスペル・チャーチ高崎」だ。イギリスの教会をイメージした独立型の本格的教会で、棟続きに迎賓館があり、周囲を囲む茶色いレンガが、外界から内部を切り離し徹底した英国調を演出している。
 それより少し早く、教会式を望む消費者ニーズに応えて、「グランドパティオ」が、チャペル「セント・ラーレ・チャーチ」を敷地内に併設した。そして「高崎サンパレス」がイギリスのセント・チャド教会を模し、名前もそのままの「セント・チャド教会」を設置した。こうして高崎駅東口にチャペルのある3軒の結婚式場が出来たことにより、高崎の教会式の需要に拍車がかかり、教会式に対応した式場作りが主流となっていった。
 挙式スタイルには、教会式、神前式、仏前式、人前式などがあり、その中で教会式が圧倒的人気となっていく中で、披露宴のスタイルも従来のホテルや専門式場のパッケージプランにとらわれない、自分たちだけのオリジナルウェディングに人気が集まるようになった。ハウスウェディングやレストランウェディングの台頭である。
 ハウスウェディングは、結婚式を行うために建設された洋館風の邸宅を貸切形式で利用するスタイルで、演出やプログラムなどに自由度が高い。「一生に一度のことですからお二人のために最大限の演出をお手伝いします」というコンセプトで、それまでの結婚式場やホテルが見落としてきた「オリジナリティ」「プライベート感」を実現することで、若いカップルの高い支持を得るようになった。


●ゲストハウスが続々と進出

 高崎でのハウスウェディングの先陣を切ったのは、飯塚町にある「ディア・フィオーレ マリエール高崎」。1998年に愛知県を拠点としてゲストハウスを展開している会社が、元の平安閣をリニューアルオープンしたものだ。次いで、シャロン・ゴスペル・チャーチ高崎を擁した「ザ・ジョージアンハウス1997」が、2002年に同じ敷地内に「ロイヤルクレストハウス」を建設し、一軒貸切のハウスウェディングスタイルを実現した。2003年には高崎駒形線沿いにある「アーセンティア迎賓館」、高崎駅西口にある6階建てのビルを丸ごと貸切れる「グローバルウェディング ディアーデ」がオープン。2004年には、上大類町に「アルカーサル迎賓館」、2005年には新保町に「ウェディングレストランジュレ」、高崎駅東口より徒歩10分のところに高崎の結婚プロデュース会社が「レイオブパースチャーチ&レストランジョイ」を出店した。
 そして2008年9月には群馬・栃木・埼玉等で多店舗展開する会社が北高崎駅近くに「ヴィラ・デ・マリアージュ高崎」を、高崎駅東口より徒歩3分の高崎サンパレスを地元の結婚式場が買い取り、新たに「エテルナ高崎」としてオープンした。スカイチャペルやスカイガーデン、350人着席できる広間から少人数対応の空間等を備える。同年11月には東京を拠点に婚礼プロデュースを行なう会社が高崎問屋町駅前に「高崎モノリス」をオープンした。ここは、デザイン性に優れた照明を国際的に表彰する「北米照明学会賞」のインターナショナル部門で「世界50傑」に選ばれたことでも話題になった。
 こうした流れの中で、市内の既存ホテルや専門結婚式場も、バンケットを邸宅風の内装にしたり庭園を併設させたりと、ハウスウェディングの要素を取り入れるなどの対応策を講じてきた。現在、高崎駅を中心とした半径3km圏内には、13軒もの挙式・披露宴会場が営業している。「実際に高崎に来て、それぞれの式場があまりに近くて驚きました」と高崎モノリスの大塚マネージャーが指摘する通り、かなりの密集地帯である。会場を選ぶ側からすると、モダン、豪華、可憐、シック、スタイリッシュといった好みに合わせ選択肢が多彩だ。


