これぞ「ラジオ高崎」の底力

これぞ「ラジオ高崎」の底力写真を拡大4月26日にオープンした高崎駅東口の新スタジオ。音楽やエンターテイメントはもちろんだが、いざという時に市民や来訪者への安心感を与える情報発信基地としての役割が期待される。

コミュニティFMとしての使命

 3月11日に発生した東日本大震災。高崎市内では人的な被害がなかったものの、鉄道など交通機関のマヒによる帰宅難民や停電による交通渋滞が発生した。そのとき、「災害時の情報発信」を担うコミュニティFM局「ラジオ高崎」では、どんなことが起きていたのか。

 当日の対応や震災によって見えてきた課題などについて、ラジオ高崎の放送部長佐久間俊之さんにお聞きした。

地域住民向けFMの使命

 ラジオ高崎が開局したのは今から14年前、阪神淡路大震災の発生から2年と少し経過した頃。阪神淡路大震災からの復興に向け、地域住民向けのFM局が活躍したことで、全国各地にコミュニティFM局の開局が相次いでいた。災害に関する情報発信には県域では大きすぎる(聞き手の状況が違い過ぎる)こともあり、一つの自治体の一部を対象としたコミュニティFM局が情報発信に調度良いサイズであると考えられているからだ。そんな経緯もあり、ほとんどのコミュニティFM局が「災害時の情報発信」を開局理由に挙げている。ラジオ高崎も勿論「災害時に市民の皆さんに役立つ情報を発信する」という大きな使命を持っている。

 今回の震災でも、被災地を中心に臨時災害放送局の開局が相次いだ。行政の要請による期間限定の新規開局、従来のコミュニティFM局の期間限定増力(放送を遠くまで届けるため通常20Wを50Wや100Wまで規制緩和)など、20局以上が臨時災害放送局として開局している。但し、現状では群馬県及び首都圏には電波の空きが少ないとされており、仮に関東地方で大きな災害が発生した場合、同じような新規開局が出来るかは不明である。だからこそ災害時にはラジオ高崎の底力が発揮される。

早く正確に伝える

 平成23年3月11日、高崎市を襲った震度5強の大きな揺れ。高崎駅西口駅前のラジオ高崎社屋も長時間にわたって大きく揺れ、余震も繰り返された。西口駅前通りには周辺の建物から次々に人が出て来ていた。今まで見たことの無い光景。何が起きているのか、まったくわからない状況だった。取りあえず、災害放送マニュアルに従って「大きな揺れを確認した」、「余震の恐れがある」、「まず身を守る」などの情報を放送しながら、様々な方法で状況を確認。その後、直ちに放送内容をすべて変更し、緊急情報を中心とした特別編成に切り替えた。

 ラジオ高崎本社は幸い停電にならなかったので、情報収集と情報発信を続けることが出来たものの、高崎市内でも多くの地域が深夜まで停電が続いた。今、自分が感じた“大きな揺れ”の原因が何なのか。正確な情報を出来るだけ早く知ることが出来るか出来ないかで次への準備や対応に雲泥の差が出る。

情報収集の難しさ

 被害状況や安全に関する情報を伝えるにあたり、高崎市内の被災状況の入手が非常に難しかった。ラジオ高崎は日頃から、各種警報の発令、地震発生、火災の発生、公共交通機関の乱れ、停電などの情報は、市やJRなどから連絡を得て伝えている。そうした情報は今回も放送したものの、「市内でどんな被害が出ているのか」、「この後、何に気をつければ良いのか」、「電気はいつ復旧するのか」という視聴者が最も関心のある情報を集めるのに苦労した。「集まった情報を流す」のに加えて、「刻一刻と変化する“聞き手が欲している情報”を早く、正確に集める」のが重要であると改めて実感した。

 視聴者の皆さんからの身近な情報を寄せていただいても、すべてをそのまま放送するのは難しい。「どうやって情報を集めたのか」、ラジオは少なくとも裏付けを取り、正確な情報を伝えなければならない。登録制のレポーター制度の復活等、今回の震災を契機に、改めて正確な情報の収集方法を確立しなければならないと感じた。

全てが不安の中で

 計画停電の実施や福島第一原発事故は被災地から離れた我々の生活にも大きな影響を与えた。余震、放射線、ガソリン不足などを含めて、今までに感じたことのない不安感が続く中、「信号は動くのか」、「水道は使えるか」、「お店は開いているか」、「学校、会社は」など、様々な「?」が解消されないまま計画停電はスタートした。また、「停電中、ラジオ高崎に出来ることは何だろうか」という手探りの状況だった。

 当初は「エレベータに乗らないで」、「交差点では減速を」、「節電に協力を」などの基本的な注意事項を繰り返していたが、リスナーの皆さんからのお便りを募り始めたところ、メッセージやリクエストが急激に増え始めた。「停電なんて被災地に比べれば苦じゃない」、「ラジオ高崎をはじめて聞いた」、「音楽に元気づけられた」、「情報が無いので有難い」など、1時間に100通を超すメールが寄せられた。特に夜の計画停電の際には、ラジオ高崎を聞きながら、懐中電灯の灯りで過ごした方が多かったようだ。こういった反響から、ラジオ高崎には「身近な情報」に加えて、「同じ地域に暮らす人々の連帯感」、「孤独感の解消、安心感」を求めていただいていることがわかった。

 勿論、好意的な意見だけではなかった。「音楽を垂れ流すのは電力の無駄」、「発言が無神経」、「地震の発生に関する情報が遅い」、「ガソリンの販売情報を何故流さないのか」等というお叱りやご意見もいただいていることも記しておかなければならない。

ハッキリ見えた課題

 今回の震災を受け、痛感したのは「自助」、「共助」の大切さである。大震災において、「公助」には限界があることを感じた方も多いはず。自分の身は自分で守る意識、人々が助け会う意識を持たなければならない。

 ラジオ高崎は「情報収集力の向上」、「電源や燃料の確保」などの「自助」、住民や団体との連携の強化といった「共助」の考え方を忘れずに、もっと皆さんの役に立つ存在になることを目指さなければならないと感じている。また、普段から地域の一体感を醸成するような放送を心がけていきたいと考えている。

あの時、ラジオ高崎が伝えた情報が役に立ちました!

 震災の日、出張で高崎に来ていて帰宅難民となった人々が大勢いた。駅前のホテルはあっという間にどこも満室となり、行くあてがなくなったという声がツイッター上に見られた。そこにラジオ高崎から市役所の会議室が宿泊所として開放されたという情報が流れてきた。すると、それを聞いていたリスナーが困っている方に向けて、ツイッターに書き込んだ。まもなく「助かりました。ありがとうございます」という返信があった。

 他にも、計画停電の開始をレポートし、信号が消灯した交差点や商店街の様子などを伝えて、安全運転や冷静な行動を呼びかけた。

 地域にとって一番身近で一番早い情報を伝えてくれるコミュニティFM放送局として、ますますその役目に期待が高まった。

勝ち残る専門店

グラスメイツ
グラスメイツ
メガネ店の店員も買いに来るメガネ専門店
辰巳
辰巳
印傳と陶器の専門店/県外からもお客様
有限会社三洋堂
有限会社三洋堂
パソコン全盛時代に書道のおもしろさを伝える

すべての記事を見る