高崎新都市創造構想

(2010年2月)

高崎新都市創造構想

高崎の都市力を高め都市間競争に勝つ/テーマは集客、交流、創造

高崎商工会議所が「高崎新都市創造推進委員会」を設置/中間提言書を発表

 これからの高崎市の都市づくりは、日本有数の交通拠点性と多彩で特性のある都市資源を戦略的に活かし、新たな都市産業の創出や政令指定都市を目指した都市の機能や施設の整備が求められている。また、21世紀は都市の時代であるといわれ、地域主権や自立が求められ、都市は選ばれる時代になり、まさに生き残りをかけた都市間競争の時代が始まったといえる。


 そこで、高崎商工会議所では、高崎を「新しい都市」として創造していくためのグランドデザインを構想し、提言していくために「高崎新都市創造推進委員会」を設置した。


 「高崎新都市創造推進委員会」では、高崎市全域を集客都市、コンベンション都市として位置づけ、これを実現するための鍵となる「スマートインターチェンジ(スマートIC)」の建設推進とその周辺の高崎東部地域、高崎駅東口地域の整備・開発の推進、高崎駅西口を中心とした中心市街地活性化の推進を一体化した高崎の新都市創造をめざすための提言づくりに着手した。


 今年は高崎市制110周年という記念の年である。この節目の年を契機に、高崎市を群馬の中心から北信越・北関東の中心都市として創造していくために、直ぐに取り組むべき課題として、以下の通りの中間提言をとりまとめ、昨年11月12日に高崎市長に提言を行った。


 この提言の趣旨が、今後の高崎市のさまざまな施策の中で活かされ、高崎市の「交流と創造」をテーマにした都市づくりがさらに進展することが期待されている。


 高崎商工会議所としても、高崎市ならびに関係団体や機関との連携を図り、今回の提言を具体的な施策や事業として実現化していくために、今後も継続的な支援を積極的に行なっていく。


提言1 新たな産業副都心の開発・整備を!

スマートICの建設を契機に、高崎の都市軸を東に伸展させ、
広域的な業務機能の充実や新産業の創出を図る

 高崎商工会議所「高崎新都市創造推進委員会」では、高崎・玉村スマートICの建設を促進し、その周辺地域及びスマートICに至る高崎駅東口線(東毛広域幹線道路)沿線地域の開発・整備を検討するため「高崎駅東口線研究部会」を設置した。当該部会の研究を踏まえ、高崎・玉村スマートICの建設とともに、高崎の新たな産業副都心を創出することが高崎市の発展を期するとの考え方に基づき、以下の提言を行った。


 高崎市は関越・上信越・北関東自動車道と、上越・北陸(長野)新幹線などの高速交通網が十字に交差し、日本有数の交通拠点性を有している。平成23年度中には北関東自動車道が全線開通し、平成26年には北陸新幹線が金沢まで延伸される。また、JR高崎駅東口に発着する高速バスの路線数の増加など、高崎市の高速交通網はさらに高いレベルで充実していく。


 このような状況の中で建設が計画されている高崎・玉村スマートICの建設は、高崎都心部と高速道路・新幹線高崎駅と高速道路を直結させ、高速交通網がより便利に活用できることになる。高崎市の拠点性はますます高まり、高崎の都市力や存在感を増大させていくことになる。


 そこで、高崎・玉村スマートIC周辺地区を高崎市の新たな産業副都心として位置づけ、日本海と世界都市東京、そして太平洋を結ぶ新しい交流拠点エリアとして、現行の農業施策との調整を図りつつ、周辺環境とバランスのとれた開発・整備を推進していくことを提言した。


スマートICで世界とつながる高崎
太平洋・日本海、世界都市東京都の結節点に

 北関東自動車道の開通は、国際コンテナ港湾である茨城県常陸那珂港と、高崎都心部が直結されることを意味する。観光・ビジネスだけでなく物流等の分野においても地域開発のポテンシャルが大きく向上する。


 ひたちなか市は、国際コンテナ港である常陸那珂港や北関東自動車道の整備により、北関東地域の広域的な物流拠点の形成が見込まれている。また、国営ひたち海浜公園や大規模商業施設などのオープンにより集客力が増大しており、さらに、常陸那珂工業団地や港湾関連用地、センター地区などへの各種機能の誘導により、ひたちなか地区を中心として、人・物・情報が集積・交流する一大交流拠点として発展することを目指している。