●少人数でこだわりのある結婚式が主流に

 高崎にこれだけ挙式・披露宴会場ができるというのは、市場に魅力があるということか?
 結婚情報誌ゼクシィの「結婚トレンド調査2008」によると、全国の平均結婚費用は420.5万円(前年度423.5万円)で、このうち挙式・披露宴・パーティーの費用は317.4万円(前年度318.7万円)と、前年度より若干減った。結婚式の招待客数は平均73.8人で前年度より2.2人減少し、招待客一人当たりの費用は過去最高の4.9万円となり、少人数でこだわりのある結婚式を挙げる傾向がある。
 次に「高崎」に関してと言いたいところだが、データがないので、「北関東」における招待人数と費用総額の変化を見ると、〈招待人数平均〉2002年89.2人、2008年83.9人。〈披露宴費用総額〉2002年319.8万円、2008年368.4万円で、招待人数が減っている一方で、費用総額が上昇傾向にあることがわかる。
 「全国的にも言える傾向で、より親しくお世話になった人たちを厳選して招待する一方で、料理や演出など、ゲストへのおもてなしを重視する意識が高まっていることが背景にあると考えています。また、結婚式というイベントが、かつての“やらなければいけないもの”から、“やりたいからやる”ものへと変化しており、特に北関東の読者には“自分らしさ”をキーワードに、結婚式全体にさまざまな演出やアイデアを盛り込むカップルが多数存在しています」と、ゼクシィ編集部から回答をもらった。
 まとめると、結婚式を自分たちの意思で実施するカップルが多いからこそ、景況感の影響をそれほど受けずに、費用総額が下がる傾向も見られないのではないだろうか。


●挙式・結婚式を挙げるカップルは増えているのか?“やりたくない”カップルは?

 自分たちのスタイルを大切にする現代の若者像により、挙式・披露宴のあげ方もずいぶんと変化しているが、婚姻届は出すが挙式・披露宴は“やりたくない”というカップルもいるはずだ。高崎市に提出された婚姻届出件数を見ると1996年が約3,200件、市町村合併の影響もあるが昨年度の総数は3,815件と大幅に増えている。高崎市に本籍のある人、ない人、他の地域に住んでいて高崎市に届け出る人の総数であるが、この数字は、高崎市内の結婚式場で挙式をした数字とは一致しない。婚姻届を出しても式を挙げないカップルや、婚姻届はどの自治体に提出してもかまわないので、他の地域で挙式して夫か妻の本籍地である高崎に婚姻届を提出する場合もある。
 取材を重ねて得た業界関係者の話では、高崎市内での挙式率は5~6割というところらしい。残りの約4割近くの一部には、挙式はしないが“衣裳を着て写真に残す”カップルがいるかもしれないという思いで、貸衣装の地域一番店「深野衣裳店」の深野清一社長に話を伺うと、「外国人と日本人のカップルなど、年に数組利用するだけ。洋装で挙式をするので、和装は写真だけという人たちはときどきいる」とのことだった。挙式・披露宴を行なわず写真だけという需要は無いに等しいということになる。
 高崎市内の多くの式場と提携している深野さんは、高崎の挙式・披露宴の年間件数について、およそ2,500組程度と見ている。「この不景気下で、挙式・披露宴を控えている方が増えたように感じます。3つの高速道のインターチェンジがあり、新幹線2路線が通る利便性の高い交通拠点である高崎は県内の都市の勝ち組で、式場が集中する“結婚式場の秋葉原”。挙式数は増加傾向にあり、ここに拠点を持たないと群馬でのブライダルビジネスは成立しないのでは」と話す。


●北関東全域で集中化

 高崎市内の挙式・披露宴会場の競争が激化していることは確かであるが、果たしてこれは高崎だけの現象なのだろうか?。ということで、再びゼクシィ編集部に話を聞いたところ、「ここ数年の動きでいえば、新しい式場はできていますが、栃木や茨城に比べると、特に出店ラッシュというほどではありません。群馬はどちらかと言えば保守的な土地なので、今まで他のエリアからの出店はあまり多くありませんでしたが、最近では、首都圏と比べて土地が安いなどのメリットが要因となり、首都圏資本の企業の進出が見られています」ということである。
 群馬よりも栃木・茨城のほうが活況を呈しているというのは、「挙式・披露宴・パーティー費用」のデータでは、栃木は397.7万円、茨城は361.4万円、3番目が群馬の346.2万円で、この数字が明らかに物語っている。3県とも全国平均の317.4万円を大きく超えており、業界関係者の話と照らし合わせても、消費意欲や新しいものに飛びつきやすい消費動向は最大の魅力と見られているようだ。


