巨大ホームセンターの出現で塗り変わる商業地図

(2010年3月)

巨大ホームセンターの出現で塗り変わる商業地図

高崎の大規模小売業を検証する


 大八木町の群栄化学工業跡地が商業ゾーンへ変わる。渋川?高崎線に面した間口はそれほど広くはないが、奥行きは深く、ホームセンターのスーパービバホーム(1万2千平米)が核となり、スーパーのベルクを含む一帯が近々オープンする。隣地にはドラッグストアのカワチが既に営業しており、合わせて1万7千平米の売場のショッピングゾーンが形成される。


 現行法の「新まちづくり三法」のもとでは、郊外の大型商業施設の出店にはブレーキがかかったはずであり、工場跡に1万平米以上の商業施設はできないはずであるが、この件に関しては規制前の届出なので網にかからない。規制前の届出はこれ以外ないので、今回のビバホーム以降は大型店の出店はしばらくはないと思われる。


 しかし、規制のない1万平米以下では、飯塚町のウニクスの例や、旧群馬町くみあい飼料跡地の開発などは、今後も続くと思われる。


 近ごろの小売業界の話題は、新聞では経済面を飛び越えて社会面に進出している。小売業界の問題というより社会問題としてとり上げられている。


 「百貨店・スーパーの売上高、13年連続減」「ヨーカドー、8月閉店」「ユニクロ増益」など大きな見出しでニュースとなっている。変化のスピードが速くて小売業やその周辺のまちの対応が遅れているからニュースになるのだろう。


 いったい小売業はどうなっているのか。未来の予想などできようはずもないが、今後を考える上で手掛かりとなる材料を改めて検証してみたい。


●今や、社会問題に

 小売業の問題が新聞の社会面に進出して社会問題化した原因の一つは、取りも直さず中心市街地の衰退と表と裏の関係だからだろう。

 前橋の場合は駅前のヨーカドーが、一時は存続させる方向だと伝わってきたにもかかわらず一転退店が決まり、前橋駅前に大きな空白地帯ができそうなので、社会的な問題として大きく報道された。

 これは前橋市が中心市街地活性化のために、旧西友跡地を買収してまちの核を作ろうとしている矢先のヨーカドーの退店だからなおさらである。中心市街地を活性化させるのは、かなりのコストがかかるのである。


●それほど消費は落ちているか

巨大ホームセンターの出現で塗り変わる商業地図

 一方百貨店、スーパーの業績不振も新聞の社会面で話題となっているが、これは新聞が一方で必要以上に消費不況をあおっている手前、百貨店やスーパーの不振が格好の材料として餌食となったのではないか。消費不況と口を揃えて言うが、業種・業態別市場動向の小売業販売額(*左の表参照)はそれほど落ちてはいない。

 むしろ、百貨店・スーパーの不振は業態そのものに起因していると考えるのが妥当なのではないだろうか。(*左の表参照)

 百貨店・スーパーは、ショッピングセンターや駅ビル等と業際があいまいとなり、百貨店のステイタスに魅力を感じなくなった等、既に10年も前から議論されてきているし、スーパーに至っては「何でもあるが、買う物は何もない」とからかわれて久しい業態だ。百貨店・スーパーの不振の記事のネタは百貨店協会などの発表の数字からきているが、これは全国の数字だ。

 高崎には2つの百貨店があるが、この2店は全国の不振の数字がそのまま当てはまるわけではない。地方百貨店は都心にある巨大百貨店ほど他業態との業際が明確でなく、様々な工夫で地域に根付いた事業を展開しているのが現状だ。

 都心の、例えば日本橋の高島屋本店は昭和初期に建築された建物だが、国の重要文化財に指定されている建物で営業しているし、同じ頃に建築された新宿伊勢丹はゴシック様式と当時最先端のデザインを取り入れた新宿のまちの顔としての役割を持った百貨店で、まさにステイタスそのものを表現しているのが都心の百貨店だ。

 一方、ある地方の百貨店は、閉店後そのままスーパーに転向されている名ばかりの百貨店でも名前は同じ百貨店だ。

 品揃えも百貨店ブランドは一応揃ってはいるが、アパレル業界もいつまでも百貨店だけに頼るわけにはいかないので、似たような姉妹ブランドをショッピングセンターへ流したりするから業際があいまいになるのはやむを得ない。


好調な製造小売業や新興ビジネス

 スーパーの不振は、ドラッグストアや新興勢力の専門店、ショッピングセンターへの流れが止まらないのが原因なのは明らかであろう。

 一方、ユニクロやニトリを代表とする製造小売業は好調だ。ネット関連も悪くない。ドラッグストアは一本の法律でガラッと状況が変わってしまう業態だが、スーパーの分野への進出は止まらない。

 高崎郊外のロードサイドの小売業も衰えを見せない。偶然にも、家電量販のデオデオ、コジマ、ヤマダが撤退、移転した跡に、新興ビジネスである中古・リサイクル関係が3件とも入居開店した。これは時代の要請なのかもしれない。飲食のロードサイドへの進出も勢いがあり、飲食プラス小売のミニ開発も今後盛んになると思われるし、中心市街地からの転出も続いている。

 高崎商圏の百貨店以外の小売業は次頁の通りであるが、ショッピングセンターの新規開店は「まちづくり三法」(解説:改定まちづくり三法参照)で今後しばらくできない。これらの大型店は中身が少しずつ変化している。高崎商圏ではないがイオンモール太田の例では、二核のうちの一核であるセキチューが退店して、替わりにユニクロ、ギャップ、ダイソー等に入れ替わる。高崎イオンも開店以降既に10区画程度の入れ替えがあった。駅ビルや同じ業態のビブレも同様、入れ替えは続いている。