 また、一方で、日本海側初の政令指定都市である新潟市は、環日本海の国際交流拠点としての都市づくりを進めている。昭和55年(1980年)に外貿コンテナ航路が開設された新潟東港区は、コンテナ貨物量が順調に伸び、航路数も増え、現在では釜山、東南アジア、中国航路が開設され、国際流通港湾としての役割が増大している。新潟空港は、2,500メートル級の滑走路をもち、国際線はハバロフスク・ウラジオストク・イルクーツク・ソウル・上海・ハルビン・グアムの7路線となっている。


 高崎が太平洋のひたちなか地区と、日本海の新潟市との結節点となり、しかも世界都市東京ともダイレクトに結ばれる拠点が高崎・玉村スマートICなのである。


高崎の産業・経済競争力を高めるための産業副都心

 高崎市は企業誘致のための工業団地が不足している。また、物流・商業団地についても、高崎卸商社街の建設以来40年余が経過し、経済環境や産業構造が大きく変化している中で、市内企業の市外流出の危惧を抱えている。


 このような現状を打開し、高崎が群馬県最大の産業都市として持続的な発展を遂げていくためには工業、物流、卸売、サービス等の幅広い業態の企業が進出可能な「新たな産業」団地の新規開発・整備が急務である。


 また、高崎の集客力を高め、高崎都心部の活性化や市域全体の交流人口を増大させていくために、高崎・玉村スマートICを活用した新たな集客施設の整備や誘致を計画していかなければならない。


 そのためには、高崎・玉村スマートIC周辺、そして高崎駅東口から高崎・玉村スマートICが建設される関越自動車道路を結ぶ国道354号バイパス(東毛広域幹線道路)沿線地域を「高崎新産業副都心」として開発・整備を行い、前橋、宇都宮、長野などの都市間競争を戦えるだけの産業・経済競争力を高めていかなければならない。


 「高崎新産業副都心」は、先進的な優良企業及び地元企業の誘致によって新たに安定した雇用を創出し、高崎市の財政力の強化をめざすものである。さらに、多様で高度な土地利用を図り、地域経済の活性化や新たな産業の創出を図るとともに、高崎・玉村スマートICを活用した高崎への集客を図っていくものである。


高崎の新産業副都心の開発エリアと整備の方向性

1、井野川周辺地区
 高崎・玉村スマートICと隣接する綿貫工業団地との連続性を図り、工業(製造業)の企業集積を高めていく新たな開発・整備を行なう。

2、高崎市地方総合卸売市場周辺地区
 卸売市場との連続性により、工業、物流、卸売、サービス等の幅広い業態が複合的に集積する新しい産業ビジネス団地の開発・整備を行なう。また高崎都心部への集客をにらんだ新たな商業施設の誘致・開発の検討も行なう。

3、高崎・玉村スマートIC直結地区
 スマートICの建設により生じる、関越自動車道、スマートICアクセス道路、国道354号線に囲まれたエリアの高度な土地利用を行う。スマートICの拠点性や農業などこの地域の特性や資源を活かした集客機能を重視した開発・整備を行なう。

4、質の高い住環境の整備
 高崎の新産業副都心の開発・整備の推進とともに、この地域に暮らす人々の市民生活の向上や生活環境の整備を図り、安心・安全・健全な地域社会を創出し、質の高い住環境とする基盤整備を図っていく。


提言2 高崎駅を中心に都心部の活性化を!

スマートICの建設を契機に、高崎の都市軸を東に伸展させ、
業務機能の充実や新産業の創出を図る

 高崎市は四半世紀にわたり高崎駅西口の再開発や区画整理を進め、都心部の再生を図ってきた。そして、全国の地方都市の中心市街地の地盤沈下が進む中でも、都心部に5つの大型店を擁している。しかしながら、一昨年秋の世界的な経済・金融危機や消費者の意識の変化、郊外や近県のショッピングセンターの増加など、さまざまな要因で高崎都心部も大きな影響を受けている。


 一方で、平成23年度中の北関東道全線開通、平成26年の北陸新幹線金沢延伸を視野に、関越道高崎・玉村スマートICの建設計画と、高崎駅東口ペデストリアンデッキの建設や駅舎の建替え、バスターミナルの建設など高崎駅東口の都市基盤整備が大きく動き出している。