●縮小するマーケットで新たなニーズの掘り起こしが課題

 ブライダルに関しては、早期にまとまった人数の予約が入るため、計画が立てやすく売り上げも高額になるというメリットがあるが、一方で、多様化する消費者ニーズに応えるためには、ハード・ソフト両面の充実が求められる。一生ものの買い物に消費者がお金を落としたくなるようなプランの提案力や、人的資源の充実が継続的に必要で、今後も様々な対応に迫られそうだ。
 ブライダル需要を押し上げたとされる団塊ジュニア世代(現在:35歳~39歳)の婚姻もひと段落の気配を迎えたことなどを考えると、今後、ブライダル市場が拡大することはなさそうだが、挙式・披露宴を行わない層への新しいスタイルの提案や、結婚式を挙げる意義を伝えること、上質のおもてなしのサービスを提供し続けることで、ニーズの掘り起こしの道は開ける。一生に一度のハレの日だからこそ、派手婚でなくても、大切な人たちに感謝の気持ちを伝え祝福されたい。ここを省いてしまったら、人生の大きな損失ではないだろうか。
 取材を続ける中で、今後もさらに進出計画があるという話も聞いた。高崎という都市の特性が活かされ単なる過当競争ではないにせよ、少子化や女性の高学歴・社会的地位の確立による晩婚化が進む中、このブライダル業界でもしばらく競争が続きそうだ。


高崎はブライダルの秋葉原!?

●ホテル 高崎ビューホテル
取締役総支配人 小池茂之さん
落ち着いた大人のカップルの利用が目立つ

 バブル景気の真っ只中、昭和58年(1983年)にオープンし、当初は結婚式場の数も今ほど多くなく、ウェディング予約は次々に舞い込んだ。。
 挙式披露宴にホテルを選ぶ消費者層は、比較的年齢が高めで落ち着いたカップルが多いです。大学の友人など遠くから招く招待客の宿泊を確保できるホテルを便利に感じてくださるお客様の利用も目立っています。オリジナリティよりオーソドックスな披露宴を求めるお客様が多く、ご招待客をおもてなしするという志向を感じます」と話す小池さん。
 ここを利用するカップルの6割は神前式という。館内には神前式を行なう上質でモダンな『悠衣殿』が設けられ、提携先の神社での挙式も選べる。バンケット(宴会場)をリノベーション(改装)したり、お得なパックプランを提供し小規模結婚にも対応したりと様々な試みを行っている。
 「ホテルの基本精神はホスピタリティ(献身と歓待)です。これを実現するのは、上質な空間や美味しいお料理はもちろん、社員のクオリティの高さが欠かせません。ウェディング・コンシェルジュの肩書きを持つ女性を主力としたウェディングチームを編成し、傾聴に比重をおいた社員教育等を行なっています」。
 ホテルの魅力は、高級感や設備の充実度。直接ブライダルに関わらないスタッフもいて、サービスの層が厚いこと。安心感や安定感がある。


高崎はブライダルの秋葉原!?

