中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?

 高崎商工会議所『商工たかさき』2011年2月号のグラビアページで夕暮れ時の“デパ地下”の生鮮食品売り場を紹介した。スズラン百貨店、高崎髙島屋、高崎モントレーの3店舗を取材。主婦やOL、単身サラリーマン、車を運転しない高齢者で賑わっていた。

この企画をきっかけに、中心市街地に住む人から様々な意見を聞くことができた。ある人は「中心市街地は、店がたくさんあるので買い物がしやすい」と言い、別の人は「店がないから買い物しにくい」と話す。そこで今回の特集は、本当に買い物がしにくいのか、性別・年齢・家族構成の違いにより、主に青果、精肉、鮮魚の買い物に関して調べてみた。

中心市街地の現状・まちの暮らし・生の声

 駅からおよそ半径1キロメートルの範囲に地域を限定し八百屋、魚屋、精肉店は、実際にどの位あるのかを調べてみた。小売をしている八百屋は16軒、魚屋は7軒、精肉店は11軒で、意外にも軒数は多い。

 では、中心市街地に暮らす人たちは、どんな買い物の仕方をしているのだろうか。また、まちなかの買い物が不便だと思う人は、何が不便なのだろうか。生鮮3品、青果、鮮魚、精肉に関して、どのように買い物をしているかを聞いてみた。

◇Tさん、20代女性、1人暮し、鶴見町

主な買い物先
青果:高崎モントレー、ヤオコー高関店
精肉:高崎モントレー、ヤオコー高関店
鮮魚:高崎モントレー、ヤオコー高関店、魚留

 通勤時間短縮のために、2年前に鶴見町のアパートに引越してきました。野菜や魚、肉などは、仕事が終わる午後6時30分すぎに、まちなかへ歩いて行って買い物をします。よく買い物をするのは、「モントレー」の1階。値段も安く、閉店時間が午後8時と、ほかのデパートに比べ遅くまでやっているので、利用しやすいですね。給料が入って「ちょっといいものを」という時は、双葉町のスーパー「トミー」に行きます。「トミー」はちょっと高いですが、珍しいものがあるので好きですね。

 昔からある個人店やスーパーは、顔馴染みではないので入りづらく、あまり行きませんが、先日自宅近くのあら町の「魚留」に勇気を出して入ってみました。安くておいしい旬の食材を教えてくれました。イカを買ったのですが、その場で刺身にしてくれて、本当においしかったです。昔は、下横町あたりは店が連なっていたそうですが、今は少なくなってしまったと話して下さいました。私は徒歩で買い物をしているので、店が点在すると行きにくいと感じるので、もっと店が増えて欲しいですね。

 車を持っているので、重いものや日持ちがする日配品、洗剤などの日用雑貨は、仕事が休みの日に高関町の「ヤオコー」で、まとめ買いをしています。今、気になっているのは田町にある「すもの食堂」のベーグル。仲間うちでおいしいと評判なので、買いに行こうと思います。

◇Hさん、70代女性、2人暮し、東町

主な買い物先
青果:トミー、高崎モントレー、アピタ高崎店
精肉:トミー、高崎髙島屋、
鮮魚:トミー、スズラン百貨店

 夫の定年をきっかけに、夫婦2人で埼玉県から高崎駅東口のマンションを購入し、転居して来て12年経ちました。夫は車を運転しますが、私は現在徒歩で行動していて、自転車にも乗っていません。買い物は、「トミー」、「モントレー」、「髙島屋」、「スズラン」が多いですね。都合が合えば夫と一緒に買い物に行きます。車で「アピタ」にまで足を伸ばすこともあります。

 肉に関しては、髙島屋のものが品質がよく気に入っています。魚に関しては、夫が北海道出身なのでこだわりを持っています。残念ながら、高崎の魚は夫の目にかなうものが少ないです。「スズラン」などのデパートが行う“北海道展”は重宝しています。干物などをまとめ買いし、冷凍して使うことが多いです。

 駅東口は、病院や日用雑貨を扱うドラッグストア、コンビニなどもあり便利です。欲を言えば、食料品を買える店がないので、デパ地下のようなものがあると助かります。私は、週に2回、仕事で前橋市に電車で行っています。帰りに食料品を買って帰ろうと思いますが、疲れて駅西口方面に足が向きません。高齢者にとっての一歩は、非常に重要。私は健脚な方だと思いますが、もっと近いところに食料品店があればいいなと思います。

支援が必要な方々の買い物行動は?

