まちなかの回遊性と賑わい創出

商都博覧会と高崎バルは救世主となるか

 まちなかの活性化と、にぎわいの創出をめざし、新しい枠組みの連携イベントが動き始めている。連携の発想はとてもシンプルで、同じ日に複数のイベントを並行して開催し、盛りだくさんな楽しみを演出しながら、まちなかに人を集め回遊してもらうのが狙いだ。

 昨年は、「高崎音楽祭」、「高崎マーチングフェスティバル」と、中心市街地の大型店5店が連携する「高崎商都博覧会」が初開催され相乗りを成功させた。今年は、さらに100店を超える飲食店が参加する「高崎バル」が加わり、10月22日(土)、23日(日)をヤマ場にしたフェスティバルウィークとなる。

 今年の「高崎商都博覧会」は、大型店5店に隣接する3つの商店街が協力し、高崎駅周辺の大型店とスズラン高崎店をつなぐ。大型店と商店街が既存の組織にとらわれず、パートナーを組んでイベントを盛り上げる手法で、これからのまちなかイベントを考える上で興味深い展開が期待できそう。

まちなかに人を集める仕掛けづくり

 高崎のまちなかでは、“まちづくり”、“賑わいづくり”のため、年間を通して大小様々な取り組みが行われている。特に全国都市緑化ぐんまフェア高崎会場の開催に前後して、まちなかを舞台にすることの意義が再認識され、“音楽”、“販売促進”、“地産地消”など多彩な展開が見られるようになった。また取り組みの蓄積の中で、イベントを並行して開催することで、多様な層の関心を引き、にぎわいの相乗効果を広い範囲に波及させることが実証できた。

 高崎の秋を彩る高崎音楽祭と高崎マーチングフェスティバルは、開催20年を超える姉妹音楽フェスティバルで、都市文化の祭典として、まちなかでの展開を強く意識している。高崎音楽祭は、ストリートでもライブを行う。マーチングのパレードは、高崎屈指の集客力で沿道に数万人を集める。しかしパレードが終わると、潮を引いてしまうのが惜しまれ、より効果的ににぎわいをまちなか全体に波及させることができないかと、商業者からの声は以前からあった。

 音楽祭やマーチングフェスティバルの実行委員会は、「まちなかで開催することで、集客面でその機能を十分に果たしている」と言う見解だ。集客をどう回遊させるかは、まちなかの商業者側の対応が必要ではないかと唱えている。

商都博覧会

まちなかの回遊性と賑わい創出昨年の商都博覧会

まちなかの回遊性と賑わい創出高崎5店ぐるりんスタンプ

ありそうでなかった大型店連携

 具体的な取り組みとして、高崎音楽祭とマーチングフェスティバルに、商業イベントが相乗りしたのは、昨年の高崎商都博覧会が初めてだ。地方都市の駅前に大型店が連立していることは、現状ではきわめて少なく、高崎の商業力を示すイベントとして、商都博覧会が持ち上がった。

 商都博覧会では、「スズラン高崎店」、「高崎髙島屋」、「高崎ビブレ」、「高崎モントレー」、「ヤマダ電機LABI1高崎」の5店が連携した。各店の買い物でスタンプを集め、共通商品券が当たる「高崎5店ぐるりんスタンプ」を行い、顧客の回遊が図られた。本来競合関係の大型店5店が共同してイベントを実施するのは、全国的にも珍しい事例で注目を集めた。

 昨年の実績を踏まえ、第2回となる今年の高崎商都博覧会では、景品金額、本数ともに昨年よりも増やし、大勢のお客様に喜んでもらう計画だ。

まちなかの回遊性と賑わい創出昨年の商都博覧会

商都博のまちなか展開に第一歩

 商都博覧会の本来の目的である、まちなかの回遊性を高めるため、今年は東二条通りの「チームハナハナストリート」、「大手前慈光通り商店街」、「中部名店街」の3商店街と連携した事業展開をはかる。「高崎5店ぐるりんスタンプ」の抽選会場は、大型店各5店と今年から新たに慈光通りにも開設される。

 高崎の中心市街地は、スズラン高崎店のある城趾地区と高崎駅周辺の2つの核と、両ゾーンをつなぐ商店街によって力を発揮してきた。中心市街地の歩行者通行量が減少する中で、核と核をつなぐ商店街の連携を深めていくことは重要だ。もちろん商都博覧会単発で、中心市街地の課題を抜本的に解決することはできないが、昭和50年代の大型店進出ラッシュ以降、大型店との共存路線を打ち出してきた商店街にとって、認識を新たにするきっかけになるだろう。

