高崎新風土記「私の心の風景」

鯉のぼり―日本人の心のささえ―

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

 「鯉のぼり」は、こどもの日が近くなりますと、あちこちで風に泳ぎはじめます。ぼんやりとした春の風景が、喝を入れられたように、きりっとします。

 地方によって鯉のぼりは、武者絵であったり、五色ののぼりであったりしますが、「のぼり」は子どもの誕生を神々に伝える標(しるし)の意味をもっています。ですから、目立つようにできるだけ高く鯉を泳がせます。昔はさお竹を用いていましたが、学校などに国旗掲揚の金属柱が普及しますと、今までと違って大空高く泳ぐようになりました。

 しかし都市化がすすむにつれて、街中の広い空間が少なくなり、大空の鯉が、今はビルの窓からかわいい鯉となって泳いでいるのを見かけます。また、各家の鯉のぼりを一箇所に集め、たくさんの鯉を泳がせ、観光の目玉にしているところもありますが、私は、ダイナミックな竹や真っ直ぐな杉の木の柱に泳ぐ、古風な鯉のぼりが好きです。高い柱に、太い紐を張って、たくさんの鯉が泳ぐ風景は、なにか少子化の世相を払い除けてくれる感じがするからです。柱のてっぺんには、たいてい風車がまわっていますが、古くは春の神へお供えする椿の花をつけました。

 古風な鯉のぼりの泳ぐ風景こそ、日本人の心のよりどころだと思います。その風景を求めて、私は広々とした空間のある倉渕・箕郷などの郊外に足を運びます。五月の風をいっぱい吸い込んだ鯉を見出しますと、ほっとし、この風景がいつまでもと、思わず手を合わせてしまいます。

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