 イオンモールのような優良ショッピングセンターでも営業不振で退店する店があって、空いたスペースには時流に合ったショップが次々と入れ替わる。人間の体を構成している細胞が代謝を繰り返して生命を維持し続けるようにショッピングモールも平然と継続しているのである。

 時流はショッピングセンターにあり、といった乱立時代は終って既存の活性化を目指す時代となってはいるが、実は今日の段階は、ショッピングセンターのテナントの撤退時代とも言われている。撤退どころか、一方ではテナントが集まらない時代でもあるのだ。

 マクロ経済学的に見て日本全体で需要に対して供給が多すぎ、様々な業界で再編が今以上に進んでも良かった、というある経済学者がいたが、高崎の商環境は今まさに供給過剰でオーバーストア、同質競争の繰り返しの感じがしてならない。家電が移転した後に、つい最近までなかった新ビジネスのリサイクルショップが張り付いたように、新しい需要を生む商売ができないものだろうか。

(高崎商工会議所小売部会長 根岸 良司)


●「改正まちづくり三法」とは

 まちづくり三法は、大型店の出店規制を目的とした「大規模小売店舗法(大店法)」に代わる「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」と「改正都市計画法」「中心市街地活性化法」の総称で、平成12年に施行された。

 深刻さを増す中心市街地の空洞化に歯止めをかけ、都市の再構築を進めるための枠組みとして期待されたが、その後も全国的に中心市街地の衰退傾向が顕著になり、様々な問題が顕在化し、平成19年11月現行法に改正施行された。郊外における大規模な農地転用や無秩序な開発等により、都市機能の拡散が加速されたことによる影響も大きい。

 新法による「改正都市計画法」は、床面積1万平米超の大型店の郊外出店を規制するものであるが、全国で施行前の駆け込み出店申請が相次いだ。

●高崎のまちづくりビジョン「高崎市中心市街地活性化基本計画」

 「まちの顔」ともいえる中心市街地の空洞化は、商業だけの問題に留まらず、企業や伝統・文化、地域コミュニティにも大きな影響を与え、地域社会全体の衰退を招いた。

 平成19年、中心市街地の再構築など、コンパクトで賑わいのあるまちづくりを趣旨とする「改正まちづくり三法」が成立し、各地で様々な取り組みが進められた。

 高崎市も、郊外や近隣市への大型小売店の出店が相次ぎ、中心市街地の商業に及ぼす影響が懸念され、都市基盤の整備や商業の活性化など、各種施策を総合的かつ一体的に推進するため「高崎市中心市街地活性化基本計画」を策定し、平成20年11月11日内閣総理大臣に認定された。

 高崎駅東口周辺や城址地区の拠点整備、音楽や文化イベントの充実、各商店街の魅力づくりを積極的に推進し、「歩いて楽しく、商都・高崎ならではの様々な魅力に出会えるコンパクトな中心市街地」の形成を目指す。評価指標・数値目標を設定し、平成26年3月までの5年5ヵ月で実施する。


●ホームセンター

 住関連商品を中心に生活必需品となる日用消耗品を低価格志向の戦略というのがホームセンターであるが、カインズは製造小売業の方向でプライベートブランド(PB商品)を提案し伸ばしてきた。

 製造小売業はファッション業界ではユニクロでありインテリアではニトリが先行しているが、ホームセンターではカインズが先行している。しかし業界はセルフサービスの商品を中心に総合化し大型化して成長はしたが専門性が失われた面もあった。

 ホームセンター業界は主要8社で市場の半分程度を占めているようであるが、今回出店する「スーパービバホーム」は資材型大型店舗として平成17年年以降伸ばし続けている業態のようである。

 今回のビバホームは建設業者など、プロの利用にも耐えるように専門色が強いようだ。したがって小売業でありながら卸売業に近く、営業時間も資材館は朝7時からとなる。


メトロ高崎店(仮称)

 今回、旧群馬町「くみあい飼料」跡地に出店する「メトロ」は小売業ではなく会員制卸売業で、同じ外資系でアメリカ生まれの「コストコ」とは違い一般の客はお断りだ。

 ただし、飲食店、ホテルなどの営業許可証が有り審査が通れば会費は無料になる卸売業である。

 売上構成は食品関連95%、うち60%が生鮮3品となっており、ディスカウンターではないが、全ての飲食関係者に向けたものだ。

 外資系は今まで食品に弱かったが、今度の「メトロ」は少し違うらしい。わが日本人の生鮮を主体にした高い質の食文化に外資系は対応できないで、「カルフール」さえ撤退した。「メトロ」は卸売業とはいえ小売業のあり方に影響を与えることは必至である。

 ※メトロは卸売業なので、小売業と違って届け出も地元への出店説明も必要ない。そのためか住民からはいまだに何が出店するのか理解されていない。

 群馬ではなじみのないメトロだが、世界32ヶ国に2,195店を展開し、売上高世界第三位の小売業者。02年に日本上陸。現在6店舗。メトロ横浜いずみ店の例で、営業時間はAM6?PM7時、元旦以外は無休、高崎のお店は不明。


(文責/菅田明則・新井重雄)

高崎商工会議所『商工たかさき』2010年3月号

高崎の都市戦略 最新記事

勝ち残る専門店

グラスメイツ
グラスメイツ
メガネ店の店員も買いに来るメガネ専門店
辰巳
辰巳
印傳と陶器の専門店/県外からもお客様
有限会社三洋堂
有限会社三洋堂
パソコン全盛時代に書道のおもしろさを伝える

すべての記事を見る