●ゲストハウス 高崎モノリスブライダルサロン
マネージャー 大塚皇一郎さん
洗練された空間・料理・サービスを武器に、平日はレストラン事業を展開

 モダン建築の都市型ゲストハウス「モノリスタイプ」と、リゾート感覚の郊外型ゲストハウス「アマンダンタイプ」を二本柱として多店舗展開する。1日2組限定の貸切型婚礼施設(ゲストハウス)でレストランを運営し、地産池消の料理にこだわったブライダルを提案しながら、独自のブランドをもつドレスショップも運営している株式会社ノバレーゼ。昨年11月にオープンした「高崎モノリスブライダルサロン」のマネージャー・大塚皇一郎さんに、高崎への出店について聞いた。
 「首都圏に比べ北関東地域は広い土地を確保しやすく、特に高崎は交通の利便性が高い点。そして、東京のビジネスモデルに対して爆発的ともいえる感度のよい消費志向が魅力です。実際に高崎に来て驚きましたが、前橋と高崎の距離が非常に近く、式場が狭い地域に密集していて、まさにここは激戦区」と話す。
 少子化の影響でブライダル市場の競争激化は避けられないが、「本物の上質」を提供し続けることで道は開けると考える。居住性を追求したスタイリッシュでシンプルな空間。一流のシェフが作る和をベースにした創作フレンチ。洗練された心のこもった接客。「過剰な演出ではなく、ゲストへの感謝の気持ちや触れ合いの心が一番に伝わる上質な環境を整えます。敢えて言うなら“心地よい無地”。ゲストの方々の色に染めていただくというスタンスです」。土日はブライダル、平日はレストラン。洗練された空間・料理・サービスは、常に地域に開かれており、実際に料理を気に入った両親が、娘の結婚式場に選ぶというケースも出ているとか。


高崎はブライダルの秋葉原!?

●ゲストハウス ヴィラ・デ・マリアージュ高崎
ストアマネージャ 寺田祐介さん
高崎への出店は社長の念願

 「ヴィラ・デ・マリアージュ高崎」を経営する㈱プリオコーポレーションは、57年前に伊勢崎市で蕎麦屋を開業し、結婚式に仕出しを出していたのがこの業界とのかかわりの始まり。その後、桐生・渋川に結婚式場をオープン。栃木・埼玉・群馬で結婚式場を多店舗化し、東京と軽井沢に進出した。社長が南フランスを訪れた際、小さな結婚式で町中が新郎新婦を祝福する様子を見た。「南フランスの風や食、建物に感動しそれを多くのお客様に伝えたい」、と小さな町を再現したゲストハウスを提案した。高崎への出店には、群馬で一番の都市に店舗を出すことで故郷に錦を飾りたいという社長の思いがあった。2000年にオープンしたヴィラ・デ・マリアージュ宇都宮は、7千坪の土地を所有するゲストハウスの先駆けとして、爆発的な人気を誇った。
 「群馬の県民性かもしれませんが、新しいものへの反応力がすごいです。2年前にゲストハウスオープンに先がけて予約センターを設置しただけの営業展開では、心配をよそに十分な反応をいただきました。結婚式に呼ばれることの多いお客様は、新しい式場を使いたいという気持ちが強かったようです。しかし、目新しさは一時的なもので、接客力や提案力に高いクオリティを実現していくことが大切。東毛地域や熊谷・深谷方面からも、遠くから招く人の交通の便を考えて、高崎で挙式する方々は珍しくなく、同じマリアージュグループの中でお客様が競合するという状況も出ています」と話す寺田さん。地元に可愛がってもらえるゲストハウスとして、地域の法人や学校関係者に、パーティーや宴会での利用を呼びかけるなど、地道なアプローチを展開している。
 「周辺地域を入れると、高崎地域の年間婚姻件数は3,000組程度ではないか。その5〜6割しか実際に挙式披露宴を行なっていない状況で、まだまだ努力の余地はあります」と語った。


●貸衣装

(株)深野衣裳店

 ブライダルのお客様は年間約1,600組来客し、そのうち約1,200人が成約となる。昨年度の売上実績も前年対比で大きく上回り、まさに地域の一番店だ。このことからも、高崎地域でのブライダルビジネスの可能性がうかがえる。貸衣装専門店としてのクオリティを追求するため、一流の品揃えにこだわり、その良さを的確に伝えながらお客様とコミュニケーションをしっかり図れる人材の育成に力を注いでいる。



(文責/菅田明則・新井重雄)


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