 中心市街地周辺にお住まいで要支援の方たち、約100名のお宅を訪問している支援員の方に話をうかがった。

 以前はほとんどの人が自宅近くにある個店に行っていたようですが、次々に閉店してしまい今では遠くまで足を伸ばさないと食料品が調達できない人が多いです。子どもと同居の場合は車に乗せてもらう、買ってきてもらうなどしています。ひとり住まいの男性は、買い物に行く習慣がないため、お弁当の宅配サービスを利用している人が圧倒的に多いです。市の配食サービスを利用するほか、「ワタミタクショク」、「シー・アンド・エス」などの宅配弁当を取り寄せ、数回に分けて食べるなど、上手くやりくりしているようです。コンビニエンスストアで弁当を買って食べる人は、予想以上に少ないですね。

 買い物に行けない方たちが、よく利用しているのは、並榎町にある「両水」の宅配サービスです。1,500円以上注文すると自宅に届けてくれるシステムで、チラシを見て注文されているようです。「生協」なども利用している人も多いですね。近隣の人が取りまとめてくれているようです。

 鶴見町のマンションにお住まいの方のところには、週に1回、車に野菜や果物や頼まれた日配品などを積んで「移動販売車」が訪問してくれるそうです。きちんと商品が陳列してあるので、自分で選ぶ楽しみも加わり、大変満足していらっしゃるようです。要支援の人たちも、買い物を楽しみにしている人が多いため「自分で見て、選べる」ことができる「移動販売」のシステムはいいなと思います。

 要支援の方たちは、好んで個店とお付き合いをする方も多くいます。たとえば電気店の場合、電球が切れた時に取り付けに来てくれる、製品に対しアドバイスをしてくれるなど、かゆいところに手が届くサービスをしてくれるので、量販店に比べ多少値段が高くても、個店と付き合いたいと思っています。

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?毎週訪れる移動販売車で、楽しく買い物。

 また、よく出てくる個店の名前は本町の「このえパン」。店主の人柄をみなさん気に入っていらして、常盤町、高砂町辺りからも自分で買いに出かけているようです。長寿センターに出かけることと同じように、買い物はコミュニケーションの場所で、店の人やお客さんと話ができる貴重な場所。家族以外の横のつながりが持てるからです。少し離れたところに店があっても、出かけて行きます。店は昔からの付き合いを続けたいと考える、お年寄りの欲求を満たしてくれる場所のようです。

◇Mさん、40代女性、5人暮し、常盤町

主な買い物先
青果:マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店
精肉:マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店
鮮魚:マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店、今福魚店

 常盤町に夫と20歳、15歳、9歳の息子3人の家族5人で暮らしています。時と場合によって、店を使い分けています。

 仕事が終わって帰りによく寄るのは聖石町の「マルシェ」です。肉、魚、野菜、全て買います。飯塚町の「ヤオコー」にもよく行きます。ドラッグストアや100円均一の店などもあり、一度に全部揃うので便利ですね。魚に関しては、自宅近くの柳川町にある「今福魚店」は旬の魚、お勧めの料理などを教えてくれるので好きです。希望すれば魚をさばいてもくれます。鮮度もとてもいいので、遠方から来るお客さんもいるようです。

 惣菜を買うときは「スズラン」。牛乳、ヨーグルト、パンは、「生協」のものが気に入っているので、定期購入しています。妊娠していたときは、「両水」の宅配をよく使っていました。

◇Tさん、50代男性、3人暮し、八島町

主な買い物先
青果:高崎モントレー、マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店
精肉:高崎髙島屋、マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店
鮮魚:魚岩、高崎髙島屋、マルシェ高崎店、ヤオコー飯塚店

 住まいは八島町。家族構成は、妻、子ども2人ですが、うち1人は昨年進学のために別居しています。週末は自分も料理をするために、買い物はよく行きますね。刺身や貝類は石原町の「魚岩」が安くて良い品を提供してくれるので好きです。

 徒歩や自転車での買い物も多く、作る料理によって利用する店を使い分けています。肉や魚は「髙島屋」が多いです。「モントレー」がスーパーのようになって、食品は一通りのものがまちなかで買えることができるようになりました。

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?カジキマグロの看板が目印の「魚岩(石原町)」、店内には惣菜も並ぶ

 私はまちなかの店で買い物をする方だと思いますが、もっと品揃えが増えるといいと思います。魚屋で小売する商品が少ないと、目的の食材が欲しい時だけしか足を運びませんが、色々あれば、何の料理を作るか決まっていない時も、ふらりと寄れますから。車を使うときは飯塚町の「ヤオコー」、聖石町の「マルシェ」などを利用しています。