 このような都市整備の進展と環境の変化に対応して、高崎市は新たな都市戦略の構築と高崎都心部への集客を増大させるための具体的なアクションプランが必要となってきた。


 北信越・北関東の交通拠点であり、群馬県最大の集客施設であるJR高崎駅との連携を図り、またそのパワーを活用することがますます重要である。高崎の都市としての顔であり、心臓部ともいえる「高崎駅周辺地域」「まちなか」の魅力や感度、利便性や快適性、そして情報発信力を高めることで、高崎都心部「まちなか」への集客を増大させることが、高崎が都市間競争で勝ち残る大きな鍵となる。


 そこで、「高崎新都市創造推進委員会」の「高崎駅周辺開発研究部会」では、高崎駅周辺地域の活力を維持・増進していくことが、高崎市全域、群馬県全域の発展を図っていくとの考え方に基づき、緊急に取組むべき以下の提言を行った。


高崎駅周辺を北信越・北関東最大の「まちなか」に!

高崎新都市創造構想

1、整備された東二条通り、高崎駅 前広場、ペデストリアンデッキなどを高崎都心部への集客を図るために有効に活用していく。具体的には東二条通りで歩行者天国の実施や歩道スペースの拡大、自転車レーンやパーキングの設置、飾花などによる景観整備を図る。

2、高崎駅周辺地域の企業、商店、地権者、住民が主体となった「まちづくり活動」やイベントを支援していく。また、高崎駅周辺地域の大型商業施設、文化施設、地域内のショップなどの連携による共同催事やキャンペーン・広報活動を推進・支援する。

3、高崎駅東口エリアの高度な土地利用を推進していく。そのために容積率の拡大などを行政に要望し、このエリアに広域業務機能を中心とした新たな都市機能の集積を図っていく。また、高崎駅の拠点性やスマートICを生かし、コンベンション施設などの建設計画に着手する。

4、高崎都心部の駐車場利用の利便性を図るために、ETCカードやモバイルなどのITを活用した新しい駐車場利用システムの導入を図るための研究や社会実験を行なう。また、中心市街地の駐車場無料による都心部集客のための社会実験を行なう。

 さらに、高崎駅周辺地域の活力の保持・増強を図るために、快適で魅力に富む環境の創出、美しい街並みの形成、資産価値の保全・増進、人をひきつけるブランド力の形成、安全・安心な地域づくり、良質なホスピタリティ、感度の高い芸術文化やエンターテインメント等について、さらに研究を進めて継続的に提言を行う。


高崎のライバルとなるか?前橋・本庄・宇都宮の動向

高崎新都市創造構想

着々と進む前橋南IC周辺開発

 高崎スマートICに近い北関東道前橋南IC周辺で、前橋市の「南部拠点地区」整備が進められている。北関東道を挟んだ面積約126ヘクタールのエリアで、北側は新産業業務・研究開発ゾーンとして、既に群馬産業技術センター、ベイシアビジネスセンターが建設されている。現在、計画が進められているのが、北関東道南側の流通ゾーン49ヘクタール。ICに近接の立地特性を活かし、広域に対応する総合的な物流、商業機能の導入を計画している。


 今回の整備計画で、前橋市は、近隣の住宅地を含めた55.5ヘクタールを市街化調整区域から市街化区域に編入し、近隣商業地域、準工業地域に用途変更した。エリア内は地区計画によってきめ細かな整備を計画している。整備手法は区画整理で、東西の2地区に分割して事業を実施する。西地区は通常の組合方式、東地区は業務代行方式を採用し、(株)ベイシアが代行業者として区画整理事業を行う。前橋市は、昨年夏、ベイシアによる事業計画を認可している。


 業務代行方式は、前橋市としても初めてで、代行業者が保留地を取得することなどが要件に含まれている。都心部で大手私鉄会社が沿線開発のためにこの手法をとることが多かった。


 前橋「南部拠点地区」と高崎・玉村スマートICは、直線距離で3キロを切り、目と鼻の先にある。長瀞バイパス横手大橋を挟んで、ほぼ一体的な地域だ。実際に、北関東道の利用者にとっては、高崎ICよりも前橋南ICのほうが高崎駅東口エリアへのアクセスはいい。


 もともと前橋「南部拠点地区」整備は、平成6年に策定され群馬県知事の承認を受けた「前橋・高崎地方拠点都市地域基本計画」に位置づけられた事業。前橋市では、県庁・前橋市役所~中心商業地~前橋駅周辺の「都心核」を支える「地域核」として、このエリアを位置づけ、重点事業として取り組んでいる。集客力の大きな商業系機能を導入することで、新たな拠点型複合市街地を形成し、「都心核」への波及効果に期待している。


