初の試み「キングオブパスタ」開催!!

(2009年8月)

初の試み「キングオブパスタ」開催!!第35回高崎まつりテイストオブ高崎2009

第35回高崎まつりテイストオブ高崎2009

消費者が支持するパスタとは?市民も同業者も注目

 

 高崎の名物を生み出そうと始まった「テイストオブ高崎」は、高崎の地産地消を念頭に掲げた高崎まつりの食のコンテストだ。地元産の野菜やフルーツなどを使った「ご当地グルメ」で地域おこしをしようと2年前に企画された。


 今回は、おいしいパスタ店が多くて全国的に消費量も多い“パスタの街高崎”にふさわしく、パスタの味を競うパスタコンテスト「キングオブパスタ」が開催された。


 本来、同業者は全てがライバルのはずなのに、市内パスタ店10店が参加し、地元の食材を用いた自慢の味を来場者に食べ比べてもらい順位を競うという初めての試みに、多方面から驚きと大きな期待が寄せられた。


●長蛇の列、待たされても食べて大満足

 8月1日(土)13時~17時(1、200人分)、2日(日)13時~16時(600人分)。高崎まつりの期間中、もてなし広場の特設ブースには入場を待つ人たちで長蛇の列ができ、その盛況ぶりに誰もが目を見張った。「高崎まつりは毎年来ているが、今回はこのイベントを楽しみにやってきた」というファミリーや「本庄から、花火とパスタを楽しみに来た」年配の夫婦、「パスタバイキングのようで楽しみ」など様々な声が聞かれ、パスタの街高崎を再確認するような活気で賑わった。


 来場者は入口で400円のチケットを買うとトレーが渡され、それを持って各店舗から1個ずつ計10個のパスタの入った容器を受け取って食べ比べ、一番おいしいと思ったパスタ店の名のついた投票箱に一票を投じる。ブースの中央にはテーブル12台、椅子72脚が用意されていたが、常に満席状態だった。


 おいしそうに舌鼓を打つ来場者にイベントの感想を聞くと、「自分で10店を回るのは大変だが、一度にそれぞれの味を楽しめてよかった」「半分は知らないお店だったので、発見があった。今度、店にも行ってみたい」「味の評価は食べる順番にもよるので、結果はあてにならないと思う。パスタの街というキャッチフレーズは知っていても、こういう形があって初めて分かるし盛り上がる」など、列に並んで待たされても、初めての試みとおいしいパスタに評価は上々だった。


●各店のコンテストに参加した理由

 まつりのイベントとはいえ、得票によって1位から3位までを決めるコンテストだ。優劣をつけられることに店側は抵抗感はなかったのだろうか? 聞いてみると、「企画として面白いと思った。地域密着でずっと店をやってきたので、業界や高崎が活気づくことなら一緒に盛り上がりたい」「夫婦二人でやっている店で、順位というより店を知ってもらう機会と考えた」「店を始めて一年経っていないので、店をPRしたい。優勝できれば一番いいが、参加するために営業を2日間ストップしているので、その売上をカバーする何かを得たい」「自分も30代になり、地域を盛り上げていく立場。せっかくの企画なので、参加して地域の活性化に役立ちたい」「このイベントのスタッフの熱意に共鳴した。うちは老舗の部類なので、年配の人にも喜んでもらえるし、いろいろなお店が参加したほうが面白い。同業が10店舗も集まるイベントなんてすごい」という声が聞かれた中で、「今後、地産地消の視点で物産展などに参加する時のシミュレーションのよい機会となった。TBSに放映され、全国発信効果があった」と今後のステップアップにつなげたいと参加したところもあった。


 一番が取れたら嬉しいという声もあったが、優劣をつけられた結果への心配などは全く聞かれなかった。コンテストを楽しむ、パスタ人気の機運をさらに高めたい、愛する高崎を元気にしたいという姿勢が圧倒的。その上、多くの人に店を知ってもらうよい機会ととらえ、店の案内パンフや割引クーポン券、中にはキングオブパスタご来場感謝クーポンを配布する店などがあって商魂たくましい。当事者たちは、得るものはあっても、失うものは何もないと感じている印象だった。


初の試み「キングオブパスタ」開催!!