買い物上手な中心市街地の人々

 このように、中心市街地と駅周辺の地域に住む、様々な家庭状況、年代の人たちは、様々な思いを持ちながら買い物をしている。  若い世代は、車での行動が多かったり仕事を持っていたりするため、通勤途中にある郊外のスーパーに寄るケースが多い。たくさんの荷物を運べるため、なるべくまとめ買いをしたいと思っているようだが、足りないものを買う場合は、近くの個店に行っている。また、こだわりのある食材は、決まった個店で購入している。

 健康な高齢者は、食事の量も若い世代に比べ少ないことから、徒歩で行ける中心市街地の個店やデパート、スーパーなどでほとんどの用が足りている。量より質を重視するために、食材によって店を上手に使い分けているようだ。

 支援が必要な高齢者の場合は、自宅から店までの距離が短いことが買い物の必須条件である。近くに店がない人は、家族に頼るか宅配システムを上手に使っている。よく聞かれたのは、「両水」。その日の午後1時までに注文すると、その日に届けてもらえるシステムが、「生協」などの宅配に比べ利便性が良いとのことだった。

 鮮魚に関しては、個店の方が良いものが手に入ると認識している人が、世代を問わず多いようだ。若い人は個店での計量買いに慣れていないこともあり、店を訪れるのに抵抗を感じるようだが、一度入ってしまうとその良さを感じている。口コミでその個店の良い情報を聞くと、抵抗なく店に入れるようだ。

 マンションに住んでいる人も、車を持っている世帯が大半であるが、生鮮3品については、ほとんど近くで買い物をしている。中心市街地のエリアであれば、自転車や徒歩で出かけている。

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?「両水」の宅配サービス車

 都内から移り住んできた人に関しては、個店での買い物に慣れているせいか、買い分けがいっそう上手であると感じた。肉は○○、魚は○○、と面倒がらずに買い物をしているようだ。中心市街地の人たちは、世代を問わず、個店の情報をよく知っていて、どこの物が口に合うかなどの情報をたくさん知っている。自分の好みやライフスタイルに合う店を選りすぐっていることがわかった。

買い物に困らない中心市街地

 インタビューした人の大半の人が、生鮮3品は、何とか近くで調達するが、雑貨などは郊外で買い求めると言うことだった。洗剤やトイレットペーパーなどは、ドラッグストアなどがあるので中心市街地内でまかなえるが、文房具やドッグフードなどのように、頻繁には買わないがなくては困る雑貨を売っているところが郊外に限られているからのようだ。そんな中、品揃え豊富な店として名前があがったのが南町の「市川ストア」。この老舗スーパーには、まんべんなく商品が揃えてあるので、若い世代も足を運んでいるそうだ。

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?鳥専門店「とりじん(嘉多町)」

 近年になってスーパー、デパート、コンビニエンスストアの垣根がなくなり、以前に比べ品揃えが均一化してきている。雑貨を扱う店舗は以前より増えているようである。また、販売形態が多様化しており、宅配のほか、少数であるが、移動販売なども行われている。近年、中心市街地に居住する人が多くなっている。マンション建設が頻繁になってからその傾向は顕著である。これにともない、病院などもこのエリアに進出しつつある。

 個店とは専門店である。つまり店で扱う商品の専門家。「食育」という言葉が生まれる以前からお客とのやりとりの中で、お客にそれを教えてくれていた。例えば、旬のものや調理法や産地などの情報である。コミュニケーションや人と人とのつながりが改めて考えなおされている現在、日常の買い物のスタイルも見直し、市街地の個店を上手に利用してはいかがだろうか。

善意で始めて30年/地元の人との信頼を深める

中心市街地で生鮮食品を買い物する店がないって言うけれど、本当?両水並榎店店長・佐藤 圭一さん

 両水(並榎店、石原店、玉村店、新町店)では、購入商品の宅配サービスを行っている。当日入ったチラシを見て午後1時までに電話注文し、購入金額が1,500円以上であれば、配達料無料で自宅へ配送してくれる。時間指定はできないが、定期購入とは違い、その日にすぐ手元に届くこと、配達料が無料であることから、車を運転しない高齢者や、小さな子どもがいる若い世帯などから支持を得ている。

 店でたくさん買い物をしたが、自転車や徒歩で来店したので持って帰れないお客さんも利用可能。夏場は、ペットボトル飲料の消費が多くなるために、箱で買って、このシステムを利用する人が多くなる。店でたくさん買い物をしたが、自転車や徒歩で来店したので持って帰れないお客さんも利用可能。夏場は、ペットボトル飲料の消費が多くなるために、箱で買って、このシステムを利用する人が多くなる。

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