お袋が作る酒まんじゅう

(2010年6月)

お袋が作る酒まんじゅう酒まんじゅう

●手間隙をかけた 3種類の手作りあん

 販売している酒まんじゅうは、“こしあん”、“みそあん”、“からすあん”(各84円)の3種類。全てのあんは、御歳70歳という店主・かづ江さんの手作りだ。


 “みそあん”は極上の味噌をあめ色になるまで4時間コトコト煮詰め、これまた極上のゴマを一生懸命すって、刻んだシソの葉を混ぜることによって豊かなコクと風味を出す。 “こしあん”は「体に良く、つやも出て味にもコクがでるので、砂糖はザラメしか使わない」と小豆とザラメを煮る。


 今年4月から販売を始めた“からすあん”は、5時間かけて汁を飛ばした煮ひじきと葉唐辛子の味が絶妙のバランスで、ヘルシーでちょっぴり辛くて是非お勧めしたい一品だ。


 これら3種類のあんをそれぞれ4~5時間かけてじっくり煮るというから恐れ入る。そんなかづ江さんの強い味方はストーブ。冬場はストーブで暖をとりながら、鍋をのせておけば最高に美味しい煮ものができて一石二鳥だが、「夏は大変よ」と言うのも、もっともでおかしい。


 かつて、大金をはたいてまんじゅうの機械を入れてはみたものの、手作りまんじゅうとは味がまったく違うと言って使わず仕舞い。今も仕事前のご主人と娘さんと3人で、朝早くからせっせと手作りに励んでいる。


 「主人は上手に丸めるけれど、私は時々不恰好になってしまうの」と笑う。その明るく温かい人柄が反映されたまんじゅうは、まさに優しく懐かしいおふくろの味だ。


●お袋の味で“歓待する”まんじゅう屋

 スーパーもコンビニもない時代のお母さんたちは、手まめで寸暇を惜しんで働いていた。おまけに情にもろく、家に寄せた人には「何もありませんが」と、心づくしのものを総動員して歓待した。かづ江さんは、そんな古きよき時代の絶滅危惧種のようなお母さんだ。とにかくよく働く。


 インベーダーゲームが大流行した頃、埼玉でゲーム機を導入してゲームセンターを経営していたことがある。そこで自ら焼きそばやお好み焼きを焼いて、来店者向けに良心的な価格で販売していた。風紀が乱れがちなイメージのゲームセンターだが、かづ江さんの店は「子どもを行かせても安心」と評判が立つほど、お母さんたち推奨の店となった。


 昭和56年、高崎でまんじゅう店を開いて今年で29年。宣伝したのはオープンのときの一度だけで、あとは評判が評判を呼んだ。それは美味しいだけでなく、かづ江さんの人柄が大きい。


 遠くてめったに来られないというお客さん、ラジオで“十勝まんじゅう”が話題に上ったと言って久しぶりに訪ねてくれる人、おしゃべりをしたい、相談があるといって来店する人などが後を絶たない。その度に嬉しくて、手作りの煮物や漬物などを並べて歓待するのだ。温かい母親の懐に帰って元気を充電するように、様々な人がやってくる。「お店をやっていると楽しいよ」。かづ江さんにとっても店は、元気の源となっている。


●名物をつくろう

上州名物“かかあ天下と空っ風”。働き者の女房をたたえる言葉“かかあ天下”にふさわしいかづ江さんが作る3種類の酒まんじゅう。上州の風土にあった、上州の女の心意気が作り出す酒まんじゅうこそ、何にも負けない“上州名物”、“高崎名物”。かあちゃんの手作り惣菜があんになって、ヘルシーで手軽に美味しく食べられる。法事、お盆、お彼岸等の仏事の予約もできる。


メモ:午後はほとんど売り切れるので午前中に行く方が良い。まとめ買いなどの場合は予約が良い。


お袋が作る酒まんじゅう

店主 鬼形かづ江さん

十勝まんじゅう
高崎市上小鳥町275-3
電話:027-361-0725
営業時間:9:00~18:00
(なくなり次第閉店)月曜定休

高崎商工会議所『商工たかさき』2010年6月号


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