●パスタの街の象徴となるイベント

 コンテストの結果はというと、3位がラルバ・ディ・キャメルの「榛名鶏のラグータリアテッレ~キャメル農園のバジルの香りで~」、2位がラビッシュの「地場産舞茸とグリーンアスパラの和風ボンゴレスパゲティ」、そして1位がボンジョルノの「ハーブで育った地ポークカチャジョーネ」で、今回はこれらの味が多くの支持を得たということだ。


 パスタの街とは言っても、市内にいてそれほど意識をすることはないが、こうしたイベントが象徴的に開催されることによって認識が広く定着していく。パスタというご当地グルメが吸引力となって地域おこしの手応えを感じ取れた内容だった。


初の試み「キングオブパスタ」開催!!

◆「キングオブパスタ」の立役者!!

テイストオブ高崎・本部売店部門長 青島真一さん 大のパスタ好き。高崎パスタのイベントを通して高崎を盛り上げたい。その舞台として高崎まつりで何かできないものかと考えていた青島さんに、今年、千載一遇のチャンスが訪れた。ナント狙っていたポスト「テイストオブ高崎部門長」に指名されたのだ。青島さんは、練ったプランを企画書にして提出。同業者のコンテストは難しいという周囲の雑音を跳ね飛ばし、絶対実現させるという思いだけで突き進んだ。


 「高崎市内のパスタ店は約60店舗。ほぼ全店舗を回って食事をし、企画への理解や参加を呼びかけました。6月は1日3食全でがパスタで、さすがにきつかったです」というコンテストにかける情熱は半端ではなかった。身を削って、というより体重を5、6kgも増加させる結果になった。「馬鹿ですよね」と笑うが、その馬鹿力が、何かを動かす大きな原動力となる。


 半数の店舗が「人員さえ確保できれば参加したい」という前向きな姿勢を示した。出場店数を上回る応募があり、企画書のとおり抽選で10店を決定した。


 当日、会場を歩き回って進行状況を見守り、表彰式の挨拶では声をつまらせていた青島さん。その思いの強さが、パスタの街に確かな風を吹かせた。


“パスタの街高崎”という理由

 地元にいてはなかなか分からないが、一歩外に出てみると、高崎のパスタ環境はちょっと特別感がある。その個性が生まれ育まれた背景には、自らを料理人ではなく“パスタ職人”と称し、高崎にパスタ文化の種まきを惜しまなかった関崎さんの存在や、“パスタ好き人”たちが消費者という立場で、パスタパーティの開催やテレビ・雑誌などへの売り込みを行なうなど、意欲的に高崎をパスタの街として発信してきた。


 今日“パスタの街”に至るまでの先人たちの努力や気持ちを探ってみた。


●地元とパスタを、こよなく愛する「高崎パスタの会」

 高崎は全国でも有数のパスタ消費量を誇り、レベルの高いパスタ店が多い。この特徴を生かして、パスタをテーマに「地域ブランド創り」と「新たな食文化の創出」に取り組み、高崎の活性化に一役買っていこうと『高崎パスタの会』が立ち上がった。


初の試み「キングオブパスタ」開催!!

 「今から11年前、たまたま何人かが集まったところで、何かで街を盛り上げたいね。高崎はパスタ店が多く、全体的にボリュームがあって美味しい。これは町おこしに使えるという軽いノリでした」と話すのは堀口芳明さんだ。


 「特に数字的根拠はありません。言ってしまえば〝パスタの街高崎〟は、言った者勝ちです。実際、様々なパスタ店がしのぎを削り、個性豊かで選択肢も豊富。ボリュームがあっておいしいパスタが食べられる高崎の状況から見て、これに反論する人はいないと思います。パスタはお洒落な雰囲気で食べられて誰もが好き。イメージがよくて、映画『ローマの休日』でお馴染みの“トレビの泉”や“真実の口”などを設置して、ムードを盛り上げる洒落っ気などがあればもっと楽しくなるはず」と言うのは、島津文弘さん。


初の試み「キングオブパスタ」開催!!

