高崎新風土記「私の心の風景」

橋の風景から⑤ —荒久沢(あらくさわ)橋―

吉永哲郎

高崎新風土記「私の心の風景」

「荒久沢橋」の標識はありませんが、乗附緑地や少林山へ通じる県道、乗附小学校近くに架かる橋です。橋の中央の手すりに「一級河川荒久沢川」の標識が目立ちます。この乗附町に流れる小さな清流の名は、万葉時代の人々の暮らしを思わせます

この「アラク」という語は焼き畑を意味する方言で、低山の川沿いで、榛(はん)の木が群生していた場所をいうと言われています。万葉集東歌に「伊香保ろの岨(そい)の榛原(はりはら)たが衣(きぬ)に着きよらしもよ一重と思へば」(可愛い人が私に深く親しみを寄せ、二人の仲は上々だよ。だって一途にあなたを思っているんだから)という歌があります。

焼畑を囲むように繁る榛の木の下、一目を避けて愛し合う二人の姿が目に浮かんできます。「伊香保ろ」は、榛名の連山を意味しますので、榛名の山が眺められるところでの歌ということになりましょう。

車の往来の多いこの橋上にたって、こうした万葉人の若者の姿に想いを馳せることは無理なことですが、見過ごしてしまえばそれまでの「荒久沢川」の標識に、時に時空を超えて万葉人を追ってみたいものです。川は碓氷川に流れ入り、その合流地点にあった堤は草深く、友人と語り合うのに格好の所でした。昭和20年代の高校生の頃、この橋がなかった頃のことです。

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