まずは持ち駒を活かす努力

 商都博覧会にあわせ、大型店では催事やセールを開催するが、年間を通して行われている物産展の中で、この時期に合わせたイチオシのものを企画している。商店街のイベントとしては、チームハナハナストリートでは、まちなかバザールの「ハナハナマルシェ」と仮面舞踏会イベントの「高崎マスカレード」。大手前慈光通り商店街では、季刊の商店街誌による抽選会。中部名店街では、商店街で買い物をしてくれたお客様対象の「寄席」を開催するほか、高崎バルの「バル村」が出店する。

 商都高崎の大イベント「えびす講」を1カ月後に控えた10月に、商店街として何ができるか、とまどいもあったそうだが、結論は「できることをやろう」ということだった。

 商都博覧会と商店街連携について、大手前慈光通り商店街会長の清水謙一さんは「商店街単独の力は限られている。その限界をどう超えていくか、一つのきっかけになるのではないか」、ハナハナストリート代表の岡田恵子さんは「商店街単独では力が足りない。何かやらないことには次には進めないので、協力できる人同士がアクションを起こすことが大切。やりたいことがあったら待っていてはいけない」、中部名店街理事長の友光勇一さんは「まちなかの回遊性が低下していることは、肌で感じている。昔の商店街には大型店に負けない馬力があったが、パワーダウンしている現状は否めない。きっかけをみんなで作りやり続ける努力が必要だ」と、それぞれ考えを語っている。

 えびす講のように、中心市街地の商店街全体ではなく、イベントの内容に沿った商店街をピックアップする新しいまちなか連携のスタイルが今回生まれた。また、高崎バルも「この指止まれ」方式の任意参加で組み立てられるなど、上意下達ではない横の連携が、イベントを面白くしている。

 ありそうでなかった、できそうでできなかったパートナーシップの取り組みが、まちなか活性化の引き金になりそうだ。

高崎バル

まちなかの回遊性と賑わい創出

飲食店が手を組んで共同イベント

 昨年から始まった大型店による共同催事「高崎商都博覧会」と連動するように、飲食店による共同イベントが開催される。

 「高崎バル2011」は、中心市街地の飲食店101店が参加するイベントで、スペインのバル(居酒屋)のような気軽に立ち寄れる飲食店というコンセプトで行われる。参加者(客)は5枚つづりのチケットを購入して、参加店(飲食店)でチケットを使用する。各店統一の基本サービスは“タパス”と呼ばれるお店オリジナルの小皿料理+ドリンクを楽しむことができる。

 お店にとっては新規顧客獲得のチャンスであり、お客にとっては普段は入らないようなお店だったり、敷居が高い高級店にも気軽に入ることができる。このスタイルのイベントは、函館市や伊丹市など全国的に先行事例があり、どこもにぎわいを見せているという。

地域の飲食業界が結束力を高めて、厳しい状況を乗り越えようと立ち上がる

 「高崎バル」を主催する高崎飲食業活性化協議会は従来の組合組織の枠を超えて、業界をまとめようと発足した団体。全国飲食業生活衛生同業組合連合会会長の加藤隆氏が会長を務める。地元で根を張って商売している飲食店が協力して、厳しい経営環境を乗り越えていこうとしている。

 「高崎バル」は協議会が実施する初めての具体的な事業として行われる。実行委員会は同協議会のメンバーでもある末村歓也氏が実行委員長を務め、市内飲食店の若手経営者の有志が実行委員となった。

 末村実行委員長は「飲食店が協力して開催する初めての試み。東日本大震災後、社会全体に暗いムードが蔓延しているように感じるが、飲食業界から地域を元気にしていきたいという思いでスタートした。実行委員会のメンバーが忙しいなか準備を進めているが、期間中は消費者と飲食店の両者が楽しめるイベントにしたい。うまくいけば、年に2、3回開催していきたい」と意気込む。

若手経営者のエネルギーが原動力になる

 今回、実行委員としてこのイベントを取り仕切っているのは、若手の飲食店経営者たち。みな自らのお店を切り盛りしながら、忙しい合間を縫って会議を重ねてきた。

 その中の一人は「震災があって考え方が変わりました。自分のことだけじゃなく、全体で支えあっていくことが必要だと思います。そのために何ができるか考えた時に、バルというイベントに行き着いたわけです。楽しいイベントにしたいのはもちろんですが、業界のつながりを強くして、もっと地域貢献できるような、きっかけにしたいです」と話す。

 今回の高崎バルは初めての開催で101店舗の飲食店の参加が実現した。参加店に素材の指定やメニューの縛りはなく、それぞれの店のメニューから小皿料理を考えドリンクとセットで提供する。飲食店としてバルに参加する為のハードルは高くない。チケット販売やPR、チケットの清算などの仕組み作りは大変だが、仕組みが出来上がり高崎の飲食業界のイベントとして定着できれば今後の展開にも期待が膨らむ。

 飲食店経営者たちの熱い思いを感じる「高崎バル」。期間中はそれぞれの参加店が魅力的な“タパス”と温かいおもてなしの心で、来店者を迎えてくれるにちがいない。

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