 具体的にどのような商業施設が計画されているのか、まだ前橋市に示されていないと言う。しかし、前橋南IC直近のメリットを生かし、北関東道の全線開通をにらんでいるようだ。東京、埼玉、栃木、長野、新潟までを商圏とした集客に、前橋市も期待している。エリア内に前橋南ICを含んでいるが、料金所から直結することはできず、いったん玉村バイパスに出てから商業施設に進入することになる。


本庄新都心地区の整備 本庄早稲田駅周辺土地区画整理事業

高崎新都市創造構想

 本庄早稲田駅周辺土地区画整理事業は、本庄地方拠点都市地域(平成5年8月地域指定、平成7年3月基本計画承認)の拠点地区に位置づけられており、新幹線新駅の開設、早稲田リサーチパーク地区の整備及び土地区画整理事業により、本地域の経済、社会の中心として発展が期待されている。


 この新幹線本庄早稲田駅周辺の開発事業は、面積約65ヘクタールの区域でおこなわれ、駅前広場、幹線道路、公園等の公共施設の整備を行うとともに、早稲田リサーチパーク地区と連携しつつ、産業業務施設、商業業務施設の誘導及び良好な住宅地の形成を図り、魅力あるまちづくりを行うもので、「職・住・遊・学」の機能を備えた魅力ある街づくりを行うことを目的としている。計画人口は約2,200人、概算事業費は約141億円、施行者は独立行政法人都市再生機構である。


 この地域は、JR高崎線本庄駅から1~2km、関越自動車道本庄・児玉ICにも隣接し、国道17号・462号にも近接しており、上信越方面への交通の要衝となっている。


 なお、早稲田リサーチパーク地区は、早稲田大学が「情報・通信」「環境」を2大テーマとして研究開発を展開している。そして、「産・学・公・地域」の連携により地域に開かれた新たな研究・教育拠点の形成を目指し、本庄地方拠点都市地域において、次世代型地域づくりのモデル都市構築を志向し、国際的な科学技術革新を先導する産学官連携による学術研究都市づくりを進めるとともに、併せて、新産業・新技術の創出等による地域産業の振興や、企業・住民の研究・教育活動への支援などを通して、地域の発展に寄与する活動を展開している。


インターパーク宇都宮南 北関東自動車道・宇都宮上三川ICとダイレクトアクセス

高崎新都市創造構想

 宇都宮市にある北関東自動車道の宇都宮上三川ICの周辺に整備された「インターパーク宇都宮南」は、宇都宮都市圏の南玄関の拠点地区となっている。


 宇都宮上三川ICと「インターパーク宇都宮南」はダイレクトアクセス道路で結ばれている。JR宇都宮駅のある宇都宮市中心部へは県道を利用して真っ直ぐ約8kmという好立地。また、宇都宮環状線(新4号国道や国道121号)を利用し、市内の移動はスムーズにできる。JR宇都宮線雀宮駅より車で約5分、宇都宮駅より約12分。


 「インターパーク宇都宮南」には、ジョイフル本田、FKDショッピングモール、インターパークショッピングビレッジ、シネマコンプレックスの「ムービックス宇都宮」、カトレアガーデン宇都宮南などのショッピングモールや専門店街もある。これらショッピングモールの周辺には、家電やドラッグストアなど様々な商業施設が集積。


 この地域全体の駐車場収容台数は一万台以上といわれ、北関東最大の郊外型商業施設集積地区となっている。宇都宮都市圏のみならず、栃木県全域や茨城県からも多くの人が訪れている。


 また、「インターパーク宇都宮南」では、物流・商業・業務等の施設と住宅地とも調和したまちづくりが進められている。環境や人に優しい道路づくりや住民の憩いの場である大規模公園の整備、調整池は自然環境を保全するため、動植物が生息できるビオトープとして整備され、良好な居住環境づくりが進められている。  この「インターパーク宇都宮南」は都市再生機構が開発した複合型工業流通団地で、広さは約138ha(東京ドーム約29個分) あり、計画人口は約四千人(約1,210戸)となっている。


(文責/菅田明則・新井重雄)

高崎商工会議所『商工たかさき』2010年2月号

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