 「パスタは、それぞれが別なものをオーダーしてシェアして食べると、いろいろな味が味わえるし会話も弾む」「自分のお気に入りリストを互いに公開し合って、食べ歩くのもいい」。島津さんも堀口さんも、子どもの頃からスパゲティに親しみ、現在も週三回は食べるというパスタ好きで、探究心から一人でも店に入るというほどだ。


 パスタの会の活動は一時休止状態になっていたが、高崎の食ブランドづくりの動きが各方面で活発化している現在、“一度産んだ子”だから大きく育てようと活動を再開。その最初が8月8日の「再会」パーティーの開催で、地域のブランドづくり、新たな食文化の創造を通じて市民が交流し、高崎をアピールしていこうと決意を新たにした。有志十人で運営し、サポート会員、賛同企業を募り、市内のレストランやホテルを会場に年3回のパスタパーティを予定している。


高崎パスタのルーツは「シャンゴ」にあり

 「高崎のパスタが今日、これほど注目されるようになったのは、シャンゴの社長・関崎省一郎さんの度量の大きさなくして語れません」と、島津さんも堀口さんも口を揃える。シャンゴは高崎におけるパスタの先駆者。高崎のパスタ文化を育んできた関崎さんに話を聞いた。


初の試み「キングオブパスタ」開催!!

●スパゲティ専門店の草分け

 昭和45年に請地町で「シャンゴ」を創業。「当時、高崎市内でスパゲティをやっていたのは、連雀町にあったレストラン『かもしか』さんとうちだけ。ミートソースとナポリタンの時代でした」と関崎さんは笑う。


 モータリゼーションの時代を察知し、昭和47年に問屋町に移転。店舗はオープンキッチンで、丈の高いシェフハットにコックコート、ソムリエエプロンを身に着けた料理人たちの働く姿が斬新で活気があった。「今から約20年前頃は、個店として乾麺の消費量は全国一でした」という。「高経大のOBの方が、シャンゴのスパゲティが自分にとって初めてのご馳走だったと話してくれたときは嬉しかった」と、自身が築いた一時代を振り返った。


●日本初のスープスパゲティを考案した人

 関崎さんは職人として料理道を歩んできた。「料理人は勇気を持って料理を紹介していく義務がある」というのが口癖だ。当時人口約22万人の高崎という田舎で店を経営していけるか、不安がなかったといえばうそになる。しかし、群馬県の食は粉文化。スパゲティは必ず受け入れられると考えた。ボンゴレのスープスパゲティは関崎さんが発案者。辛口の“ベスビオ風”というのは他店でも定着しているが、これも関崎さんがベスビオ火山の名からとった。他に独特な甘いミートソースや、ロースカツの上にたっぷりミートソースでお馴染みのシャンゴ風スパゲティなど、ファンを引きつけた名品を誕生させた。


 シャンゴといえば大盛り。これが高崎のスパゲティの主流になった。関崎さんは昭和14年生まれで小学1年生で終戦を迎えた。日本中が腹をすかせ、腹いっぱい食べることが夢の時代だった。関崎さんのトラウマが、シャンゴの大盛りスパゲティを生んだ。


●“シャンゴ学校”と呼ばれて

 関崎さんの元から巣立ったお弟子さんは10名以上。市内や市外でパスタの店を立ち上げ、さらに孫弟子が巣立ちシャンゴ流が受け継がれていった。人からは「自分のライバルを育て、増やしていくとは愚かしい。フランチャイズにすればよかったのに」「シャンゴ学校だ」と言われたが、関崎さんはあくまで料理人という職人で、同じように自分の店をいつか持ちたいと願って修行に励む弟子たちを応援したいと思った。「お陰でライバル店は増えましたが、お互いに切磋琢磨し合って高崎がパスタの街として盛り上がり、たくさんのお客さんが高崎にパスタを食べに来てくれたら嬉しい」と話す。


 今回の「キングオブパスタ」の開催について、「私もアンテナを張り巡らし、頭を柔軟にしているつもりですが、70歳という年齢には及ばないこともあります。現在の消費者ニーズの手がかりとして、どんなパスタが支持を得るか勉強させてもらいます」と、かなり楽しみな様子だった。老舗として定着したイメージからの脱却を図り、新しい方向性を模索する。〝あのシャンゴ〟の頑張りが、さらに高崎パスタのクオリティを高めていく起爆剤になっていく。


(文責/菅田明則・新井重雄)

高崎商工会議所 『商工たかさき』2009年8月号


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